湖北省宜昌市の三峡ダムの周辺地域は最近、台風13号の影響を受け、現地当局は休校や工事中止、観光地の閉鎖、列車の運休などの措置を取り、一時「戦時状態」に入った。
その数日前から三峡ダム付近では強い雨が続き、宜昌市の夷陵区、秭帰県、点軍区などで鉄砲水が発生した。三峡ダム周辺に通じる国道では複数の場所で土砂崩れが起き、「三峡人家」観光地を一時閉鎖し、数百人の観光客が足止めにあった。さらなる災害への警戒が高まっている。
台風13号で再び災害の恐れ 宜昌市が一時「戦時状態」
宜昌市教育局は8月10日午後、台風13号への対応に関する緊急通知を発表した。最初の項目で「全面的に戦時状態に入る」と明記し、各県・市・区の教育当局や学校に対し、洪水対策の責任者全員を配置につかせ、責任者と担当者による24時間の当直体制を取るよう求めた。
また、8月11日と12日は幼稚園、小中学校、中等職業学校、学習塾などで対面授業を中止し、学校内の工事も中止した。斜面や河川に近い工事現場の作業員には避難を命じた。
宜昌市応急管理局によると、台風13号周辺の雨雲の影響で、宜昌市では大雨や豪雨となり、局地的に激しい雨が短時間に降る見込みである。現地ではそれ以前から雨が続き、土壌の水分量が飽和状態に近づいており、鉄砲水や土砂崩れ、土石流、市街地の冠水リスクが高まっている。
三峡ダム、三峡人家、清江画廊、三峡大瀑布などの観光地をすべて閉鎖し、宜昌東駅を通る列車は32本が運休した。学校内の工事も中止し、斜面や河川近くの工事現場にいた作業員は避難した。
11日の宜昌市の雨量は、事前に予想していた「局地的に150ミリ以上の強い雨」という水準には達しなかった。
12日午前までに湖北省当局が発表した情報では、特に強い雨が降り、大規模な避難が行われたのは襄陽市や十堰市周辺だった。
一方、気象当局は、宜昌市では12日と13日も所によってはやや強い雨から強い雨が降り、ところにより激しい雨となる、局地的には豪雨となると注意を呼びかけた。
これまでの雨で土壌が飽和しているため、鉄砲水や土砂崩れ、中小規模のダムやため池では、雨が弱まった後も時間差で災害が発生する恐れがある。天候が大きく回復するのは14日になると予想した。
宜昌市の中小ダムや水利施設にも警戒
宜昌市に注目するのは、市内に三峡ダムと葛洲ダムという2つの大型施設があるだけではない。多数の中小規模のダムやため池、水力発電所、導水施設も点在している。
夷陵区が過去に公開した資料によると、区内にはダム60か所、水力発電所58か所がある。湖北省水利庁によると、第14次5か年計画の期間中、宜昌市では小規模ダム160か所の安全対策工事を完了した。
「三峡日報」が8月12日に報じたところによると、宜昌市内には安全上の問題があるダムが4か所あり、それぞれのダムに応じた個別対策を実施している。また、大雨が予想される地域の17か所のダムでは、事前に放流して貯水容量を確保した。さらに、335か所のため池はダムの管理責任体制に組み込まれ、これらのため池では放水設備を開き、水位を洪水吐きの高さより低く維持しているという。
湖北省水利庁によると、8月初め、三峡ダムには今年初めて、毎秒3万立方メートル規模の洪水が流入すると予想した。このため事前に放流量を増やし、13億8600万立方メートルの洪水調節容量を確保した。
台風13号の影響で、前回の洪水の影響が完全に収まらないうちに湖北省内に入った。上流からの流入、三峡ダム貯水区域での降雨、宜昌市内の鉄砲水に加え、下流への放流圧力も重なる形となった。
