2026年5月7日、ジョージ・グラス駐日米国大使は自身のSNS(X)を更新し、日本の現政権が進める外交・安全保障政策に対し、最大級の賛辞を送った。
安倍氏の遺産を継承・発展させる高市外交
グラス大使は投稿の中で、故・安倍晋三元首相が2016年に提唱した「自由で開かれたインド太平洋(FOIP)」構想が10周年を迎えたことに言及。その上で、現在の高市首相がこの理念を単に継承するだけでなく、複雑化する国際情勢に合わせて「さらなる発展」を遂げさせている点を高く評価した。
具体的には、ベトナムやオーストラリアといった「信頼できるパートナー」との安全保障・経済協力の深化を挙げ、日本が地域のリーダーとして、また米国の揺るぎない同盟国として、平和なインド太平洋の未来を形作っていると強調した。
軌跡:2016年、中国の海洋進出に対抗する「自由の羅針盤」
グラス大使が言及した「10年」の原点は、2016年8月に遡る。当時、安倍首相はケニアで開催された第6回アフリカ開発会議(TICAD VI)の基調演説にて、初めてFOIPの構想を世界に打ち出した。
提唱の背景:中国への懸念と「法の支配」
当時、日本がこの構想を急いだ背景には、中国による一方的な海洋進出があった。東シナ海での尖閣諸島周辺への領海侵入の常態化や、南シナ海における人工島の造成・軍事拠点化など、国際法を軽視した「力による現状変更」の動きが顕著となっていた。
これに対し、日本は以下の三本柱を掲げ、中国の覇権的な動きを抑制する国際秩序を提言した。
基本的価値の普及: 中国の進出を念頭に、「法の支配」や「航行の自由」を再確認。
経済的繁栄の追求: 透明性の高い「質の高いインフラ投資」による連結性の向上。
平和と安定の確保: 沿岸国の海上法執行能力の構築支援。
この日本発の構想は、その後、米国、オーストラリア、インド(QUAD)や欧州諸国をも巻き込み、今や特定の国による支配を許さないための「グローバル・スタンダード」へと成長を遂げた。
深まる日米連携 自民党「国力研究会」への出席へ
グラス大使の視線は、今後の日本の自民党内の動向にも向けられている。大使は5月21日に開催される自民党の議員グループ「国力研究会」に講師として招かれる予定だ。
同研究会は、麻生太郎副総裁らが発起人となり、高市首相を党内から強力に支える政策集団として発足したばかり。対中強硬派としても知られるグラス大使が、高市首相の支持基盤であるこの場に登壇することは、日米同盟のさらなる緊密化と、中国に対する抑止力の強化を象徴する動きと言える。
10年前、中国の台頭という危機感の中で蒔かれた「自由で開かれたインド太平洋」という種は、現在、高市政権下で「日米同盟の深化」という強固な大樹へと育っている。グラス大使の動向は、今後の東アジア情勢を占う上で、引き続き重要な焦点となるだろう。
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