米国は過去50年近くにわたり、さまざまな形でイランに経済制裁を科してきた。しかし、その制裁が本来の目的を完全に達成したことは一度もない。
論評
米国とイランの戦争が7か月目に入る中、トランプ政権は「経済版Dデー」を宣言した。これはイランだけでなく、イランとの取引を続けるあらゆる国、銀行、海運業者を対象とする包括的な経済的孤立措置である。
その狙いは極めて大規模だが、果たして効果を上げるのだろうか。
今回の措置は、これまでの制裁と比べて二つの点で対象範囲が広がっている。第一に、イランの金融システムだけでなく、船舶登録機関、船舶保険会社、貨物検査網、港湾運営会社など、世界の石油取引を支える実務上のインフラを対象としている。
第二に、イラン産原油を購入する第三国にも制裁対象を明確に拡大している。ここで主に念頭に置かれているのは中国である。理論上、これによってイランが過去の制裁をかいくぐるために利用してきたグレー市場の経路――中国の独立系小規模製油所、人民元建ての決済ネットワーク、そして「影のタンカー船団」――を封じることになる。
今回は、これまでとは違う結果になるかもしれない。過去47年間に米国がイランに科してきた制裁は、ほぼ全面的に金融システムを通じて行われてきた。具体的には、イランを国際銀行間通信協会(SWIFT)から排除し、ドル建て資産を凍結し、イラン中央銀行を制裁対象とするといった措置である。
しかしイランはそのたびに適応し、仲介業者を経由して決済を行い、地域各地に非公式な銀行ネットワークを構築することで制裁を回避してきた。
現在の状況がこれまでと異なるのは、主な圧力が金融面ではなく、物理的なものになっている点である。イラン産原油が通過しなければならない海上交通路を米海軍が掌握しているからだ。金融制裁であれば別の経路を使うことができるが、持続的な海上封鎖を回避することはより難しい。イラン国内のインフレ率は年率70~90%に達すると推定され、財政収支を均衡させるには原油価格が1バレル当たり最大124ドル必要とされている。さらに、石油輸出インフラも大きな損害を受けている。
決定的な変数であり、同時に今回の制裁の弱点でもあるのが中国である。中国はイラン産原油を1日当たり推定165万~180万バレル輸入しており、市場価格より15~20%安い価格で購入しているとみられる。これは中国経済にとって、年間約50億~80億ドルのエネルギーコスト削減に相当する。
イラン産原油はロシア産原油と並び、中国の産業基盤にとって最大級の割安な原油供給源となってきた。中国が米国の制裁に従うためには、自ら進んで年間数十億ドルものエネルギーコスト上昇を受け入れ、地政学的パートナーとみなす国をめぐってワシントンに戦略的勝利を与え、さらに米国が北京の通商関係を左右できるという前例まで受け入れなければならない。これらすべてを考えれば、その可能性は極めて低いように思える。
過去の事例も楽観できるものではない。2018~2019年、トランプ政権は「最大限の圧力」政策による制裁を再び発動し、中国の買い手に対する二次制裁も警告した。中国は当初、イラン産原油の輸入を減らしたものの、完全には停止せず、別の経路を通じた決済を続けた。
その後2年以内に、中国は山東省の「ティーポット」と呼ばれる独立系製油所のネットワークを通じ、イラン産原油の購入を制裁前に近い水準まで回復させた。これらの独立系製油所は、米国の金融システムへの実質的な依存を抑えながら、制裁対象の原油を受け入れられるよう構築されたネットワークである。
現在、このネットワークは2019年当時よりも大規模で、より確立されている。原油取引に人民元を使用する決済インフラも大幅に成熟した。こうした取引を扱う中国の銀行も、SWIFTや米ドルへの依存を最小限に抑えるよう再構築されている。
これとは対照的なのが、2006~2015年の多国間制裁である。この制裁は国連安全保障理事会、欧州連合(EU)、米国が協調して実施し、最終的には中国、インド、韓国、日本、トルコも加わった。この結果、イランの原油輸出は1日当たり100万バレル以上減少し、イランを再び交渉の席に着かせることになった。
成功の要因は、米国の圧力だけではなく、国際的な合意が形成されていたことである。ロイズ・オブ・ロンドンはイラン産原油を運ぶ貨物への保険提供を停止し、EUの製油所はイラン産原油の精製を拒み、アジアの買い手も主要貿易相手国から一致した圧力を受けた。こうした措置が積み重なったことで、イランが取り得る経済的な選択肢が制限されたのである。
