仏当局 中共の「海外警察署」9か所を摘発 越境弾圧への対策強化

2026/07/02
更新: 2026/07/02

フランスのメディアはこのほど、同国当局が中国共産党(中共)に関連する「海外警務拠点」9か所を摘発したと報じた。

フランス国内治安総局(DGSI)は、国境を越えた弾圧への対策を進める中で、「国籍にかかわらず、フランス国内ではあなたの権利は保護される」とのメッセージを、国内にいる人々に伝えたいとしている。

DGSIはフランスの主要な国内情報機関で、防諜、外国勢力による干渉への対処、テロ対策などを担っている。

仏紙「ル・モンド」は最近の調査報道で、フランスの防諜当局が2025年春以降、違法な「中国警察署」9か所を摘発したと報じた。

中共は2022年以降、フランス国内に「海外警察署」を違法に設置した。2024年には、パリのシャルル・ド・ゴール空港で、反体制活動家の凌華湛さんを中国へ送還しようとする事件が起きた。フランス側は、こうした行為を国境を越えた弾圧にあたるとみている。

ただし、フランス当局が閉鎖したとされる9か所の拠点について、具体的な所在地などの詳細は現時点で公表されていない。

大紀元は、過去の事件で関係が指摘された協会や中華料理店などを調べたが、現在も通常通り活動または営業しているように見えるものもあり、一部は名称や形態を変えた可能性もある。

たとえば、凌さんの送還未遂に関わったとされる「愛心団」協会は、パリ郊外のオーベルヴィリエにある。フランスメディアは同協会の関与を追跡報道しており、グーグル上の口コミには、中共への協力を批判する投稿も見られる。

凌さんは2024年6月24日、大紀元の取材に対し、パリ9区にある雲南三和食府と小四川の2つの中華料理店が、フランス情報当局によって拠点と確認されたと述べている。凌さんは、自身もそこで身体的な危害を受けたと訴えていた。

凌さんは大紀元の取材を受けて間もなく、交通事故に遭ったとの未確認情報もあるが、詳細は確認できていない。以降、連絡が取れなくなっており、現在の所在や安否は分かっていない。

ネット上には、2025年に投稿された凌さんに関する動画もある。ただし、映像の人物は、大紀元記者がパリで面会した凌さんとは外見上の印象が異なり、本人かどうかは確認できない。

「ル・モンド」によると、フランス福建工商連合会も拠点の一つとされる。同紙は、同連合会の会長で、Naumyグループ最高経営責任者(CEO)の倪朝文が、フランスから国外退去処分を受けた「警察署」責任者3人のうちの1人だったと報じた。

同紙の調査によれば、中共国務院僑務弁公室に提出された写真の中で、倪朝文は「福州警僑事務海外サービスステーション」と中国語と英語で書かれた大型ポスターの前に立っていた。また同氏は、WeChatを通じて中共公安部から指示を受けていたとされる。2021年12月9日には、公安部の当局者と福州市副市長の訪問に備え、フランスに人員を派遣する手配を指示されたという。

報道によると、フランス内相は2025年5月11日、倪に国外退去を命じた。ただし、この命令は簡易手続きの中で一時停止された。

フランス福建工商連合会は2016年に設立された。前会長は石忠勝で、同氏はフランス福州十邑同郷会も設立している。

本紙が同連合会の背景を調べたところ、福建省僑連の公式サイトは2018年1月11日、「フランス福州十邑同郷会、フランス福建工商連合会が福州で第19回党大会精神学習座談会を開催」と題する記事を掲載していた。記事によれば、両団体の関係者はフランスから福州を訪れ、「中共第19回党大会の精神」を勉強したという。

この時期は、非政府組織「セーフガード・ディフェンダーズ」が、中共が2018年から「海外警察署」活動を進めたと指摘した時期と重なる。

NGO報告で明らかになった「海外警察署」

「セーフガード・ディフェンダーズ」は2022年9月、中共が53か国に100か所以上の「海外警察署」を設けているとする報告書を公表した。

この活動は2018年に始まり、当初は小規模だったが、海外で関連拠点が設置されるにつれて拡大していったという。

「ル・モンド」は、中共が2017年6月28日に制定した国家情報法により、中国国民や企業が中共当局の情報収集に協力することを義務づけられていると指摘した。同紙は、中国国民や企業が当局の情報収集に動員され得る仕組みだとの見方を示している。

