習近平は8日、北朝鮮を訪問した。中国共産党政権は今回の訪問を通じて中朝同盟関係の強化を図る考えだが、北朝鮮は従来から中共に対して強い警戒感を抱いているとされる。北朝鮮の金正恩は、かつて訪朝した元米国務長官に対し、在韓米軍の駐留が中国を牽制する役割を果たしているとの認識を示したという。
中共の官製メディアによると、習近平と夫人の彭麗媛は8日午前、北朝鮮の首都・平壌に到着し、2日間の日程で国賓として訪問を開始した。訪朝に先立ち、習近平は北朝鮮の朝鮮労働党機関紙「労働新聞」に署名入り論文を寄稿。「覇権主義と強権政治に反対し、あらゆる軍国主義復活に反対する」と主張し、中共が北朝鮮と連携して日米に対抗する姿勢を示唆した。
今年は平壌と北京が「中朝友好協力相互援助条約」を締結してから65周年に当たり、習近平の今回の訪朝には象徴的な意味合いがある。新華社通信が先に公開した映像では、中国メディア関係者が、最近運行を再開した列車で遼寧省丹東から平壌へ向かう様子が映し出されていた。
習近平の訪問を迎えるため、平壌市内の至る所には習近平の肖像画や両国の国旗が掲げられ、朝鮮語と中国語で書かれた横断幕も数多く設置された。
中国問題を専門とする独立系評論家の蔡慎坤氏は7日、X(旧ツイッター)への投稿で、「金正恩は習近平がどのような外交演出を好むかを熟知している。整然とした歓迎式典、沿道を埋める大群衆、花束と歓声、こうした光景は他国では次第に見られなくなったが、北京が求める『最高級の待遇』への期待を満たすことができる」と指摘した。
その上で、「金正恩は損得勘定にも長けている。盛大な歓迎行事の費用はそれほど大きくないが、その見返りとして多額の経済支援やエネルギー支援、政治的後ろ盾を得られる可能性がある。国際制裁に長年直面してきた北朝鮮にとって、極めて割の良い取引だ」と分析した。
一方で蔡氏は、金正恩が中共に対して終始強い警戒心を抱いているとも指摘した。北朝鮮の安全保障や国家の将来に関わる問題については、韓国の一部政治家以上に、中共がもたらし得る戦略的影響を冷静に認識しているとの見方を示した。
蔡氏によれば、その点についてはポンペオ元国務長官が回顧録の中で率直に描写している。
2018年、当時の中央情報局(CIA)長官だったポンペオ氏は極秘裏に北朝鮮を訪問した。初対面の際、金正恩は開口一番「あなたが来るとは思わなかった」「あなた方が私を殺そうとしていることは知っている」と語った。これに対しポンペオ氏は冗談交じりに「私は今もあなたを殺そうとしていますよ」と応じたという。ポンペオ氏の回想によれば、この言葉に金正恩は大笑いし、場の雰囲気は一気に和んだ。
その後の正式会談で、ポンペオ氏は金正恩に対し「中共は、米国が在韓米軍を撤退させれば、あなたは大いに喜ぶだろうと我々に伝えている」と述べた。これを聞いた金正恩は再び笑い、「中国人は皆うそつきだ」と語ったという。
さらに注目されるのは、その後に金正恩が示した説明である。金正恩は、在韓米軍の存在は実際には北朝鮮の安全保障に資するとし、その理由として中共に対する戦略的な牽制効果を挙げた。もし米軍が朝鮮半島から撤退すれば、中共政権の朝鮮半島に対する影響力は拡大し、北朝鮮は戦略的自主性を失いかねないとの認識を示したという。
金正恩はさらにポンペオ氏に対し「もしあなた方が去れば、中共は新疆やチベットに対するのと同じように朝鮮半島を支配するだろう。私は米国が朝鮮半島から撤退することを全く望んでいない」と語ったとされる。
蔡氏は、「金正恩の戦略認識において、米国は長年の敵対相手である一方、中共もまた警戒すべき政権である。北朝鮮が米中の間で追求しているのは均衡であり、どちらか一方への全面的な傾斜ではない。そのため、中共への現実的な依存と深層的な警戒心が併存しており、この複雑な心理が北朝鮮の対中政策に明確な二面性をもたらしている」と述べた。
習近平が前回平壌を訪問したのは2019年で、今回は約7年ぶりの訪朝となる。中共は伝統的同盟国との関係強化を目指しているが、近年、北朝鮮とロシアの関係が急速に接近していることも中共側の警戒を招いている。
金正恩はロシアのプーチン大統領と複数回会談しているほか、ロシア・ウクライナ戦争への軍派遣も行った。今年5月には、北朝鮮軍が初めてロシア軍とともにモスクワで開催された戦勝記念日の軍事パレードに参加した。
韓国の聯合ニュースによると、今回の中朝首脳会談は8日中にも行われる見通しで、経済協力や朝鮮半島情勢に加え、中ロ朝の3者間でどのように連携を図るかなどが主要議題になるとみられている。
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