現在の状況には、この仕組みを支えた重要な要素が欠けている。EUは米国の軍事行動を支持していない。NATOはこの紛争をめぐって足並みが乱れ、英国とフランスは海上封鎖への参加を明確に拒否した。中国とロシアは、少なくとも間接的にはイランの強硬姿勢から利益を得ている。インドもイラン産原油の購入を続けている。
中国の買い手に対する二次制裁が実際に執行されれば、すでに進行中のイラン戦争に加え、米中間の経済対立を引き起こすことになる。このような事態は、基軸通貨としてのドルの地位を試すとともに、人民元建て決済ネットワークの構築を加速させる可能性がある。さらに、米国が巨額の国債を引き受ける外国の買い手を一層必要としているまさにその時に、中国が米国債の売却を加速させるという報復に出る可能性もある。
スコット・ベッセント財務長官は、長期国債利回りの低下を主要な政策目標として掲げてきた。米連邦準備制度理事会(FRB)の利下げではなく、財政への信頼を確保することこそが、米国経済の借り入れコストを低下させる道だと主張している。
しかし債券市場の反応は、無関心というより軽蔑に近い。30年物米国債の利回りは2007年以来の高水準にあり、2026会計年度の財政赤字は2兆1千億ドルに向かっている。これはベッセント氏に規律が欠けているからではない。戦争がリアルタイムで財政計算を崩しているからである。
戦争によって原油価格が上昇する。それによってインフレ率が4%を超え、FRBは利下げができなくなる。その結果、40兆ドルの国家債務に対する利払い費は高止まりし、年率換算で1兆4千億ドルに達する。戦争とその費用は財政赤字をさらに拡大させる。そして「財政赤字―債務―インフレ」という悪循環が加速していく。
純利払い費はすでに国防費を上回り、医療関連の社会保障支出に匹敵する規模となっている。もし「経済版Dデー」の制裁によって戦争を終わらせることができれば、それはベッセント氏が目指す国債利回り低下戦略を実現する手段となるだろう。
しかし、30年物米国債の利回りが5.25%前後で推移していることが示す債券市場の判断は、制裁ではそのどちらも実現できないというものである。利回りが高いのは、投資家がベッセント氏の意図を信用していないからではない。彼が持つ政策手段では、この課題を達成するには不十分だと考えているからである。
だからといって、「経済版Dデー」の制裁がまったく効果を持たないということではない。二次制裁は、制裁回避に伴うコストを一定程度引き上げる。グレー市場を経由した取引をより高コストにし、第三国の船舶登録制度を利用することを難しくし、イランと取引する意思を持つ相手を減らすことになる。
海上封鎖と組み合わせれば、イランの石油収入を十分に減少させ、テヘランに現実的な財政圧力を加えられる可能性もある。トランプ大統領が、イランは「深刻なインフレに陥り、金もない」と評価しているのは、単なるレトリックではなく、現実の経済状況を反映したものでもある。
問題は、単独制裁がこれまで機能してこなかったことである。米国による対イラン単独制裁の歴史は、約50年にわたるイラン側の適応、制裁回避、そしてその仕組みの定着の歴史でもある。イランは過去のどの制裁局面でも、ワシントンの予想以上に経済的圧力への耐久力を示してきた。
例えば2006~2015年の制裁に実効性を与えた多国間の合意がなければ――つまり、中国と欧州の参加、国連安全保障理事会による協調、そしてイランの核開発計画が各国の共同負担を必要とする重大な脅威であるという同盟国間の共通認識がなければ――今回の制裁によって、7か月間の軍事作戦でも実現できなかった目標を達成する可能性は低い。それは、核の脅威としてのイランを排除し、テロ組織への軍事・資金支援を解体し、ホルムズ海峡を米国側に有利な形で再開することである。
過去50年間から得られる教訓は明確である。制裁は主要国が足並みをそろえて実施した時には機能するが、たとえ米国ほど強大な国であっても、一国だけで実施した場合には機能しないということである。
その間にも、北海ブレント原油は1バレル94ドル前後で取引されている。かつて1日130隻が通航していたホルムズ海峡を通る船舶は1日5隻にまで減少し、長期国債利回りは世界金融危機直前以来の高水準にある。そして世界経済は、米国単独の制裁では解消できない供給ショックに圧迫され続けている。

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