7月末の強い雨では、宜昌市の水利当局がダム126か所と、高所にある堤高の高い、ため池51か所を点検し、ダム8か所で「正常の越流があった」と発表していた。
*ダムの越流とは、ダムの天端や洪水吐から、貯めきれなくなった水が自然あるいは計画的に流れ落ちる仕組み
しかし当局は、越流した8か所のダムの名称や場所、越流が始まった時間、最大流量を公表していない。
また、8月4日までに水位は下がっていたのか、夷陵区や秭帰県で豪雨が降る前にどのダム、ため池、水力発電所を点検したのか、どの施設が洪水期制限水位に近づいたのか、または超えたのかについても明らかにしていない。
事前放流や越流の有無を、下流のどの村に通知したのか、楽天渓、龍進渓、横渓河の上流にため池や堰、小規模水力発電所があるのかについても公表していない。
一方、「長江電力」によると、7月28日以降、三峡ダムの1日平均放流量を毎秒約1万4千立方メートルから約1万9千立方メートルに引き上げ、事前に約13億8600万立方メートルの洪水調節容量を確保した。
8月4日には、三峡ダムへの流入量はピーク時に毎秒約3万8千立方メートルに達した。
三峡人家は三峡ダムの下流、葛洲ダムの上流に位置する。
現地でダムの補修工事に携わる関係者によると、この地域の水害リスクを判断するには、強い雨だけでなく、三峡ダムへの時間ごとの流入量と放流量、葛洲ダムの上流側と下流側の水位、2つのダムの間で水位が上昇する時間、支流や谷筋で発生した鉄砲水の到達時間、中小規模のダムやため池、水力発電所の放流記録などを確認する必要があるという。
8月4日に三峡ダム貯水区域で発生した洪水や土砂崩れの被災地では、まだ土砂の撤去や復旧作業が続く中、再び台風13号の影響による雨雲が湖北省に入った。
中国の気象情報を発信するブロガーは当時、湖北省で最も警戒すべきは、新たな雨が、被災したばかりで地盤がまだ安定していない地域に降ることだと指摘した。
すでに斜面が崩落した国道G348では再び土砂崩れが起きる可能性があり、楽天渓や龍進渓などでは再び鉄砲水が発生する恐れがある。
秭帰県や三峡ダム湖岸では、雨水を多く含んだ斜面が時間を置いて崩れる危険性もある。土砂や流木が再びカルバートや排水路をふさぐ恐れもある。
また、水位を十分に下げていない中小規模のダムやため池では再び越流する可能性がある。
三峡ダムの放流、葛洲ダムの水量調整、周辺で発生する鉄砲水のタイミングが重なれば、三峡ダムと葛洲ダムの間の河川区間や港湾施設への負担がさらに増す。
三峡ダム周辺で洪水 各地で土砂崩れ 観光地の対応に批判
これに先立つ8月5日、湖北省では一日に、豪雨や雷、激しい対流などに関する気象警報を102件相次いで発表し、恩施州や宜昌市の多くの地域で豪雨の最高レベルにあたる赤色警報を出した。
「荊楚網」は、これほど集中的な警報は、当時すでに鉄砲水や土砂崩れ、中小河川の洪水、都市部や農村部の冠水が同時に発生する広域災害となっていたことを示していると報じた。
8月4日には、三峡ダム貯水区域で突然洪水が発生し、三峡ダム周辺に通じる国道G348や三峡専用国道の複数の箇所で土砂崩れが起き、道路が寸断した。
宜昌市秭帰県は同日、工事、操業、授業、交通、営業を停止する「5停止」措置を実施し、各地で捜索・救助や住民の避難を進めた。
現場の映像では、鉄砲水が大量の土砂を巻き込みながら道路や集落、住宅、工場に流れ込む様子が確認できる。山の斜面では各所から大量の水が流れ落ち、まるで「滝」のような状態となっていた。
現地住民がSNSに投稿した内容によると、地元以外の人には滝のように見えるものの、実際には斜面を流れる地表水や谷筋で発生した鉄砲水が多いという。撮影者は「いつもとは違う三峡の景色だ」と自嘲気味に投稿した。
