一帯一路 米との良好関係を求める事情

習近平政権、米中首脳会談をいそぐ理由(2)

2017/04/08
更新: 2017/04/08

「19大」を控える習近平政権は安定した米中関係を必要とする

今年秋に中国共産党は第19回全国代表大会(19大)を開催し、最高指導部である中央政治局常務委員会の常務委員などを含む重要な人事の選出が予定されている。

党内の諸問題を解決する前に、習近平陣営はまず米国と如何に良好な関係を築いていくかが重要になってくる。米中関係が良好となれば、習氏が党内問題に着手する余裕が出てくるとみる。

少なくとも以下2つの理由で、習政権は今後長い間に米国と良好な関係を築く必要がある。▼党内江沢民派閥北朝鮮金正恩政権との関係を断ち切らせること、▼香港での曽慶紅勢力を弱体化させることだ。

前者の江派と北朝鮮政権について、内部告発サイトのウィキリークスが2010年に公開した資料によれば、中国の銭其琛・元副首相(在任期間1993~2003年)の部下は米国政府に、北朝鮮金政権は核兵器を保有しておらず、すべては中国当局が北朝鮮で密かに配備したものだとの情報を流した。その目的は、米国の台湾への影響力を弱めるためだったという。

米自由アジア放送は、1989年「天安門事件」以降に、北朝鮮に一定の数量の濃縮ウランの提供を最初承認したのは当時最高指導者の鄧小平だったと報じた。

江沢民が「天安門事件」の後、鄧小平の抜擢で1989年党総書記に就任し、まず訪問したのは北朝鮮だ。以来、党内江沢民派閥核心人物の周永康、曽慶紅などは北朝鮮を訪問し、金政権と親密な協力関係をアピールしてきた。

江派閥が北朝鮮出身の核技術者を育て、金政権に核武器に必要な物資や技術や技術者を与えてきた。

周永康や曽慶紅ら親族が中国の石油業界を牛耳ってきた。そのため、毎年中国が北朝鮮に毎年大量の石油を供給することができた。北朝鮮と国境を接する遼寧省トップで同じく江派閥人員の王珉・前省党委員会書記も、北朝鮮との国境貿易を担当。昨年9月に発覚された遼寧省貿易会社、遼寧丹東鴻祥公司の女性創業者が北朝鮮に対して核武器製造に必要な物資を密輸した事件でも、王珉らの江派閥人員が背後で指示したとみられる。

習近平陣営が、党中央及び東北地域などの江派閥勢力を一掃する時には、中国当局が北朝鮮との関係を断ち切ることにもなるが、その勢力を完全に打倒するまでまだ時間がかかりそうだ。習陣営がそれに集中できるように、米中関係のぎくしゃくを避け、関係の安定化は不可欠だとみられる。

良好な米中関係が必要である2つ目の理由は、香港での曽慶紅勢力を弱体化させるためだ。 

3月26日特別長官選挙を控え、集合写真を撮影する3人の候補者。中央に立つ女性が上海閥の林鄭月娥氏(DALE DE LA REY/AFP/Getty Images)
 

江沢民派閥は香港でも勢力を拡大してきた。江派閥人員で中央政治局常務委員の張徳江が、香港・マカオを統括する「中央香港マカオ工作協調小組」トップになり、また曽慶紅に非常に近い梁振英が香港特別行政区長官に就任した後、香港における政治の混乱が拡大した。

3月26日、事前民意調査で支持率が低かった香港の林鄭月娥・前政務長官が、中国当局の駐香港特別行政区聯絡弁公室(中聯弁)の強い支持を受けて、次期行政区長官選挙で勝利した。中聯弁トップの張暁明はまたも江派閥人員だ。

林鄭氏が当選した翌日、香港当局は2014年9月に起きた行政区長官直接選挙を求める民主運動のリーダーなど9人を逮捕し起訴した。

これに対して、米国共和党下院議員で、米「中国問題に関する連邦議会・行政府委員会(CECC)」の共同主席のクリス・スミス氏は「新行政区長官の下で、香港が中国の一つの都市となれば、今後香港に対して、米国法律で定められる特別な待遇を与えるかどうかを再評価しなければならない」と述べた。

現在の『米国ー香港政策法』では、米国政府は香港を自由経済体の一つと見なし、米ドルと香港ドルの自由両替を容認し、香港企業に対して米国機密先端技術の入手規制が低く、機密技術を利用することもできる。

香港は中国本土と欧米諸国と結びつける重要な架け橋で、習近平政権が唱える「一帯一路」との経済圏構想を実現する上で大きな役割を果たす。

時事評論員の李林一氏は、香港がもし現在の世界金融センターとしての地位を失えば、中国当局の対外政策が大幅な見直しを迫られるとの見解を示した。

習近平政権が国内の改革開放の深化を実現するのに、19大開催前に、党内と政府内の各レベルにおいて江派閥人員を一掃し、速やかに自らの側近を着々と配置させていく必要がある。その過程において、米トランプ政権にも一定の理解と協力が必要で、トランプ政権を敵側に回したくないのが本音であろう。

(おわり)

(翻訳編集・張哲)

この記事で述べられている見解は著者の意見であり、必ずしも大紀元の見解を反映するものではありません。
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