中国経済の現状と展望 その三

2006/02/05
更新: 2006/02/05

【大紀元日本2月5日】程暁農:1985年、中国人民大学大学院修士課程経済学研究科修了後、中国全人代常務委員会弁公庁研究室を経て、経済体制改革研究所に勤務、経済体制改革研究所主任、副研究員を歴任、前趙紫陽首相が主導した改革における中枢の一人として活躍。1989年の天安門事件後、ドイツ経済研究所、プリンストン大学客員研究員を経て、同大学において社会学博士を取得。《当代中国研究》の編集責任者。

中国の実際の失業率は、中共政権にとって最大の国家秘密の一つであり、一度も公表されたことはない。発表する失業率は常に3.4%であり、その変動は±0.1%以内に収まっているのである。マスコミの報道や統計年鑑からでは、その真相を把握することはできない。

資料としての信憑性はないものの、中共政権が公表しているデータから、「水増し」された部分を取り除いたならば参考になる、と思う方がいるかもしれない。例えば、米国ピッツバーグ大学のThomas Rawski教授は、しばしば中共政権の統計データを2%カットすると述べている。果たして、そのようにすることで、多少なりとも信憑性というものがあるのであろうか。一つの例を挙げ説明していきたいと思う。

中国の失業率はどの位あるのかということは、いうまでもなく中国経済を評価するための重要なデータである。それを究明するために、私自身も様々な調査を試みた。その結果、数千万人という偽の就業という現象を発見した。全国の業種別就業人口(自営業を含む)を合計したならば、総就業人口数と等しくなるはずである。ところが、総就業人口と業種別の就業人口には、大きな隔たりが存在している。就労していないにもかかわらず、国家統計局によって、就業人口として統計された可能性が考えられる。89年までは、その差は無いに等しいものであったが、90年には1,800万人となり、2000年になると6.300万人にまで上昇してきたのである。

このようにして、大まかに中国の失業の実態を把握することができる。自然失業率を控除すれば、中国全体の失業率を推定することができる。ちなみに中国2000年度の失業率は20%に達していることが判明した。途方もない数字である。20%もの失業率を持つ国の経済が発展しているといえるのであろうか?そのため中共政権は失業率の実態をひたすら隠そうとするのである。

しかし、この分析方法は間もなく使うことができなくなった。中共政権はこの方法により、隠された真相が究明されることに気付いたため、2000年から、労働人口を公表しないようにした。しかし、労働人口はピラミッド型の構造を持っているため、算出することは決して難しいことではない。もちろん中共は本当の失業率を把握していない訳ではなく、「部外者」に知ってほしくないのである。この裏面が知られたならば、中共自身の権力と地位が問われることになるであろう。ここで、強調しておきたいことは、中国経済を研究する際、中共政権が公表したデータの裏面を見極めるということが、とても重要なことである。

次に中国の商業銀行のバランスシートについて話したいと思う。中国の銀行はいうまでもなく国際基準に従って、バランスシートに損益項目がある。損益項目から、銀行の運用状況が一目瞭然に分かる。94年に中国大陸の金融システムの損益が500億元、95年には1,000億元までに悪化した。しかし、96年になると、中国国家統計局は公表する金融システムのバランスシートの中の損益項目を削除してしまった。また、損益を隠すために、バランスシートの借貸表のデータを修正したり、改ざんしたりしたことが判明した。現在のところ、私は金融システムの損益を把握する方法を見いだすことは出来なかった。それは損益をどこに隠したのかが分らないからである。銀行の運営実態を隠すために、バランスシートを改ざんすることで、バランスシート自体の信頼性を失うと共に、中国大陸の経済の分析にも大きな支障をもたらしたのである。