市販類似薬に追加負担 アトピー保湿剤は対象外へ 厚労省が新制度の中間とりまとめ案

2026/08/06
更新: 2026/08/06

市販薬と同じ成分をもつ処方薬「OTC類似薬」に患者の追加負担を求める新制度をめぐり、厚生労働省の技術的検討会は8月5日、これまでの議論を「中間とりまとめ(案)」として了承した。焦点となっていた塗り薬・貼り薬の扱いでは、アトピー性皮膚炎の保湿剤を「通年処方」などの条件付きで追加負担の対象外とする一方、湿布などの鎮痛消炎の外用薬は原則として対象としつつ、重い変形性膝関節症など一部の患者に限って2029年3月まで例外を認める経過措置を設けた。新制度は2027年3月に始まる予定である。  

8月5日、中間とりまとめ案を了承  

8月5日に開かれたのは、制度づくりを担う技術的検討会の第4回会合である。これまで非公開も含めて重ねてきた議論の内容が「中間とりまとめ(案)」の形で示され、了承された。  

制度の法的な土台となるのは、6月5日に公布された健康保険法などの改正法である。この改正により、市販薬との代替性が特に高い医療用医薬品(OTC類似薬)の使用を「一部保険外療養」に位置づけることが決まった。厚労省は今後、この中間とりまとめを社会保障審議会の医療保険部会などに報告し、2026年の秋ごろをめどに結論を得る方針である。あわせて、追加負担の対象となる医薬品の品目一覧(案)も公表されている。  

外用薬が最大の焦点に アトピー保湿剤と湿布で線引き  

議論で最後まで難しさが残ったのが、塗り薬や貼り薬といった外用薬の扱いである。同じ薬であっても「何のために処方されたか」によって、追加負担の有無が分かれるよう整理された。  

アトピー性皮膚炎の保湿剤が対象外となる条件  

アトピー性皮膚炎の治療では、症状を抑えて再び悪化させないために、保湿剤を継続して使い続ける必要がある。こうした実態を踏まえ、検討会は、ヘパリン類似物質や尿素製剤のような皮膚保湿剤について、診療ガイドラインに基づき通年で処方される場合は追加負担の対象外とする考えを示した。  

ただし、無条件ではない。同じ保湿成分の薬であっても、アトピー治療以外の別の疾患に処方された場合は追加負担の対象となる。  

湿布など鎮痛消炎外用薬は原則対象 重症例に経過措置

一方、湿布に代表される鎮痛消炎の外用薬は、原則として追加負担の対象とされた。厚労省は、これらの薬が主に痛みを和らげる目的で使われ、使い続けるかどうかが患者本人の自覚症状に左右されやすいこと、また、1年を通じた継続使用の有効性が診療ガイドラインで明確に示されているのは一部の成分・製剤に限られることを理由に挙げている。  

ただし、通年で処方を受けている患者の中には、変形性関節症のような慢性かつ重度の痛みを抱える人が一定数いることも認められた。そこで、2029年3月(令和10年度末)までの経過措置として、次の条件をすべて満たす場合に限り、対象外とすることになった。  

– 痛みなどの自覚症状が続いており、これまで通年で使用している  
– 画像検査などで「慢性かつ重度の疾患」であることが客観的に確認される(例:変形性膝関節症のKellgren–Lawrence分類グレード4)  
– 医師が、年間を通じた痛みの管理として継続使用が医療上必要と判断し、毎日使うよう指示して処方する  

厚労省は、経過措置が終わるまでの間に、診療ガイドラインのエビデンスや制度実施後の処方の実態を踏まえて、必要な見直しを行うとしている。  

新制度のポイント OTC類似薬に4分の1の追加負担

新制度は、OTC類似薬の薬剤費の一部(4分の1)を「特別の料金」として患者に別途求める仕組みである。保険給付をすべて外す「保険適用除外」ではなく、保険外の負担を上乗せする「一部保険外療養」と呼ばれる方式をとる。  

対象となるのは、市販薬と成分・投与経路が同じで、1日の最大用量も変わらない医療用医薬品である。この条件で機械的に選ばれた77成分・約1100品目が候補とされ、その中には解熱鎮痛薬のロキソプロフェンや、抗アレルギー薬のフェキソフェナジン、そして今回焦点となった皮膚保湿剤のヘパリン類似物質などが含まれている。制度の枠組みは2025年12月の与党側の合意を受けて固まったもので、2027年3月の実施が目指されている。  

追加負担を求めない人  

厚労省は、負担能力や治療の必要性に配慮し、次のような人は追加負担の対象から外す方向で検討している。  

・ こども  
・ がん患者や難病患者など、配慮が必要な慢性疾患を抱えている人  
・ 低所得者  
・ 入院中の患者  
・ 医師が、その薬の長期使用などを医療上必要と判断した患者  

外用薬でこの線引きが難航したのには、実務上の事情もある。飲み薬であれば処方日数や量から使用のペースをある程度つかめるが、塗り薬や貼り薬は、処方量だけでは実際にどの程度の頻度で使われているかを把握しにくいためである。診療ガイドラインや画像検査という客観的な基準を手がかりに線を引こうとしているのは、この難しさへの対応といえる。  

今後の議論の行方 市販薬と処方薬の境界はどう変わるか

制度導入の背景にあるのは、医療保険財政の持続可能性という課題である。高齢化が進み医療費が膨らみ続けるなかで、制度を主に支えているのは現役世代が納める保険料である。市販薬でも対応できる症状にまで保険給付を手厚く続けることの是非が問われ、世代間の公平性や現役世代の負担軽減という観点から、見直しが進められてきた。  

一方、患者側からは慎重な対応を求める声も上がっている。アレルギー疾患の患者団体などは、継続的に薬を使う必要のある患者にとって負担が重くなれば、子育て世代など生活に余裕のない層の治療継続に影響しかねないと懸念を示してきた。今回、アトピー治療の保湿剤や重症の関節症患者を条件付きで対象外としたのは、こうした声も踏まえた対応とみられる。  

制度が実際に患者の負担としてどこまで及ぶのか、その細部は、秋に向けた最終的な結論と、告示・通知の内容にかかっている。市販薬と処方薬の境界をどこに引くのか。その議論は今後も続く。