米中通商問題の2回目となる交渉は17日〜18日に米国で行われた。19日に発表された共同声明では、米中双方は対米貿易黒字を「相当削減する」で意見一致した。しかし、対米貿易黒字削減や中国側の米製品購入増についての具体的な数値は示されていない。今回の交渉結果の解釈について、米中に大きな温度差がみられた。
ホワイトハウスが発表した共同声明では、中国側が「米製品やサービスの購入を大幅に増やす」「米中双方が、米国産農産品とエネルギーの輸出拡大で意見一致した」「知的財産権の保護を強化する」「米中双方は、両国間の相互投資を奨励し、公平な競争・経営環境の創造に勤める」「ハイレベルの意思疎通を継続することで、米中が意見一致した」などと明記された。
この声明内容について、トランプ米政権で首席経済顧問を務めるクドロー国家経済会議(NEC)委員長は20日、米メディアに対し、対米貿易赤字削減において「(中国が)われわれの要求に応じてくれた」としながらも、「折り合いがつかなかった」「同声明は、米中間の1つのコミュニケに過ぎない」と厳しい姿勢を崩さなかった。ライトハイザー通商代表部(USTR)代表も同様に、中国製品への追加関税措置は「依然として、米国の技術を守る重要な手段として残っている」と、21日の声明で述べた。
しかし、中国国営メディアは今回の交渉成果を評価し、「米中双方が交渉で勝利した」「貿易戦を回避できた」と強調した。また、中国代表団を率いる劉鶴・副首相の「米中は貿易戦を行わないことと、互いに追加関税を課さないことで合意した」という発言を紹介した。国内メディアは、中国側が大きな譲歩をしなかったと印象付けようとした。
一方、ムニューシン米財務長官は20日、中国が米製品の購入拡大と関税引き下げを実施する期間中、中国製品への追加関税措置について「保留する」考えを示した。しかし、長官は、中国側が米製品輸入増の公約を履行しない場合、米政府はいつでも追加税措置の発動に踏み切ると念押しした。長官は米FOXニュースに出演した際に述べた。
専門家「中国の負け」
在米中国問題専門家の胡平氏は米ボイス・オブ・アメリカ(VOA)に対して、交渉後、中国国営メディアが「勝利した」と大々的に報道したことは、逆に中国側が負けたことを反映したと評した。
「中国共産党は、国内に向けて、メンツの丸つぶれをどうしても避けたかったのだろう。海外メディアに『中国の負けだ』と指摘される前に、いち早く中国当局が交渉で成果を獲得し、『勝利した』と中国国民に宣伝したかったのだろう」
また今回の交渉で米政府が目指す2000億ドル(約22兆円)の対米貿易黒字削減は達成できなかった。胡氏は、これが「米高官らが、厳しい態度を示した理由だ」との見解を示した。
共同声明発表後、中国国内インターネット上では、ネット検閲当局が「(中国が交渉に)負けた」などの書き込みを全て削除した。ソーシャルメディア「微博」では、国営中央テレビ(CCTV)の報道に対して500件のコメントがあった。しかし、その後は7件しか残されていない。そのすべては「米中双方が勝利した」との内容だった。
「米中は依然として対立している」
大紀元時事評論員の李沐陽氏は、米中は通商問題において溝を埋められていないと指摘した。
まず、中国側が最も重視している、米国による中国通信大手の中興通訊(ZTE)への制裁だ。19日の共同声明では触れられなかった。
トランプ大統領は13日、ツィッターに、中国の習近平国家主席とともにZTEの問題解決に協力し合っているとし、同社への制裁緩和を検討すると投稿した。
米メディアは、中国が今回の協議で、米製品購入増と引き換えに、ZTEへの制裁解除を米側に要求する可能性が高いと予測した。しかし、交渉終了後、共同声明のほかに、中国当局からの言及もなかった。クドロー氏は20日、ZTEへの制裁を変更しても「依然として厳しい措置が残る」との発言だけが報道された。
また、今回米側が要求する中国の製造業振興策「中国製造2025(メイド・イン・チャイナ2025」計画に関する政府支援の中止に関しても、共同声明には記されていない。
さらに、対米貿易黒字削減に関して、共同声明では「中国側が大幅な対米貿易黒字の削減に同意した」だけにとどまった。
米政府は中国に対して、2020年6月1日までに2000億ドルの対米貿易黒字を減らすよう求めている。しかし、米中はそもそも、その規模について認識が相違してる。米側が昨年の対米貿易黒字は3752億ドル(約41兆2720億円)と主張するのに対して、中国は2758億ドル(約30兆3380億円)だとした。
ロス商務長官は来週、中国を再訪問し、中国の米製品購入増について詳細を詰めるという。
トランプ米大統領は22日、ホワイトハウスで記者団に対して、米中通商協議の結果について「それほど満足していない」との感想を示したうえ、「これが始まりだ」と強調した。
また、大統領はZTEへの制裁見直しをめぐって、中国側と合意に至っていないと述べた。
(翻訳編集・張哲)
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