政府はこのたび、年次の外交青書を発表した。東アジアの安全保障と日本に対する脅威について、北朝鮮のほか中国に関して多く記述。「中国の透明性を欠いた軍事力の強化と一方的な現状変更」は断じて認めないとし、関係国との連携を強化しながら意思疎通を強化していくとした。
政府は「中国の平和的な発展を歓迎すべきだ」と前置きしながら、中国が国防費を継続的に増大させ、透明性を欠いたまま軍事力を強化していると分析。東シナ海、南シナ海の海空域では、「既存の海洋法秩序と相いれない独自の主張に基づく行動や力で、一方的な現状変更をしようとしている」と批判的につづった。
さらに、尖閣諸島周辺海域における中国公船による領海侵入、中国海軍艦艇・航空機による活発な活動、南シナ海の係争中の地形の軍事拠点化についても指摘。排他的経済水域や大陸棚の境界画定されていない海域での「一方的な資源開発」、日本周辺海域において日本の同意を得ない、もしくは同意内容と異なる調査活動も「多数確認している」と続けた。
政府は青書で、中国の軍事力を背景とした「一方的な現状変更の試みは断じて認められない。関係国との連携を強化し、同時に意思疎通を強化していく」と方向性を記した。
日米同盟は一層重要に
同盟・友好国である米国との外交においては、日米は「平時から緊急事態まで、切れ目のない」対応を今後とも実施する。「北朝鮮をはじめ日本を取り巻く安全保障関係の脅威は一層増しており、米国同盟はさらに重要」としている。
2017年1月、ドナルド・トランプ氏が新たに大統領に就任。直後の2月に安倍首相は日米首脳会談を実施した。同年11月、アジア歴訪の最初の訪問国として日本を訪問した。
外交青書によると、日本企業による対米投資は、米国内の累積直接投資額で英国に次いで第2位の約4211億米ドル(2016年)であり、日本企業の活動は約86 万人(2015年)の雇用を創出した。
最隣国である韓国については、「困難な問題も存在するが適切にマネージしつつ、日韓関係を未来志向で前に進めていくことが重要」とし、慰安婦問題において「韓国が最終的かつ不可逆的な解決を確認した合意を着実に実施するよう引き続き強く求めていく」とした。
注目は、中国共産党政府による現代版シルクロード構想「一帯一路」に対抗する戦略と呼ばれる、日米印豪による「自由で開かれたインド太平洋戦略」だ。
これは、日本が関係国とインド太平洋地域の海洋秩序を「国際公共財」として維持・強化すると提唱する。
具体的には、1.航行の自由、法の支配・自由貿易等の普及・定着、2.国際スタンダードにのっとった「質の高いインフラ」整備等を通じた連結性の強化などによる経済的繁栄の追求、3.海上法執行能力の向上支援、海賊対策、防災、不拡散などを含む平和と安定のための取組を進める。
2017年、日本は9月の安倍首相のインド訪問や同11月の米トランプ大統領訪日、2018年1月の豪ターンブル首相の訪日など、関係国との間に自由で開かれたインド太平洋を実現するために連携、協力を進めていくことで一致した。
外交青書は、安倍政権の外交について「地球儀を俯瞰(ふかん)する外交、積極的平和主義」と説く。外交努力で国際社会の安定と繁栄の基盤を強化し、脅威の出現を未然に防ぐことを重要とするスタンスだ。安倍首相はこれまで76か国・地域(延べ135か国・地域)を訪問した。
(編集・甲斐天海)
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