【大紀元日本7月5日】冷戦は終結したものの、サイバー戦争は静かに繰り広げられている。米国コンピュータセキュリティ会社シマンテックが6月30日に発表した報告書によると、ロシア政府と関連する「Energetic Bear」(精力的な熊)と名づけられたハッキンググループが、欧米諸国の石油・エネルギー業界のコンピュータシステムに対し、これまでにない高度な攻撃を展開している。企業機密を盗むだけでなく、ハードウェアを制御、破壊しているという。
Energetic Bearのもう一つの名前はトンボ。
同報告書によれば、同グループが開発した各種スパイウェアは、エネルギー消費量を即時に監視できるほか、風力発電設備や天然ガスパイプライン及び発電所の設備を故障させることも可能だ。
主な攻撃ターゲットは発電所、大手電力会社、石油パイプライン会社、エネルギー産業の設備供給会社。米国のほか、スペイン、フランス、ドイツ、イタリア、トルコ、ポーランドなどの欧州国家も含まれている。これまでの18カ月間、84カ国で1000社以上の企業のコンピュータシステムに侵入したとされる。
シマンテック社は、Energetic Bearの活動は2011年から始まっているとみており、「同業界において、これほど大規模な攻撃はまだ前例がない」と警告を発した。
その危険性について、こう指摘した。
「大手石油会社のコンピュータシステムに侵入し、石油と天然ガスの開発場所等の情報を入手してしまえば、その開発を先取りすることが可能になる。電力網やエネルギー供給のパイプライン網の情報を窃取できたら、そのシステムを故障させ経済活動に大きなダメージをもたらすことが可能。戦争が起きると、麻痺させることも考えられる」
Energetic Bearの開発と攻撃の技術レベルが非常に高いことから、シマンテックやクラウドストライクなどの米サイバーセキュリティ会社、そして英国諜報機関の元幹部プール・ロッブ氏は、「ロシア政府がバックアップしているであろう」との見方で一致している。
ロシア政府は今回の報告書について、まだコメントを出していない。
CNNは、「Energetic Bearのスパイ攻撃は新たな冷戦の兆し」とみており、片方は米国や英国を中心とする欧米諸国、片方は中国とロシアのハッカーグループと評した。