欧州連合(EU)の立法府議員らが、権威主義的政権が海外の標的を沈黙させようとする「越境弾圧(トランスナショナル・リプレッション)」への対抗措置強化を訴えた。
欧州議会は6月18日、越境弾圧と外国からの干渉を「最も強い言葉で」非難する動議を採択した。欧州委員会および加盟国に対し、欧州域内でのこうした行為に「ゼロ・トレランス(一切容認しない)」の姿勢で臨むよう求めている。
「越境弾圧は民主主義、人権、そしてEU加盟国の安全保障に対する最も深刻かつ見過ごされてきた脅威の一つとなっている」と、この取り組みを主導するドイツ人議員ハンナ・ノイマン氏は「今回の報告書はその対抗策への第一歩だ」と声明で述べた。
非拘束的な同措置は、ストラスブールでの本会議で、賛成434票、反対128票、棄権104票で可決した。欧州議会が越境弾圧に関する動議を採択するのは、ここ1年足らずで2度目となる。
採決は、欧州委員会のウルズラ・フォン・デア・ライエン委員長、ドナルド・トランプ大統領、そして他のG7首脳がフランス東部でサミットに出席するさなかに行われた。
昨年の会合では、越境弾圧を「国家またはその代理勢力が、国境外の個人や集団を威圧・嫌がらせ・危害・強制しようとする積極的な形の外国干渉」と定義する共同声明を採択している。

「組織的な慣行」
最新の報告書は、中国共産党(中共)政権、ロシア、ベラルーシ、イランを主要な実行国として名指しした一方、数十もの政府が海外の反体制派を追っていると指摘した。
標的とするのは、ジャーナリスト、活動家、学者、政治家、在外同胞コミュニティの成員およびその家族にとどまらず、被害者を擁護・支援する個人・団体もリスクにさらされている。
ノイマン氏は動議採択後の記者会見で「越境弾圧は孤立した現象として捉えるべきではない」「権威主義的政権が用いる組織的な慣行として捉える必要がある」と語った。
ワシントンに拠点を置く人権団体フリーダム・ハウスは、2014~25年にかけて世界で1375件に上る標的殺害・誘拐・暴力・強制失踪などの物理的な事例を記録した。
ただし報告書は、越境弾圧はEU域内も含め「著しく過少報告している」と指摘する。被害者が家族への報復を恐れたり「権威主義体制下での過去の経験から当局に不信感を抱いている」ためだという。
直接的な弾圧に加え、権威主義国家はEUの制度・システムを弾圧の道具として悪用しようとしていると、ノイマン氏は指摘した。
例えば、加盟国が亡命審査に翻訳サービスを利用する際、最安値の業者を選ぶことが多いが、こうした業者が特定の政権の諜報機関と関係している場合がある。
ノイマン氏は「欧州の制度・システムが、欧州内における弾圧の道具として悪用されることは今後あってはならない」「これは閉じなければならない抜け穴の一つだ。銀行口座の凍結、インターポールへの告発通報など、まだ他にも多くの問題がある」と語った。

今回の動議は欧州委員会、欧州理事会、加盟国に対して80以上の政策提言を提示している。目的は、欧州全域で調整された対抗戦略を構築し、住民を保護し主権を守ることにある。
提案措置の一つは、越境弾圧に関するデータを収集し、動向を監視し、事件を報告するEUレベルの仕組みの創設だ。関係者が情報を提供し、当局と加盟国が対抗策を策定・評価・改善できるようにする。
ノイマン氏は「越境弾圧には結果が伴わなければならない」「個々の実行犯とその背後にある政権の双方を司法の場に立たせる必要がある。これが中心的な要求だ」と語った。
「歴史的な節目」
影響を受けた人々の中には、2020年に中共政権が旧イギリス領の香港に厳格な国家安全維持法を施行した後、欧州各国に移住した香港市民も含まれる。
報告書は、香港当局が同法を越境弾圧に活用し、欧州の政治家が訴追・引渡しの脅威にさらされ、居住者には逮捕状や懸賞金を提示していると指摘した。
人権擁護団体「キャンペーン・フォー・ホンコン」は報告書の採択を歓迎し「重要な政治的節目」と表現し「この報告書は越境弾圧を欧州の政治課題に確固として位置付けるものだ。私たち多くにとって、この認知は遅きに失した」と声明で述べた。
同団体は欧州委員会と欧州理事会に対して、具体的な行動への転換を求めた。
「採決は重要だ。しかし次のステップがさらに重要だ」
EUは近年、越境弾圧への対抗に向けた取り組みを強化しており、越境的な威圧行為に責任があるイラン当局者への制裁や、中共政権に対する海外での批判封じ込めキャンペーンの中止要求なども行っている。
議会の委託により今年1月に公表した調査では、ロシア政府とイラン政府への対応と比較して、欧州による中共政府の越境弾圧への対応は「より弱い」ことを示していた。
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