【熱点互動】中国GDP調整の背景

2006/02/18
更新: 2006/02/18

【大紀元日本2月18日】(新唐人熱点互動取材報道)

皆さん、こんにちは。「熱点互動」の時間です。私は司会の林暁旭です。2005年末、中共政権は、GDPを20%近く上方修正し、2兆元余り増額させました。なぜ、このような調整をしたのでしょうか。これは、どのような問題を反映しているのでしょうか。今日の番組では、“当代中国研究”編集長である程暁農先生に分析をしていただきます。

林暁旭:程先生、こんにちは。今回の番組では、GDPの調整について論じていきます。中共はなぜ調整をする必要があったのでしょうか?また、調整の対象が2004年の数字だったのはなぜでしょうか?

程暁農:中国国家統計局局長が、12月20日の記者発表で解説したところによると、中国が定例的に行っている経済調査を通じ、実際の経済規模が、本来の統計数字を上回っていることから、調整を行う必要があった、これが、政府の説明です。

私は、この説明の背後には、政府が認めたくない要素があると思います。それは、世界各国が、中国のGDPの数字に対して多くの疑いを持ってきたということです。最も典型的な例の一つとして、中国国家統計局が、認めざるを得なかった事実があります。それは、中国統計年鑑を開けばすぐに分かることですが、2004年を例にとると、国家統計局が統計を取ったGDPの総額は13.65兆元ですが、同じ統計年鑑に掲載されている、各省のGDPを足した数字は、16.34兆元となり、全国の数字を2.69兆元上回るという矛盾が生じていることです。

林暁旭:相当に大きな誤差ですね。

程暁農:はい。なぜ20%もの誤差があるのか知りたい人もいるでしょう。国家統計局の解説によると、各省が提出する虚偽の報告を「水分(水増し)」と呼び、この水分がGDPの数字に占める割合が非常に大きいことから、国家統計局は、各省の報告を信用できないものと考えたわけです。

林暁旭:だから、水増し分を絞り出す必要があるということでしょうか?

程暁農:そのとおりです。水増し分を絞り出した後に国家統計局が発表したGDP値が、16.34兆元から大幅減の13.65兆元であり、この数字が2004年の統計年鑑に印刷されたのだと発表しました。しかし、各省の数字に水増しがあるのだから、国家統計局の数字においても、水増しが無いとは必ずしも言えないと思う人もいます。確かに、国家統計局自身にも水増しがあり、経済規模が一体どれ位であるかという点については、信用しきれない部分があります。人々は、中国の統計数字の信頼性について疑問を持っているのは事実です。

林暁旭:では、この2.6兆の誤差が、ちょうど今回補正した数字に近いのですね。

程暁農:そのとおりです。この問題は、中国国家統計局の言い分、つまり、経済調査によって新たな経済規模が算出されたということを、どう捉えるかということに関わってきます。これは、実際のところ、疑ってしかるべき話です。言い換えると、彼らの調査結果に従うということは、国家統計局が、説明振りを変えて、我々の現在の経済規模は、各省の統計数値の総和であるといっているに等しいのです。すなわち、国家統計局は、各省の数字には、もともと水増しがあったが、今では水増しが無くなった、ということなのです。ここで、疑問が生じます。かつて、国家統計局は、各省の統計が真実ではないと発表したのに、今になって、突然、調査をした結果すべてが本当だった、この二つの話のどちらが本当で、どちらが嘘なのでしょうか?両方が本当であるということは絶対にありえません。

林暁旭:非常に疑わしいのは、政府が説明する理由が、すべて、第三次産業の計算における誤差脱漏によるものだとしていることです。彼らは第三次産業の計算をすべて忘れてしまっていたということなのでしょうか?

程暁農:技術的にはありえません。だから、技術的に見て、国家統計局は、実際、自己矛盾をきたしているというべきなのです。過去における彼らの言い分、つまり、各省の報告に水増しがあり、統計が不正確だったいうことが事実であるとすれば、この手法自体が疑わしいことになります。一方、現在の手法が正しいというのならば、先ほど述べた、各省の報告には水増しがあるということが嘘になります。この二つのケースのうち、ありうるのは一つだけです。

林暁旭:真実は一つだけなのですね。

程暁農:実際のところ、各省の統計数字に水増しがあるということは、否定できない事実です。このことは、中国における多くの報道から明らかになっています。

林暁旭:いくつか例を挙げていただけますか?

