中国社会科学院青書:北京五輪が直面する最大のリスク

2008/01/07
更新: 2008/01/07

【大紀元日本1月7日】中国社会科学院社会学研究所がこのほど発表した「2008年社会青書」では、2008年北京五輪に通信妨害、テロ活動、大気汚染、公共安全、管理警備、交通渋滞、食品安全、旅行安全、社会治安および社会秩序などの十大リスクが存在していることを指摘した。社会環境を整備するために、北京市はすでにホームレスや物ごいを一掃する運動を始めた。

青書では、五輪のために陸海空の立体的安全保障システムの構築は「911」テロ事件以降、すでに欠かさない条件になっているとし、五輪開催会場のほかに、旅行者の多い宿泊先、ショッピングセンター、劇場などの場所も安全防衛の重点でもあると示した。

一方、北京にいる評論家の周晴(音訳)氏は、五輪の最大リスクは社会の不公平からもたらされた問題によるものとの見解を示した。さらに、周氏は「例えば、河南省から北京へ出稼ぎに来た一人の労働者が鬱憤を晴らすために、タクシーを奪い王府井の繁華街に突っ込んで、20数人もひかれた。このような突発性の事件こそもっとも恐ろしいことだ。これはテロと関係なく、ただ、社会の不公平により生じた怨念から引き起こされた出来事だ。もし、社会全体の中に大部分の人がこの状態に置かれたら、それこそ最も危険だ」と、実例を挙げて警告を発した。

北京在住の評論家・周国強氏は、「中国政府がもっとも懸念しているのは、やはり政治事件のことであり、例えば、外国の来賓が抗議活動を行うなどがそうだ。当局はそれを防ぐために、最近また民主活動家らを拘束するようになった。胡佳氏も拘束された。国内の民主活動家に対して、当局は重点的に取り締まりを行なっており、厳しい手段で対応している。外国からの人は、もし抗議活動を行なえば、当局はすでに取り締まる方法を講じている」と指摘した。

周国強氏に言及された胡佳氏は、北京在住の人権活動家で、正月前に拘束された。また、周氏本人も労働者権利保障の活動を行っているため、長期にわたり警察からの監視を受けている。周氏は五輪期間中に自分が監禁され、人身の自由を失う可能性があると懸念している。

一方、五輪期間中に社会治安を保障するために、北京当局はすでに約80万人の保安員を動員して、社会の隅々まで監視するよう配置している。そのほか、大量の軍と警察も動員されているという。

さらに、周国強氏は食品安全と大気汚染に対しても懸念を示した。周氏は「北京の市民は、朝に咳払い、のどの乾きを感じる人が少なくない。このような人たちは出張などで、空気がきれいな都市に行くと、すべての症状が自然に治ってしまう。やはり、北京の大気汚染が非常に深刻な状況だと感じている。また、食品の安全も大変問題になっている。例えば、(肉の分量を増やすために)肉の中に水を注入する商売人は、水道代を節約するために、使い済みの汚水を使う場合もある」と説明した。

一方、「北京晨報」(朝刊)によると、北京市政府は環境を整備するために、最近、乞食、行商、人力三輪タクシーに対して取り締まりを始めたという。これまでに、北京当局は何度も乞食を締め出す行動があったが、効果はよくない上、市民からの非難もあった。北京の法学者・許志永氏は、政府が一部の地区での物乞いを禁ずる法律を制定したら、取り締まることは受け入れられるが、法律を踏まえず、追放したり、拘束したりすることは不適切との意見を示した。

許氏は、米国のニューヨークには地下鉄の中で物乞い行為を禁ずる法律があると説明したうえ、「中国のやり方は民主的方法ではなく、政府の指令しだいである。こうすれば、数年前に廃止された物ごいに対する強制収容、強制追放の制度は五輪のきっかけに復活されるかもしれない」と懸念している。

(翻訳/編集・余靜)