黄海軍事演習終了 北砲撃が強化した日米韓同盟 北京、「内憂外患」逼迫

2010/12/02
更新: 2010/12/02

【大紀元日本12月2日】北朝鮮による韓国・延坪島(ヨンピョンド)砲撃への米韓の対抗として朝鮮半島西方の黄海で行われていた、米韓合同軍事演習が1日、終了した。演習期間中、北朝鮮は「最も先進的な」核融合技術の保有を再び宣言するなど激しく反発していたものの、米韓は強硬な態度を崩さず、北朝鮮側からの新たな挑発行為もなかった。合同参謀本部関係者は演習について「挑発に対し、両軍が即時、強力に対応する姿を明示することができた」と成果を強調し、年内にも追加の合同演習を行う方向で協議していることを明らかにした。 

一方、米軍参加の黄海軍事演習に以前から強硬な抗議姿勢を採っていた北京政権は、今回の合同軍事演習での米空母の黄海入りを事実上容認した。米韓合同軍事演習が始まった11月28日、北朝鮮への影響力を駆使して金氏政権に圧力を掛けると期待された中国は、北朝鮮の問題を巡る6カ国協議の首席代表会合の緊急開催を提案した。

「緊急会見で重要情報を発表」として中国外務省は前日に急きょ通知。北朝鮮への支持態度を取りながら日米韓に緊張緩和への努力を誇示する中国外交の「苦肉の策」が見透かされたかのように、北京で12月に6カ国協議を開催する中国の提案に、日米韓とも否定的態度を表明した。朝鮮半島を舞台とした今回の米中の突き合わせは、軍事・外交において、北京の敗北だと中国問題専門家は見解する。

米空母、北朝鮮を威嚇

11月30日、合同演習の3日目、米原子力空母「ジョージ.ワシントン」の甲板で、多くの戦闘機が飛び立って行くのが見られた。「軍事演習が継続されれば、何が起こるか予測は難しい」と北朝鮮は警告したものの、ピート・ワルザック(Pete Walczak)指揮官は、現時点で異常な活動は見られないと話す。

作戦指揮センターでこの話を発表していたワルザック指揮官は、そのセンターで中国西北上空の航空機も監視できるという。また、「ここでは北朝鮮地区まで監視することはできるが、何の動きも観察されていない」と話した。

「ジョージ・ワシントン」は移動する軍事基地と言われている。今回の軍事演習に、米韓は国防最新先端技術を繰り出した。韓国政府の発表によると、軍事演習範囲は北緯34度30分から36度、東経124度から125度42分。この海域は中国山東榮城に近く、わずか170キロにもない距離。一方、空母艦載機の作戦半径は少くなくとも1500キロ。

米空母が黄海に進出した場合、北朝鮮にも北京政権にも有効な対応手段はない、と在米中国問題の専門家である孫延軍氏は語る。「米空母が黄海に入った後、米日韓連盟が主導権を握る。中共は成す術もなく、手を束ねて見ているだけだ。北京政権は現在、国内と外交上の両方で苦しい境地に立たされており、打つ手を見いだせない状況。現在の政治経済体系および軍事力の下では、中国は今の状態からさらに滑り落ちていくだろう」と予測する。

米韓日、六カ国会議に否定的

合同演習後、北朝鮮が再び核実験を嘘ぶくコメントを発表。北朝鮮政府中央通信社は11月30日、政権機関紙「労働新聞」の社説を引用し、北朝鮮はすでに「最も先進的」な核融合技術を持っており、核融合領域の壁を突破したと報道。核融合は世界の科学界でも技術の取得は難しいとされている。

一方、軍事演習が始まった11月28日、中国は緊急記者会見を開き、12月上旬に北京で「六カ国会議」を招集したいとの提案を打ち出した。12月1日、中国外務省の洪磊報道官は、北京が提議した「六カ国会議」開催は朝鮮半島情勢の緩和に原点があり、接触と対話の機会を持たせることだとして、関係国に再考を促している。

中国の提案に、韓国李明博大統領は11月28日、六カ国会議のタイミングではないと明確に述べ、「北京が公正かつ責任ある態度で朝鮮半島問題に臨むことを希望する」と強調した。

