スウェーデンのウルフ・クリステション首相は、スペイン政府が実施した不法移民への恩赦について「非常に悪い考えだ」と批判し、2015年に欧州を襲った移民危機の再来につながる恐れがあると警告した。
来月の総選挙で再選を目指す中道右派のクリステション氏は11日、英紙フィナンシャル・タイムズ(FT)のインタビューで、100万人を超える不法移民を対象としたスペインの合法化措置について、欧州連合(EU)首脳会議で「かなり大きな反発」を招いたと明らかにした。
スペインのペドロ・サンチェス政権は4月14日、政令を公布し、国内に不法滞在する外国人の合法化手続きを開始した。
この制度は1月27日に初めて示されたもので、スペイン国内ですでに生活・就労している約50万人の不法移民を、迅速な手続きによって合法化することを目的としていた。スペイン政府によると、合法化の申請は約120万件に達した。
この措置をめぐっては当初から議論があったが、7月末に地中海を挟んだ北アフリカ側にあるスペイン領セウタで発生した大規模な移民流入により、懸念は一段と強まった。
クリステション首相は、マドリードの措置が連鎖的な影響を及ぼせば、EU域内の自由移動圏であるシェンゲン圏に深刻な脅威となり得ると指摘した。
「これは、2015年に起きたことに少しでも近づくような行動を取らないよう、われわれが依然として非常に、非常に慎重でなければならないことを象徴している」と述べ、「スペインはメッセージを受け取ったと思う」としながらも、「脆弱性を示している」と語った。
クリステション氏は、サンチェス氏本人にも措置への反対を伝えたという。
「恩赦を行えば、欧州領域を利用する可能性も生まれる。これはわれわれにとって特に問題だ。経験上、欧州に来た多くの人々は北へ向かうことを望むからだ。まさに2015年に起きたことだ」と述べた。
さらに「これについて安心してよい時期ではない。スウェーデンでは、制御不能な状況に戻ることはできないという意見が圧倒的多数を占めている。安定した状況を危うくしかねない行動を取る非常に悪い考えだ」と強調した。
2015年には、シリアやイラクでの戦争から逃れた人々を中心に約130万人が欧州に流入。EUの庇護制度は機能不全に陥り、ギリシャやイタリアの受け入れ施設は収容能力を超えた。北方の各国は不法移民の流入を阻止するため、国境に障壁を設置する事態となった。
セウタへの前例のない流入は7月30日に始まった。推定5万〜6万人が陸路や海路でモロッコからセウタに入った。スペインが国境を開放したとの情報がSNSで拡散し、多くの人々が国境の防波堤を泳いで回り込んだ。
スペイン、モロッコ両政府の発表によると、国境の両側で80人以上が死亡した。セウタまで泳いで渡ろうとして溺れた人がいたほか、防波堤や国境フェンスを越えようとする混乱の中で、圧迫されたり踏みつけられたりして死亡した人もいた。
この事態を受け、欧州各国の首脳からサンチェス政権への批判が相次いだ。イタリアは一時、スペインとのシェンゲン圏協定を停止した。
イタリアのメローニ首相とアントニオ・タヤーニ副首相、マッテオ・サルビーニ副首相は先月31日、イタリアとスペイン間の国境検査なしの移動を1か月間停止すると発表。安全保障上必要な措置だと説明した。
スペイン本土と陸続きのフランスも、国境沿いの取り締まりを強化すると発表した。
イタリアの措置にはフィンランド、デンマーク、チェコなど複数のEU加盟国が支持を表明。3か国の政府はいずれも、EUがスペインをシェンゲン圏から除外することを検討すべきだと主張した。
EUの内相らは8月4日、セウタでの移民流入を受け、国境管理の強化、送還の迅速化、移民密輸組織の解体に向けた取り組みの拡大を求めた。
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