論評
世界の政治家たちは、すべての先進国で天文学的な水準に達している債務を意に介していない。しかし、債券市場が発しているシグナルに、もっと注意を払うべきである。市場のトレーダーは、歳出、経済成長、債務、インフレの見通しを見ている。その数字は、もはやつじつまが合わない。
その結果、イールドカーブのあらゆる年限で利回りが上昇し、中央銀行にはもはや制御できない形で動いている。
債券市場は誰にも制御できない怪物だと最初に指摘したのは、ビル・クリントン元米大統領であった。クリントン氏の顧問を務めたジェームズ・カービル氏は、こう要約した。
「以前は、もし生まれ変われるなら、大統領かローマ法王、あるいは4割打者になりたいと思っていた。でも今は、債券市場に生まれ変わりたい。誰だって脅すことができるからだ」
冗談めいた言葉だが、そこには真実がある。
では、それはどのように機能するのか。ここには、いくつもの要素が絡み合っている。難解な専門用語に頼らず、その仕組みを整理してみよう。
まず、私の見方では最も深刻な傾向から始めたい。米国の予算のうち、国民向けの支出ではなく、債務の利払いに充てられる割合である。その数字は桁外れの水準に達している。
1950年代から1960年代にかけて、これは問題ではなかった。金本位制の終焉によって通貨増発への歯止めが外れ、債務の利払い費は増え始めた。1990年代初めには数千億ドルに達した。
その後、この問題はいったん頭打ちとなり、1990年代後半から2000年代初めにかけては、財政黒字と低金利のおかげで減少さえした。
その後、ゼロ金利時代が訪れ、一見すると恩恵のような状況が生まれ「いくら使って借金をしても、代償はない」とされた。
そして2020年が来た。新型コロナウイルス対策による巨額支出、その後のインフレと金利上昇を受け、利払い費の曲線は急激に上向いた。利払い費は数年間でほぼ倍増し、2023年末には1兆ドルを突破した。高い金利と膨らんだ債務残高の影響が表れるにつれ、2025~2026年にかけても過去最高を更新し続けた。