また、日本外務大臣前原誠司も11月29日夜、「何もなかったかのように集まるのは無理な話だ」と中国の提案に否定的な見解を述べた。

米国も中国の提案に応じない意向。米クローリー国務次官補(広報担当)は12月1日の記者会見で、「話し合いのための話し合いには関心がない」と強調した。現時点での同協議開催は「北朝鮮に国際的な義務を守らせ、責任を果たさせ、挑発行為をやめさせることにはならない」とはっきりした否定な態度を表明した。

在米時事評論家・伍凡氏によれば、米国が六カ国会議を拒絶したことから、中国が北朝鮮問題を切り札にして国際社会で影響力を果たす意図が、国際社会ははっきり掴むことがしができたという。2004年に始まってから、「六カ国会議」はいずれも達成してすぐに、北朝鮮に壊されてきた。北朝鮮は日米韓に、さらに対価を要求し、関連国が応じたら、北朝鮮は協議に違反するということの繰り返しだった。

米ワシントン在住の政経評論員・魏京生氏は、「六カ国会議」の正体は北京と北朝鮮の二人羽織のパフォーマンスに過ぎず、「六カ国会議」の構造自体が間違っていると指摘する。

中国国内のブログ作家、上官如煙氏によれば、六カ国協議は北京政権が内憂外患の危機を転嫁する切り札に過ぎない。国際社会は今回、ようやく中共の手段を認識し、六カ国会議を拒絶したと分析した。

強化される米日韓同盟

今年3月韓国海軍哨戒艦が爆発した事件後、米国は直ちに韓国との連合軍事演習を行う必要があると述べ、「ジョージ.ワシントン」を黄海へ赴かせ、威力を誇示した。北京当局は米空母の黄海派遣は区域の安全と安定を脅かす、と一貫した厳重な抗議の姿勢を示したものの、11月28日に始まった米韓演習に対しては、沈黙を保っている。米中国問題専門家の孫延軍氏によると、今回米国が軍事演習を放棄しないことで、米国が北京と北朝鮮への戦略の意図をはっきり認識していることが伝わっている。

一方、天安艦事件から砲擊事件に至るまでの事件を通して、米日韓連盟は強化されつつある。米国クリントン国務長官は11月25日に、北朝鮮への対応について米国は日本と協調すると述べた。また、米政府は最近、北朝鮮の砲撃やウラン濃縮施設の建設への対応について、今月6日にワシントンで、日米韓の3か国による外相会談を開くと発表した。

12月1日、クローリー米国務次官補(広報担当)は記者会見で、同会談について「日米韓の緊密な連携と、朝鮮半島の安全や地域の安定に責任を果たす姿勢を示す」場になると語り、今後も3カ国の協議を重ねていく方針を示した。

台湾前国防部長の蔡明憲氏によれば、現在米日韓による安全確保への協力関係は前例がないほど強化されているという。

中国問題専門家の孫延軍氏は、米日韓の3ヵ国が北朝鮮に対して政治、経済及び軍事上の圧力を作り出せば、その他の国家も相応の反応を見せると、3カ国の外相会談に期待を寄せる。

北京、「内憂外患」逼迫

米空母の黄海進入の問題において、中国当局が「強硬」路線から「軟弱」路線に切り替えた態度は、中国国内のネットユーザの不満を招いた。

孫延軍氏は「稚拙な策を弄して却って危険を招いてしまった」と中国当局今回の対応についてコメントした。

氏によると、「当局が現在直面する政治および経済の圧力の下、国内に向けて一種の愛国態度の表明が必要である考えから、強硬な態度を出して、米国との一定の緊張衝突を作り出した。しかし、米空母が黄海に入ると、それに対抗する力がなく、今までの空威張りが打ち砕かれた。今回の問題では、中共の本性を露出してしまい、面子を失い尽くした」

在米中国人の政治論評家・伍凡氏は、今回外交上の失敗に加えて、国內のインフレの問題も逼迫しており、北京政権はこれからますます苦しい「内憂外患」の局面に向かうだろうと指摘した。

(記者・董韻、駱亜 / 翻訳編集・趙莫迦)