最新の統計によると、2025年の台湾の薬物事件の容疑者は4万7千人、押収量は1万3千キログラムを超え、近年で最多となった。薬物の前駆原料の92%が中国から流入しており、「ミャオミャオ」から「ゾンビたばこカートリッジ」まで、中国は台湾の薬物供給網の最大の供給源となっている。専門家は、台湾が米国の経験を参考に、中国共産党(中共)を主要なリスク源と捉え、水際対策の全面的な強化、予防的な規制対象の拡大、ダークウェブ上の資金の流れへの対策を国家的な薬物取締戦略に引き上げ、国境を越える薬物供給網を断つよう求めている。
薬物問題の解決は難しい。初期にはヘロインなどのオピオイド系薬物が中心だったが、その後、アンフェタミン、ケタミン、エクスタシーが広まり、近年は新たな薬物も多数出現している。特に、第3級薬物「ミャオミャオ(メフェドロン)」を混ぜた薬物入りのコーヒーの小袋と、通称「ゾンビたばこカートリッジ」に含まれるエトミデートが広くまん延している。



警政署(中華民国の警察行政を司る中央機関)の統計によると、2025年の薬物事件の容疑者は4万7322人で、前年より9468人、25.01%増え、過去5年で最多となった。薬物の押収重量は1万3217.08キログラムで、前年比17.02%増だった。


薬物原料の9割超が中国から流入
法務部の統計によると、2025年に押収された第4級薬物に指定される前駆原料1万2581.7キログラムのうち、約92%に当たる1万1556.6キログラムが中国からのものだった。新興薬物の前駆原料については、中国への依存がさらに深刻な可能性がある。刑事警察局によると、現在台湾で乱用が深刻な第3級薬物「ミャオミャオ」の製造に必要な前駆原料は、ほぼ全て中国から密輸され、台湾内の製造工場で加工され、薬物入りコーヒーの小袋に詰められている。

エトミデートでも同様の状況が見られる。海巡署と調査局は近年、中国から密輸された「2-メルカプトエトミデート」やエトミデート酸などの前駆原料を相次いで押収している。
台湾基進の台北市議選候補者で医師の呉欣岱氏は大紀元の取材に対し、「中国から薬物の前駆原料を入手することで、台湾は徐々に薬物の加工拠点になってしまっている」と述べた。桃園では、薬物製造者がインターネットを通じて中国側の密売人から製造方法を学んでいた事例が摘発されており、「原料と技術は国外から入り、製造と販売は台湾で行う」という犯罪形態が生まれているという。


国外からの薬物原料の流入を断ち切ることが難しい主な理由は、法規制の差と密輸手口の高度化にある。呉氏によると、現行法は特定の物質のみを規制対象としているため、薬物製造組織は規制の抜け穴を利用し、未規制の前駆原料を輸入して台湾で加工する。また、犯罪組織は「化粧品原料」などと虚偽申告し、1千斤もの薬物原料を隠して輸入したり、ベトナムやマレーシアなどの第三国・地域を経由させたりしており、薬物の取り締まりや追跡を大幅に難しくしている。
ダークウェブと暗号資産が国境を越える資金移動を結ぶ
国境を越える資金の流れも、取り締まり上の難題だ。調査局は7月、暴力団「四海幇」の資金洗浄組織を摘発した。この組織は2024~2025年、薬物、詐欺、賭博による不正収益をまとめて「一括処理」し、2億7千万ドル超を国外に送金していた。国外の受取企業には中国企業も含まれていた。