程暁農:結構です。数年前、安徽省に、王懐忠という副省長がいましたが、最近、汚職で銃殺刑に処せられました。当時、彼の悪行が報じられた時の一例ですが、出世するために、彼は当時の安徽省統計局に命じ、全省の経済成長率を改ざんするよう求めました。実状に基づいて経済成長の統計を計算するのではなく、自分の都合の良い数値を出すよう計算させるということです。率直に言えば、粉飾をするということです。当時、王懐忠が下した命令は、来年の成長率を22%にせよというものでした。

林暁旭:これが本当であれば、世界の奇跡ですね。

程暁農:はい、これは、統計の笑い話です。そして、省の統計局長は、命令どおりに努力し、多くの粉飾を行った結果、王懐徳に対し、16%までしか数字が出せない、これ以上続ければ事が発覚してしまう、と言いました。それを聞いた王懐徳は怒り、統計局長に向かってお前を首にすると言いました。22%と言ったのに、なぜそう計算できないのか?こうした現象は、全国各地において、非常に普遍的でして、どの省においても発生しているといってよいでしょう。朱鎔基の時代でさえも、朱鎔基自身が粉飾をしています。1998年は長江で洪水が発生した年でしたが、国家統計局が、朱鎔基に当年の経済成長率を報告した時、第一案は、当時策定した計画が8%だったので、国家統計局は、予定通り8%という数字を出しました。

林暁旭:彼自身もまた、先に計画ありきだったのですね。

程暁農:先に計画があったといっても、計画すること自体は特に非難すべきことではありません。彼らが計画を策定することは自由です。問題は、国家統計局が顔色を伺うやり方です。総理の顔色を伺い、彼らが第一に報告した数字は8%でした。我々が計画したのは8%で、今年実現したのは8%です。朱鎔基はこう言いました。「これはだめだ。今年、我々は、外に対して、長江の洪水による損失が深刻だったと発表した。成長率は8%であると報告すれば、損失が深刻だったということが嘘になってしまうではないか? 修正しよう」。その後、国家統計局長は計算をやり直し、こう言いました。よし、我々がいま修正した数字は、7.9%である。四捨五入をすれば、計画目標を達成できるが、この0.1%で、我々もまた損をしたことが示せるし、党と国家のイメージを保持することができる。また、水害による損失が大きかったと党が述べたことが、事実であったと示すことができるし、総理の顔色もまた良くなろう。その後、朱鎔基は、「よしよし、これでよし」と言いました。

これは実際に起きた事で、中国の官僚が私に述べたことです。この小さな例から分かることは、総理クラスにおいてでさえ、国家統計局長が報告する全国の経済成長率の数字を自由に修正できるのです。

林暁旭:だから、この視点から見ると、当地の官僚が、文革当時のように「新記録を作る(放衛星)」ことが無い場合、文革当時のような“新記録を作る”以前の段階においては、わずかの良心があったといえます。

程暁農:だから、いかなる省、あるいは、全国の各地方政府の統計数字に水増しがないというのなら、国家統計局は、たとえどうあろうとも、こういい続けなければならなかったのです。

林暁旭:では、今回の調整の理由が、第三次産業における誤差脱漏だったのはなぜでしょうか?民意が第三次産業に帰着したのはなぜでしょうか?

程暁農:それは、中国の農業が、現在では衰退産業となっているからです。農民の収入を増加させることができず、生産量も増加させることはできません。したがって、生産面において、食糧の生産量、綿花の生産量を大幅に増加させることができず、また、価格面においても、基本的には現状維持であって上昇はしないという状況のもとで、数字を粉飾しようとしても、それは信用できないからなのです。

林暁旭:さらには、土地の面積も減少しています。

程暁農:だから、第一次産業のカテゴリーである農業には望むところがなく、つまり、多くの粉飾ができないのです。第二の製造業というカテゴリーについては、実際のところ、もともと多くの水増しがあったのです。

私が2002年に発表した文章において、この問題を指摘しました。つまり、中国国家統計局の発表した工業生産額の増加分において、相当に大きな水増しが含まれていたのです。

これは、国家統計局が昨年の12月22日にGDPの数値を調整した時、国家統計局長李徳水が正式に認めた事実ですが、国家統計局が過去に発表した工業生産額の増額分に水増しがあったのです。

林暁旭:どこに粉飾があったのでしょうか。

程暁農:粉飾があったのは、多くの企業に付属する部分で、付属機構と呼ばれる部分においてでした。例えば、家族、学校、小学校における加工グループが、すべて正規の工業としてカウントされていたのです。

林暁旭:これらは、実質的に、正式の工場あるいは加工工場とは言えないものです。

程暁農:そのとおりです。これらは、決して工業企業ではありません。言い換えれば、偽物です。国家統計局は、これが偽りであることを知っており、また、国家統計局の発表した数字において、もともと水増しがあり、こうした中で、新たな水増しをする術がなく、仮にそうした場合、水増し分が更に膨れ上がることとなります。

