中国ネットを席巻した「竹ゼミ騒動」が、新たな段階に入っている。
当初は、竹製玩具の「ワーワー」という音がファーウェイの自動車発表会の歓声に似ているという、たわいもないネット上の「ネタ」だった。
ところが、関連動画を次々と削除し、投稿者のアカウントまで利用制限や閉鎖に追い込むと、笑いは怒りへと変わった。
多くの人が反発したのは、竹ゼミの動画を消したことだけではない。
中国では長年、政府や権力者への批判が封じられ、ネット上の投稿やアカウントを突然消されることも珍しくない。そうした国家権力による言論統制への不満が、すでに社会に積み重なっていた。
そこへ今回の封殺である。
ネットユーザーの目には、単なる企業の権利保護ではなく、ファーウェイが国家権力を後ろ盾に、自社をからかう声まで封じ込めようとしているように映った。
竹ゼミは、あくまできっかけだった。直接は言えなかった権力への怒りが、「ワーワー」という笑いに姿を変えて一気に噴き出した。
その勢いは、もはや竹ゼミだけにとどまらない。鍋ぶたやペットボトルのふた、工具、薬瓶など、身近な物を竹ゼミのようにくるくる回してファーウェイをからかう動画がSNSにあふれ、一時は関連する新規動画が1日で3千本を超えた。
たった一つの玩具から始まったネタは、誰もが身近な物で参加できる「全民ネタ」へと姿を変えていった。
さらに、ファーウェイが長年築いてきた「愛国ブランド」への反発も重なった。
中国では、ファーウェイ製品を支持することを「愛国」と結びつけて語られ、同社製品を選ばないことで「愛国心がない」とみなすような風潮がたびたび問題となってきた。
台湾・中原大学の劉文斌・非常勤准教授は、製品を使うかどうかと「愛国」を結びつける、こうした一種の「感情的な圧力」が人々の反感を招いてきたと指摘する。
そして今回、その不満が目に見える形で表れた。
8月5日に開かれたファーウェイの新型車「尊界」の発表会では、ライブ配信のコメント欄は「竹ゼミ」で埋め尽くされ、一時コメント機能を閉鎖した。「竹ゼミネタが尊界の新車発表会を席巻」とする話題も中国SNSのトレンド入りを果たし、ネット上のからかいは、もはや無視できない規模にまで膨らんだ。
インド太平洋戦略シンクタンクの陳文甲・特別顧問は、ファーウェイがネットユーザーの冗談をユーモアで受け流さず、通報や封殺で対応したことで、かえって反発が拡大したと分析する。
政治への不満を正面から口にしにくい中国では、冗談やネット上の「ネタ」が、人々の感情の出口になることがある。今回、その出口になったのが竹ゼミだった。
長い批判文も、政治的なスローガンも必要ない。竹ゼミを回す。「ワーワー」と鳴る。それだけで伝わる。
台湾国防安全研究院の沈明室研究員は、今後、人が竹ゼミの音を聞くだけでファーウェイを連想するようになると指摘する。
投稿なら削除できる。アカウントなら封じられる。しかし、人の間で一度共有した「思い」までは消せない。
竹ゼミがこれほど鳴り続けるのは、おもちゃそのものが面白いからだけではない。その「ワーワー」に、人々は長年押し殺してきた権力への怒りを乗せていった。
その怒りや不満は、竹ゼミ騒動で突然生まれたものではない。ずっと前から社会にたまっていた。そこへ、誰でも参加でき、一目で意味が通じる竹ゼミという格好のきっかけが現れ、一気に噴き出したのだ。
いまでは、この現象を「竹ゼミ革命」と呼ぶ声まで出ている。
子供のおもちゃだった竹ゼミが、巨大企業への嘲笑を超え、権力への不満を表す合言葉になるとは、誰が想像しただろうか。
この勢いが続けば、「竹ゼミ」は2026年の中国を象徴する流行語の一つになるかもしれない。
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