飛行機やホテルで読むため、旅行かばんに本を一冊入れる。日本人にはごく普通のことだ。
ところが中国では、その一冊が税関で止められる理由になる。政治本だけでなく、歴史書や大学の教科書、地図まで調べられることがある。
中国の規定では、個人用の本は1回10冊以下なら免税で持ち込める。しかし、これは税金と冊数の基準であり、「10冊以下なら内容を問われない」という意味ではない。
中国政府が特に敏感なのは、共産党への批判や、政権の正当性、領土問題、社会の安定に関わる内容である。文化大革命や香港の民主化運動、台湾独立などを扱う本は、問題視される可能性がある。
政治本だけではない。過去には、歴史教科書の地図が「中国政府の基準と合わない」として調べられた例もある。
中国政府は地図にも厳しい。台湾を中国の一部として描かず、尖閣諸島を日本領とし、南シナ海に中国の「九段線」を載せていない地図は、日本では普通でも、中国では問題になり得る。
実際、文化大革命を扱った本を没収されたうえ、500元(約1万2千円)の罰金を科された例や、教科書など2冊を手放す書類に署名させられた例もある。
中国税関の規制は外国人にも及ぶため、日本人旅行者も例外ではない。日本外務省も、中国以外では一般的な本や刊行物でも、中国税関が「有害」とみなせば没収される場合があるとして、特に地図に注意を呼びかけている。
ところが、没収された「禁書」は、取り締まる側で回し読みされていたという。北京大学の研究者、王書立氏(仮名)によると、税関職員が読んだ後、公安当局にも回されていた。市民には読ませない。それでも中身は、やはり気になったようだ。
旅のお供に入れた一冊が、中国の税関を越えた途端に「危険な情報」へ変わるかもしれない。中国旅行では、かばんの本にも気をつけて。
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