夜9時。中国・山東省済南市の街外れにある村の空き地で、母親たちが次々とスマートフォンの前に立つ。
流れてくる音楽に合わせ、ぎこちないダンスを繰り返す。視聴者から届くかもしれない、わずかな投げ銭が、わが子の薬代や治療費になる。その一心で、母親たちは夜ごと踊り続けていた。
こうした「踊る母親たち」の姿は中国メディアでも相次いで取り上げられ、大きな反響を呼んでいる。
ここに集まる母親たちの多くは、子供の治療のため地方から済南へ移り住んできた。子供は病院に長期入院し、昼は母親が病室で付き添う。一方、父親はフードデリバリーの配達員などとして朝から晩まで働き、生活費と治療費を稼ぐ。
夜になると、母親たちは家族に子供を託して病室を離れ、村の空き地や簡素な部屋でライブ配信を始める。
人気配信者のような収入は望めない。それでも、少しでもお金になればいい。その一心で約2時間、同じ動きを繰り返す。一つの動作は約20秒。その間に3回も腰をかがめるため、2時間で1千回以上も腰を折ることになる。それでも母親たちは汗だくになりながら踊り続ける。
がんが肺にも転移している3歳の男の子の母親は、毎晩息子を祖母に預けて配信に向かう。ライブ配信の視聴者は多くても十数人ほどだが、「頑張っている姿を誰かに見てもらえればいい。たとえ数十元でも、子供の薬代になる」と話している。
全身の骨に転移したがんと闘う7歳の男の子は、100万元(約2千万円)を超える免疫治療を勧められた。父親はフードデリバリーの配達員として働き、母親は夜になるとライブ配信で踊る。その少年は毎晩出かける母親を見送りながら、こうつぶやいた。
「ママはダンサーになりたいのかな」
その幼い一言は、多くの人の胸を締めつけた。
ライブ配信の背景には、「勇敢な小さな戦士、がんばれ」と書かれた赤い横断幕が掲げられている。視聴者が一桁しかいない日でも、母親たちは機械のように同じ動きを繰り返し、汗を流し続ける。
しかし、軍事パレードなど、中国政府が「豊かで力強い中国」を演出する重要な時期には、そのイメージにそぐわないライブ配信は「負の情報」と見なされ、アカウント停止や動画削除の対象になることもある。
華やかな都市の灯のすぐそばで、汗を流しながら子供の命をつなごうとする母親たちがいる。
その小さなライブ配信には、中国の庶民が置かれた厳しい現実と、それでも最後まで子供を守ろうとする親たちの、静かで強い愛を映し出している。
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