中国AI企業 海外経由でNVIDIA先端半導体を利用 米輸出規制に抜け穴

2026/08/21
更新: 2026/08/21

NVIDIA(エヌビディア)は最先端半導体の分野で事実上の独占状態にあり、輸出規制はトランプ政権がAI競争で中国共産党(中共)に対する優位を維持するための重要な手段となっている。

アメリカはNVIDIAの最新鋭半導体「GB300」などの中国向け輸出を制限している。しかし報道によると、一部の中国企業は東南アジアのデータセンターを通じ、こうした高性能半導体の計算能力を利用している。

7月、中国のAI新興企業Moonshot AIが新たなモデルを発表した。その1週間足らず後、ホワイトハウスのマイケル・クラツィオス氏は、同社がタイのデータセンターを通じ、エヌビディアのGB300を搭載したシステムの計算能力を利用したと指摘した。

米中のAI覇権争いが激しさを増すなか、「Moonshot AI」のKimi K3は、性能が急速に向上している中国製AIモデルの一つとなっている。DeepSeekやアリババも最近、新たなAIシステムを発表した。

業界関係者によると、海外のクラウド事業者を通じて高度な計算能力を利用できることが、中国のAIモデルの性能向上を支える重要な要因となっている。

アメリカでは現在、こうした抜け穴をふさぐための法整備が進められている。ただ、規制の実効性を確保するまでには課題が残る。

中国企業は海外のNVIDIA計算能力をどう利用しているのか

NVIDIAの最先端AI半導体は中国向け輸出規制の対象となっている一方、性能を抑えた半導体については、引き続き中国への輸出が認められている。

AI政策戦略研究所の計算能力政策チームで上級研究員を務めるキング氏はCNBCに対し、「『Moonshot AI』が物理的なハードウェア、つまり半導体を直接購入し、所有しているわけではない」のであれば、タイの設備を通じて計算能力を利用した行為は合法だと説明した。

キング氏によると、アメリカの輸出規制は物理的なAI半導体を対象としており、それらを搭載したシステムへの遠隔アクセスまでは規制していない。

中国企業が海外経由でエヌビディアのAIシステムを利用し、AIモデルを訓練していることについて、ホワイトハウス当局者はCNBCに対し、「トランプ政権は近代史上最も厳しい輸出規制を実施しており、アメリカの国家安全保障と経済安全保障を守ることに一貫して取り組んでいる」と述べた。

報道によると、バイトダンス、アリババ、テンセントなど中国の大手クラウド事業者は、タイ、マレーシア、日本などアジア各国を通じ、NVIDIA製半導体による計算能力を遠隔利用している。

事情に詳しい関係者は匿名を条件にCNBCの取材に応じ、バイトダンスがシンガポールに本社を置くクラウド事業者Aolaniと提携し、マレーシアで計算能力を利用していると明かした。AolaniはNVIDIA製半導体を保有している。ウォール・ストリート・ジャーナルが3月にこの提携を初めて報じた。

AolaniはCNBCに対し、自社のサービスは「北米とアジアの顧客を含む、世界各地の多様な顧客層」を対象としていると説明した。

同社の広報担当者は、「当社のサービスを利用する企業は、当社のソリューションを支える半導体の所有権を持たず、将来的に取得する権利もなく、物理的にアクセスすることもできない」と説明した。

そのうえで、「当社のサービス、インフラ、技術の利用はすべて、関連する法規制を完全に順守している」と述べた。

高性能AIシステムへの需要が高まるなか、企業は必要な計算能力の確保を急いでおり、東南アジアでもAIインフラの整備が急速に進んでいる。

不動産サービス大手JLLは、世界のデータセンター容量が2030年までに倍増し、200ギガワット(GW)に達する可能性があると予測している。

データ分析会社DC Byteの集計によると、マレーシア、インドネシア、タイでは現在、100メガワット以上のデータセンターが31件計画されている。一方、現在稼働している同規模のデータセンターはわずか2か所にとどまる。

「遠隔アクセス安全法案」で何が変わるのか

シンクタンク「新アメリカ安全保障センター」の技術・国家安全保障プログラム客員研究員、ミシェル・ニー氏は、こうした抜け穴が「アメリカ国家安全保障を脅かしている」と指摘した。

ニー氏は「半導体の輸出規制は、中国がアメリカの先端半導体を使って最先端AIモデルを訓練するのを防ぐことを目的としている」と説明した。

米議会は現在、「遠隔アクセス安全法案(RASA)」を提出している。輸出規制の範囲を広げ、重要なハードウェアやソフトウェアへのクラウド経由の遠隔アクセスも規制することを目的としている。

同法案は1月に下院を通過したが、まだ上院では可決されていない。

ニー氏は、法案に対して業界から反発が出る可能性を指摘した。

「法案によって『顧客確認(KYC)』や顧客の身元確認が義務付けられれば、クラウドサービス事業者には新たなコンプライアンス負担が生じる」

またニー氏は、RASAを成立させるだけでは問題は解決しないと指摘する。

同法案が成立すれば、米政府には「遠隔アクセスを規制する権限」が与えられるが、その後も「先端半導体を搭載したAIシステムへの遠隔アクセスを制限する具体的な規則を策定する必要がある」という。

キング氏によると、ホワイトハウスの支持があれば、米商務省産業安全保障局は関連規則を「数日以内」に策定することも可能だという。

一方、キング氏は課題について、「難しいのは、実効性があり、なおかつ執行可能な規則を作ることだ。政策当局は、どの計算能力を規制対象とするのか、どの主体による遠隔アクセスや計算能力の利用を禁止するのか、さらに『顧客確認』の仕組みをどのように実施するのかを明確にする必要がある」と指摘した。