だから、工業の一部については、増額できないばかりか、むしろこれを減額させなくてはなりません。そして、残されたのは第三次産業のみとなりますが、第三次産業で水増しを行うことは、非常に容易なことです。国家統計局による露店商の数字は、おそらく彼らの言うがままの数字です。なぜなら、露店商は流動的な存在です。今日は、どの街頭にいくつの露店があるのか?明日はどうなのか?各露店商の販売額はどれだけなのか?これを推計するのは非常に困難です。

例を挙げますが、私は以前、湖北省単江口市の市長のケースを明らかにしました。彼は、出世をするために統計の粉飾を行いましたが、彼の計算によると、ある一軒の理髪店の収入が、一年で六万元になりました。当時、ある人が計算してみたところ、この理髪店の主人は、およそ、一日に数千人、一分あたり一人の理髪をしなければならず、さらには一回の理髪で非常に高い料金を徴収しなければなりません。これは、全く信用できないものです。

鴨が一年で千個の卵を産んだといった類の話のように、こうした笑い話が非常に多くあるのは事実です。こうした点を鑑みれば、いわゆるサービス業においては、こうしたごまかし、水増しの機会が非常に多いのです。

林暁旭:こうして考えてみると、現在、政府は国家規模でGDPを修正しましたが、当地政府もまた、併せてGDPを調整してくるのではないでしょうか。なぜなら、自分たちも、理由があって第三次産業に漏れがあったのだということを口実に、今年において更に高いGDPを出しても、それで出世することができるからです。

程暁農:そのとおりです。将来、現実をもって検証すべき一つの仮説ですが、私は、これが現実になると推測します。地方官僚の多くは、今回、中央政府がGDPを上方修正したことは、自分たちが粉飾した数字を承認したことに等しく、このことが、すでに既成事実となってしまっているのです。

全国各省の数字がかさ上げされる中で、皆が虚偽の数字を上へ上へと報告し、捏造を続けていけば、数字の虚偽は更に拡大していきます。このようにして、結果としての数字は、吹聴すればするほど大きくなっていくと私は推測します。

林暁旭:皆が集団でいい思いをするために、こうして、集団ででたらめを行っていますが、政府もまた、こうした弊害が発生することは分かっていたと私は考えます。それでは、なぜ政府はこのようなことをする必要があったのでしょうか?外資を誘引するためなのでしょうか?面子を保つためなのでしょうか?

程暁農:先ほど、私は、中国の統計数字、特にGDPにおける矛盾、すなわち各省の数値を加えた合計が、全国の数値を上回ることについて、既に、国際社会から様々な疑義が起こっていたと述べました。中国国家統計局によるあの説明は、多くの内情が隠されていると感じさせるものでした。

今回の国家統計局の手法には、潔白化の効果がありました。つまり、国家統計局が、水増し分を絞り出したとしても、本当に絞り終えたかどうかはわからない。まだ多くの水増しが残っているかもしれないから、今回の経済調査を通じて正確な数値を出し、今や水増し分が無くなったのだ、というわけです。

もう一つの効果についてですが、現在の中国経済は、既に新たな状態、外資を更に導入できなければ、経済が崩壊してしまうという状態に達しているということです。長江デルタにおいては、最近、地方政府が中央政府に対し、外資の導入量が急減していると訴えるケースが随所で見られます。

こうした状況の下で、地方政府は、中国経済が、外資導入の減少によって、ますます深刻な状況に直面することを、非常に懸念しています。だから、表面上において、中国経済が非常に繁栄しているかのようなイメージを作り出すことが、中国当局にとって、既に重要な政局となっているのです。

この点について、中共中央宣伝部は、一つの指示を出しました。それは、対外的な宣伝に際して、中国の良好なイメージの形成を強調せよ、というものでした。宣伝とは、誰もが本来聞きたくないことを無理やり注入することで、英語ではpropagandizeといいます。その意味はネガティブであり、人を騙すといった意味合いがあります。

中共宣伝部の指示は、実際のところ、中国当局が本当に焦っているという、その中心部分を反映しています。つまり、もし中国経済におけるバブルをより鮮やかに見せ、より綺麗に装うことができなければ、より多くの外資が撤退するでしょうし、中国経済の病はますます深刻になるのです。

林暁旭:したがって、多くの視聴者におかれては、今後、平和的機運が高まった時や、様々なpropagandizeが行われる時、改めて考え直す必要があるということです。時間の関係で、お話できるのはここまでです。程先生、どうもありがとうございました。《熱点互動》をご覧いただき、ありがとうございました。また次回にお会いしましょう。