中国 全体主義国家

人工知能監視システムを実現 ビッグブラザー社会に向かう中国

2017/10/02
更新: 2017/10/02

「Big Brother is watching you」(ビッグブラザーがあなたを見守っている)。

イギリスの著名な作家、ジョージ・オーウェルは1949年に刊行した小説『1984』の中で、共産主義、ファシズムを含む全体主義の末を赤裸々に予見、描写した。「英社(英国社会主義)」と呼ばれる党、体制の象徴である「ビッグブラザー」によって支配される社会では、すべての建物内外、お金、切手、書籍の表紙とタバコまで、人の内面を見抜くようなビッグブラザーの姿が写っている。誰も彼の視線から逃げられない。

最近、中国では市内を録画したある9秒の動画がインターネット上で話題になっている。普通の監視カメラ映像のようなこの動画には、カメラが動くもの一つ一つを最後まで追跡する様子が撮られていた。後日この動画は、中国公安局が2000万台の監視カメラを基盤に構築した犯罪容疑者追跡システムである「天網(空の網)」の一部であることが明らかになった。

中国が反腐敗・反犯罪システムの一環として、2015年開発に着手した「天網」は、動くものを追跡・判別する人工知能の監視カメラと犯罪容疑者のデータベースが接続されている。カメラには衛星測位システム(GPS)と顔認識装置などが装着されているため、歩行者の性別、年齢、身分を正確に識別することができる。もし指名手配者リストの容疑者と認識すると、警報が鳴る。

中国当局はドキュメンタリーを通して天網による治安強化を掲げているが、これにより一般市民をさらに監視することができるようになったとの意見が強い。西側メディアらは「2000万台のカメラで構成された監視網の存在は、中国国民を保護するという名目の下、プライバシーを侵害している」と批判の声を上げた。

ワッツアップを全面遮断、10月の党大会控えて思想統制を本格化

中国政府が19日の夕方、Facebook傘下のアプリ「WhatsApp(ワッツアップ)」の中国内接続を全面ブロックした。「ワッツアップが繋がらない。中国万歳!文化大革命万歳!北朝鮮を越えて世界一になったぞ!中国人一人一人の口の全てふさぐなんて、どれだけ便利なのか!」。こんな皮肉の声が中国のネットに飛び交った。

米ニューヨークタイムズや香港蘋果日報は、一定時間が経過するとチャット内容が消えるワッツアップの安全性を警戒した、中国当局の措置ではないかと報じた。中国のネットユーザからは、情報統制が相次ぐ中国国内のネットで、自由度の高い最後のSNSが消えた、と嘆きの声が相次いだ。

 現在、中国政府は「金盾(Great Firewall)」と呼ばれるインターネット情報検閲システムを用いて、中国でのfacebook、インスタグラム、ツイッター、YouTubeなどの海外サイトへのアクセスを制限している。

中国で開発されたSNSアプリ「WeChat(微信)」は、中国当局が個人のチャット内容まで検閲の範囲を狭めている。ボイス・オブ・アメリカ(VOA)中国語版28日によると、中国の河南省福陽市に住む陳守理氏は、友達とWeChat上で孟建柱・党中央政法委員会書記について否定的な話をしたため、公安に「国家指導者侮辱罪」で逮捕されたという。24日、海外メディアは流出した公安の行政処罰決定書を映した写真を報じた。

専門家らは今回の事件は習近平の権力強化のため、来月18日に開かれる予定の第19回中国共産党全国代表大会(第19回党大会)を控え、国民の日常生活まで徹底的に検閲に締め付けている実状を表わしたと分析する。

文化芸術界も例外ではない。著名な映画監督の馮小剛が演出した「芳華」は29日に上映を控えていたが、24日、突然公開延期を発表した。文化大革命と中越戦争を背景とする本映画に対して「敏感な内容が入っている映画の上映時期を変えてほしいという当局の要求を受け入れた」と馮氏は述べた。

ビックブラザーがあなたを「監視」している

 

当時、ソ連を背景にしたとされる小説『1984』では絶対権力を持つ「党」が、自らの政治哲学に基づいて人民と争い続け、各種メディアとスパイ集団、監視カメラを通して情報を操作する。歴史は党の正当性を確保するためにねつ造される。著者は最も確実な思想統制の手段として言語を利用した。既存の言語から語彙、文法を画一化した「新語」を構築し、人民の思惟を制限する。著者が意図したであろうがなかろうが、小説の中に描かれた多くが、今日の中国で実現されていることを我々は知っている。

  中国一流大学の一つである清華大学で、ジョージ・オーウェルの『1984』などを通じて洗脳がどんなものかを教える講義をしてきた唐少杰・哲学教授の秋学期の授業が突然、キャンセルされたと東亜日報が9月27日報じた。あまりにも多くのことを示唆する事例だと言わざるを得ない。

(翻訳編集・齊潤)