このすべての背後にあるのが、高インフレである。
金融上の計算では、金利はインフレ率を差し引き、実質ベースで考える必要がある。その基準で見れば、われわれは実際にはゼロ金利の世界から抜け出していない。
米連邦準備制度理事会(FRB)は金利を引き上げたが、インフレを考慮すれば、実質金利はおおむねゼロ近辺にとどまってきた。これは通常の投資判断を大きくゆがめる。
貯蓄より借金を、慎重さより投機を、実物投資よりレバレッジを有利にする。こうして資本主義そのものが壊れていくのである。
一方、政府は身動きが取れなくなっている。金利が上がれば、債務の利払い負担も増える。
ここに暗い真実がある。インフレは一般の人々を苦しめる一方、巨額の債務と財政赤字を抱える政府には利益をもたらす。インフレ率が高いほど、債務返済の実質的な負担は軽くなるからである。
現在の予測では、2052年までに債務の利払い費が歳入の100%を食い尽くすとされている。ただし、これは非常に控えめな前提に基づく。金利が上がれば、問題はさらに深刻になる。
仮に、新しいFRB議長のケビン・ウォーシュ氏が主張するように、中央銀行が本当に、心から、真剣にインフレを止めようとしているとしよう。
そのためには、この段階ではイールドカーブ全体で金利を押し上げている市場の力に従わなければならない。公開市場操作、すなわちFRBが財務省の新たな債務を購入できる仕組みを実際に停止すれば、金利は急騰するだろう。
どこまで上がるのか。それは誰にも分からない。
しかし、経済成長率が2~3%、インフレ率が約4%で推移している以上、均衡に近い状態へ戻すには、翌日物金利を7%程度にする必要がある。
率直に言って、それは耐え難い水準である。
最も差し迫った問題として、それは連邦予算を完全に破綻させ、しかも2052年よりはるかに早くそうなるだろう。数十年間経験したことのない金融上の圧力を生むことになる。
このため、政策担当者は誰もが身動きを封じられていると感じている。
インフレ、高水準の歳出、政策的に抑えられた金利。どれも受け入れられないが、どれも手放すこともできない。われわれが置かれているのは、そういう状況である。
実のところ、FRBはインフレと戦うために、それほど真剣な努力をしてこなかった。そうすれば連邦予算に耐え難い負担を課すことになるからである。
5万ドルのクレジットカード債務を抱え、利払いの金利が15%から20%、さらに25%へと徐々に上がっていく状況を想像してみてほしい。
最初のうちは、最低返済額は痛手ではあるが、まだ見慣れた範囲にある。多少の出費を削り、次に給料が上がったら返済しようと自分に言い聞かせる。残高も、まだ家計で何とか抱えられるものに感じられる。
ところが金利が一段上がると、同じ債務残高なのに、かつて家賃に充てていたほどの返済額を求められるようになる。
新たに多くの物を買っているわけではない。ただ現状を維持しているだけなのに、食費や住宅ローンを支払う前から、毎回の給料のより大きな部分の使い道が決まってしまっている。
現在も未来も、すでに消費してしまったものへの支払いだけで構成されるようになる。良い生活とは言えない。
金利が25%になると、計算は容赦なくなる。新たな利用額がわずかであっても、複利であまりに速く膨らむため、「先に進む」ことなど幻想になる。
残された選択肢は、生活水準を厳しく切り下げるか、必死で収入増を追い求めるか、債務不履行に陥るかである。
翌日物金利が4%ではなく7%になった場合の連邦予算が、まさにこれである。
債務そのものはすでに存在している。金利の見直しは、議会の準備が整うのを待ってはくれない。そして毎年、過去の債務残高が爆発的に膨らむのを防ぐだけで、国の税収のより大きな部分が費やされるようになる。
一方で、債務負担は増え続けている。メディケア、メディケイド、社会保障、巨額の軍事予算、そして資金を求める無数の業界や非営利団体である。
経済成長は譲れない。政府には税収を生み出す機械が必要だからである。景気後退が起きれば歳入不足が生じる。政府はそれを望んでいない。
なぜ政治家たちは、このすべてについてあれほど無頓着に見えるのかと、われわれは疑問に思う。
それは、彼らが心配する価値はないと判断したからである。問題に対処するより、無視した方が得られるものがはるかに大きいからだ。
債務はすでに国内総生産(GDP)の120%に達している。しかも、そこには数兆ドル規模の未積立債務は含まれていない。

次に株式市場について考えてみよう。
ゼロ金利の世界では、金融株が株価上昇の主要な源泉となってきた。貯蓄では実質的な収益を得ることができないため、資本は利回りを求めて動き、金融株へと向かう。
その金融株自体も、緩い信用環境と高いレバレッジによって押し上げられている。
永久機関を作るようなものである。エネルギー源が尽きるまでは、うまく動いているように見える。そのエネルギー源とは、レバレッジや投機ではなく、本物の貯蓄と本物の投資である。
さらに、株式市場は、一見したほどには上昇していない。2000年のドル価値を基準にすると、2026年までに、名目上のS&P指数の価値のおよそ46%が、消費者物価指数(CPI)によるデフレーターで見たインフレによって失われている。「Reality Index」の推計では、その割合は約62%に達する。

最も差し迫った問題を解決する責任は、議員とFRB議長にある。
歳出を大幅に削減すると同時に、金利を大幅に引き上げなければならない。あらゆるもの、あらゆる人に対して、二方向から強い圧力をかけることになる。
私は賭け事をする人間ではないが、そのような展開が実現する可能性は極めて低いと思う。
経済学は、ときに容赦のない支配者となる。
経済学は厳格な限界を設定する。本来なら制約のない構想の周囲に、突破できない壁を築く。
それは、上から帳簿を管理する経理担当者のように、「それをやれば深刻な結果を招く。だからできない」と告げてくる。
経済と会計の法則を覆せるほど強大な力は、この地球上には存在しない。需要と供給の力に比べれば、核兵器でさえ色あせる。
「悪い知らせを持ってきた使者を責めるな」と言うではないか。
債券市場こそ、その使者なのである。

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