複数の観光客もSNSで当時の体験を投稿し、観光地側の対応の混乱を指摘した。
ある観光客は動画で、8月4日午前、観光地では大雨が降っていたにもかかわらず閉鎖せず、チケット販売を続け観光客を山間部に入れていたと訴えた。その後さらに雨が強まり、「午前10時ごろ、最初の客が入場したばかりなのに、龍進渓に着く前に閉鎖したと告げられ、入れなかった。一番楽しみにしていた三峡人家だったのに、こんな結果になった」と話した。
別の観光客は、車で1時間以上かけて三峡ダム付近へ向かったが、目的地に近づくにつれて沿道が増水しているのを見て、引き返さざるを得なかったという。この観光客は、観光地の閉鎖を知らせる通知も見なかったとしている。
投稿された映像には、黄褐色の濁流が道路や建物の周辺に押し寄せ、大量の土砂を含んだ水が流れる様子が映っていた。
また別の観光客は、旅行のために1週間の休暇を取ったものの、「三峡人家まで来たところで足止めにあった」と投稿した。添付された映像では、道路一面に泥や石、折れた木が散乱し、山の斜面から泥水が流れ続け、車や観光客が一時その場から移動できなくなっていた。
その後、川の水位が上昇し、風や波も強まったため、三峡人家の観光船は全便運休となった。観光客462人は船着き場に取り残され、陸路は土砂崩れで遮断され、水路も利用できない状態となった。
夷陵区当局はその後、船を手配して観光客を移送し、宿泊先を確保するとともに、チケット代を払い戻した。国営メディアはこの対応を大々的に報じ、8月5日午後までに観光客全員が無事に帰路についたとしている。
今回の土砂崩れについては、事前の警戒情報が出ていた。
湖北省自然資源庁は8月3日、三峡ダム貯水区域にある興山県東部、秭帰県南東部、夷陵区南西部を地質災害の危険地域に指定し、崩落や土砂崩れ、土石流が発生する危険性があるとしていた。
また、地方当局や関係部門に対し、重要な危険箇所を巡回点検し、危険が及ぶ恐れのある住民に戸別に警報を伝えるよう求めていた。
8月4日には、警戒区域は興山県、秭帰県、夷陵区の大部分に拡大した。同日夜に発表した警報では、夷陵区南西部の崩落、土砂崩れ、土石流の危険度が「高」に引き上げられた。
しかし、三峡人家では8月4日午前もチケットの販売や入場確認を続け、観光客を山間部へ送迎していた。一部の観光客は入場後に初めて龍進渓が閉鎖されたことを知った。その数時間後には、国道G348の複数箇所で土砂崩れが発生した。観光地側が全面閉鎖を発表したのはその後で、「8月5日は休園する」と告知した。
一部からは、全額返金や無料の宿泊先、船による移送で観光客への対応はできても、最も重要な疑問は残ったままだとの指摘が出ている。
すでに危険を予測していたにもかかわらず、なぜ観光地は営業を続けてチケットを販売したのか、観光客が山間部に入った後、道路で土砂崩れが起き、陸路と水路の両方が寸断されてから全面的な避難措置を取ったのか、という疑問だ。
一方、中共中央テレビは8月5日夜、秭帰県の被害について「現時点で人的被害を確認していない」と報じたが、その時点でも捜索活動は続いていた。
しかし、現地のネットユーザーの一人は7日、SNSで、夫の叔母が秭帰県茅坪鎮の九里迎賓三路で洪水に流され、現在も行方が分かっていないと投稿した。叔母の家族は三峡の観光地側と交渉を続けているという。
別の住民は、洪水で車が流された際、一部の車内にはまだ人が乗っていたと述べた。
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