中共当局は「海外警察署」について、在外中国人への警務支援、関連犯罪への対応、証明書類の手続き、身分情報の変更報告などのサービスを提供するものだと説明している。

一方、2021年4月から2022年7月までに、23万人の中国人が「説得」により帰国させられ、中国で刑事訴追を受けた。

セーフガード・ディフェンダーズの当時の一覧では、フランス国内に4か所の違法な「海外警察署」があり、いずれもパリ首都圏に集中していた。

DGSIは「防諜活動の対象の一つとして、国境を越えた弾圧は国内治安総局が優先的に注視・追跡する」と強調している。

DGSIの公式サイトによれば、国境を越えた弾圧とは、一部の政府が海外にいる政治的反対者や競争相手を特定し、所在を把握し、監視し、脅迫し、検閲し、送還し、または危害を加えるために行う一連の抑圧行為を指す。こうした行為は外国による干渉であり、フランスに居住する人々が本来持つ法的権利への重大な侵害にあたる。

「行政サービス」を装った監視活動

2024年3月22日、フランスの記者が、中共関係者による凌さんの強制送還未遂を追跡し、報道した。凌さんはパリのシャルル・ド・ゴール空港で、中国系団体「愛心団協会」のメンバーに「付き添われて」いた。その中には、駐フランス中共大使館の国家安全関係者2人も含まれていたという。最終的にはフランス警察が介入し、送還計画は阻止された。

フランス国内で調査、出頭要請、逮捕、強制送還を行う権限を持つのは、フランス警察だけである。

2025年6月3日、フランス内務省は、コンスタンス・ル・グリップ議員の書面質問に対する回答で、DGSIが中共の「警察署」に関連する9つの連絡ネットワークの存在をフランス国内で確認したと明らかにした。

フランス内務省は、これらの「警察署」は厳密には従来の意味での「中共の秘密警察署」ではないと説明している。通常は「連絡員」と呼ばれる人物で構成されており、中国系コミュニティ内の個人や、指定された協会がその役割を担う場合があるという。

一方で、これらの組織はフランス当局に届け出ていない。提供しているサービスは、主権国家の行政機関が通常行うサービスに近く、本来であれば二国間協力の枠組みの中で扱われるべきものだと内務省は指摘している。

さらに、これらの組織は、海外の中国系コミュニティに関する情報収集、国境を越えた弾圧への関与、人材のリクルート、海外中国系コミュニティへの管理統制など、いかなる協力の枠組みにおいても認められるべきではない活動にも関わっているという。

内務省は、こうした組織の存在は、中共当局が海外の中国系コミュニティをどのように見ているかを示していると指摘した。たとえ居住国に長く定住していても、中共当局はなお彼らを中共の影響圏内にある存在とみなし、厳しく管理しようとしているという。

内務省はまた、これらの「連絡拠点」は、海外中国人を管理し、中共当局による海外中国人への行政管理を容易にすることを目的としていると説明している。

フランスと欧州、越境弾圧に反対姿勢

フランス内務省は、国内に「中共警察署」が存在するとされる問題について、「フランスは自国の主権に対するいかなる侵害も決して受け入れない。フランスは、外国勢力が自国領土で行う活動に対し、極めて強硬な姿勢で対処する」と表明している。

パリのジャンリュック・ロメロ=ミシェル前副市長は、自身のブログで「中共の独裁政権はますます露骨になっている。これらの地下警察署が摘発されたことに深い安堵を覚える。これは、同政権に反対してフランスに逃れてきた多くの中国人難民を守るために必要な措置である」と述べた。

欧州議会は2026年6月16日、「国境を越えた弾圧への対抗」に関する決議を採択した。決議は、国境を越えた弾圧を「基本的権利、加盟国の主権、EUの民主的価値に対する重大な脅威」と位置づけた。

決議では複数の権威主義体制が名指しされ、その中には中共も含まれている。欧州議会は、中共が「世界で最も広範かつ組織的な国境を越えた弾圧」を行っていると指摘した。

欧州議会は特に、中共が海外にいわゆる警察署を設け、華人団体、デジタルネットワーク、仲介者を通じて、海外で暮らす中国系コミュニティの人々を監視、脅迫、または強要していると指摘している。

この決議により、フランス国内の中国系警察拠点の問題は、より広いヨーロッパ全体の課題として位置づけられることになった。すなわち、亡命者、反体制活動家、記者、学者、海外の華人コミュニティを、外国政府による干渉や脅迫からどのように守るかという問題である。

2026年5月中旬には、アメリカで中共の海外警務拠点の開設を支援した中国系男性に有罪判決が下された。国際社会で、中共による国境を越えた弾圧に反対する動きが強まっていることを示している。

呉沃