このほか、大量の不正資金が暗号資産を通じて移転されている。警察の実務上の観察によると、近年の国境を越える犯罪に関わる資金洗浄事件では、最大8割が送金手段として暗号資産を利用している。
銘伝大学犯罪防治学科の王伯頎准教授は大紀元の取材に対し、ダークウェブと暗号資産の発展によって、薬物取引と国境を越える資金の流れが、さらに見えにくくなったと指摘した。
以前は銀行送金などを通じて資金を追跡できたが、現在はダークウェブと暗号資産ウォレットが結び付き、捜査技術が追い付かず、供給元をたどる途中で追跡が途切れやすいという。さらに、薬物自体は漁船やコンテナ、その他の貨物に紛れ込ませて搬入できるため、ネット取引、国境を越える資金移動、現物の密輸が相互に結び付き、不正資金が流通する温床となっている。
これまでの摘発結果は、薬物供給網の「人、物、資金の全てが国境を越えて移動している」ことを示している。呉氏も、これが現在の台湾の薬物取り締まりにおける最大の課題だと述べた。
中共が協力に消極的なことも、台湾が薬物のまん延を抑える難しさを増している。呉氏によると、国家安全局は、台湾が中国との関連情報の交換を試みたものの、相手側の姿勢は消極的で、積極的な回答がなかったと指摘していた。これは、中共政府がこの問題を重視していないことを浮き彫りにしているという。
米国の戦略を参考に資金のつながりを断つ
米国も同じ問題に直面している。呉氏によると、米下院の調査報告書は、中共が輸出税の還付などを通じて、フェンタニル原料の生産と輸出に「直接補助金を出している」と非難した。また、米側が中国企業の調査協力を中共に求めても、中共が企業側にひそかに知らせ、摘発を回避できるようにするため、供給源の追跡が難しくなっているという。
一方、米国は規制の拡大を進め、フェンタニル合成の「前駆原料」や錠剤成形機などの設備を輸出管理リストに加えた。同時に金融制裁を発動し、関与が疑われる中国の化学企業や個人の米国内資産を凍結し、ドル決済経路を遮断している。さらに、中国の供給業者がダークウェブに掲載する薬物販売広告や、ビットコインの受取口座に照準を合わせ、おとり捜査や資金洗浄ネットワークの摘発を行うなど、中国からの薬物と原料に対して全面的な対策を取っている。

呉氏は、台湾は中共の薬物供給網に対する米国の姿勢と戦略から、深く学ぶべきだと強調し、国外の薬物供給源に対処する際には、「中共政府そのものを国家安全保障と犯罪に関する主要なリスク源と捉え、相手が自発的に取り締まりに協力することに期待するのではなく、自国の水際対策と金融管理を全面的に強化すべきだ」と述べた。今後は、国家安全保障機関と治安機関が「暗号資産を使った国境を越える資金洗浄の追跡」と「ダークウェブ上のおとり捜査」を、国家的な薬物取締戦略の中核に据えるべきだと付け加えた。
台湾で薬物の供給源を取り締まる際の難しさについて、王氏は、海上密輸では船を1隻ずつ止めて調べることは不可能だと指摘した。海上・航空貨物も主にリスク管理と抜き取り検査で対応しているため、情報提供がなければ、薬物や前駆原料が通常の貨物を積んだコンテナなどに隠され、検査を通過する可能性がある。そのため、捜査機関は末端での押収から供給元をさかのぼって調べざるを得ないことが多いという。
ただ、国外からの流入防止には、なお改善の余地がある。王氏は、政府が出発地と貨物のリスクに応じて検査の程度を調整し、高リスクの地域からの貨物は抜き取り検査の比率を引き上げるよう提言した。原料が台湾内に入った後も、合法的な化学実験施設による原料の購入量、使用量、製品の流通先の管理を強化し、合法的な設備や施設が薬物製造に悪用される可能性を減らせるとした。
台湾内の薬物製造拠点について、王氏は、過去には一部の製造工場が人里離れた場所や廃屋に潜んでいたと指摘した。無人機などの技術で長期にわたり使われていない施設を調べ、異常な場所を発見する機会を増やすことを検討できるという。
法規制については、エトミデートやアンフェタミンなど、リスクの高い薬物に関連する前駆原料の規制範囲の拡大を検討し、化学構造が似た物質も評価対象に含めるべきだと主張した。新たな物質による被害が出てから、政府が遅れて個別に規制する事態を避けるためだ。王氏は、現行制度は薬物が出現した後に規制が追いかけることが多く、後手に回りやすいと指摘した。リスクが明確な範囲で事前に規制を拡大し、必要に応じて実際のリスクに基づき対象から外すべきだとしている。
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