イラン戦争で湾岸同盟国がドル支援を要請 知っておくべきこと

2026/04/29
更新: 2026/04/29

ベッセント米財務長官は先週、湾岸地域およびアジアの複数の米同盟国が、米国との通貨スワップ協定を要請したことを認めた。

開始から9週目に入ったイラン戦争は、エネルギー・ショックから通貨の乱高下に至るまで経済に悪影響を及ぼしており、ドル流動性の課題に対処するための通貨スワップの必要性が高まっている。

各国は報道の確認に慎重な姿勢を見せているが、ベッセント氏は、スワップはワシントンと支援を求めた諸国の双方にとって有益であると述べた。

4月22日の上院歳出委員会小委員会の予算公聴会において、ベッセント氏は議員らに対し次のように語った。

「連邦準備制度(FRB)によるものであれ財務省によるものであれ、スワップラインはドル資金調達市場の秩序を維持し、米国資産が無秩序に売却されるのを防ぐためのものである」

「したがって、スワップラインはアラブ首長国連邦(UAE)と米国の双方に利益をもたらす。また、前述の通り、アジアの同盟国を含む他の多くの国々もスワップを要請している」

以下に、通貨スワップラインについて知っておくべき事項をまとめる。

通貨スワップとは何か?

スワップラインとは、中央銀行が自国通貨を担保として、他の中央銀行から米ドル、ユーロ、日本円などの外貨を一時的に借り入れる仕組みである。

両国の中央銀行は、合意された期日に、金利を反映したレートで交換を逆転させることに合意する。相手国通貨が強くなれば米国は利益を得るが、弱くなれば損失を被ることになる。

2024年3月25日、ワシントンにある連邦準備制度理事会(FRB)の建物(Madalina Vasiliu/The Epoch Times)

中央銀行は自ら外貨を創出することはできないが、スワップラインによって国内銀行へ外貨を貸し出すことが可能になり、世界の資金調達市場における流動性供給源として機能する。

これらの交換は通常、市場の混乱、経済的不確実性、あるいは地政学的な紛争の最中に行われる。また、ドル建て資産を保有する外国銀行が、ドル不足を補うために資産を投げ売り(ファイアセール)するのを防ぐ予防策としても利用される。

例えば、イングランド銀行がポンドを連邦準備制度(FRB)に渡し、引き換えにドルを受け取ったとする。イングランド銀行はそのドルを英国の金融機関に貸し出し、ドル建て債務の借り換えや取引の決済といった資金調達の義務を果たさせる。その後、指定された期日に、FRBはドルを受け取りポンドを返却する。

報道の経緯

4月21日のCNBC「スクワーク・ボックス」のインタビューで、トランプ大統領は、米国とUAEが近くドル・ディルハムのスワップ協定に着手する可能性があると述べた。

大統領は「彼らを助けることができるなら、そうするつもりだ。UAEは良い国であり、我々の良き同盟国だ」と語った。

トランプ氏の発言を受け、アブダビ側はやや反発を見せた。

駐米UAE大使のユセフ・アル・オタイバ氏は4月21日のXへの投稿で、「UAEが外部の財務支援を必要としているという示唆は、事実を誤認している」と述べた。

しかし、オランダ系金融大手INGの地域リサーチ責任者であるパドリック・ガーベイ氏は、各国がドル・スワップラインへのアクセスに少しでも関心を示しているならば、何らかの歪みが生じていることを示唆していると指摘する。

ガーベイ氏は4月22日のメモで、「これは、少なくともドルに対する需要があることを示しており、目前の問題を反映しているというよりは、予防的な措置である可能性が高い」と述べた。

「エネルギー価格(ドル建て)の上昇によって増幅されていることは間違いないが、グローバル・システムにとってドルへのアクセスが依然として継続的な課題であることを示している」

過去の事例

米国が最後に通貨スワップを実施したのは、昨年末のアルゼンチンとのケースである。

ミレイ大統領の「自由の前進」が地方選挙で大敗した後、リバタリアン寄りのリーダーが掲げる財政計画が脅かされるとの懸念から、同国の金融市場は混乱に陥った。株価は暴落し、ペソは急落、債券価格も下落した。

2025年10月14日、ワシントンのホワイトハウスで、ドナルド・トランプ米大統領がハビエル・ミレイ・アルゼンチン大統領を出迎える(Madalina Kilroy/The Epoch Times)

ミレイ氏の権力掌握が弱まることを危惧した米国は、ブエノスアイレスとの間で200億ドルのスワップを設定し、資金難を食い止めた。この合意により、ラテンアメリカ経済の金融情勢は安定した。その後、ミレイ氏は立法府選挙で圧勝し、政府は1月にスワップラインの借入分を返済した。

米国の通貨スワップには長い歴史がある。

今後は財務省がスワップを担当する可能性もあるが、歴史的にはより多くの資源を管理するFRBがこれを行ってきた。特に顕著だったのは、新型コロナウイルスのパンデミック初期にFRBが膨大な数のスワップラインを立ち上げたことである。

世界的な混乱の中、世界中の国々がドル不足に直面していた。米中央銀行は、国際市場に数十億ドルを注入することで事態を沈静化させた。

同様のドルスワップは、1960年代にブレトンウッズ体制の維持を試みた際にも行われた。また、2001年9月11日の同時多発テロや、2008年の世界金融危機後にもスワップラインが開始されている。

ドルの覇権

通貨スワップは、ドルの国際的な覇権を誇示し、維持するためにも利用される。

第二次世界大戦終結以来、ドルは世界の主要な準備通貨であり続けてきた。米国のシンクタンク、アトランティック・カウンシルによると、現在、ドルは外貨準備の約60%、貿易の54%、外国為替取引の89%を占めている。

過去10年間、中国とロシアを筆頭とする国家連合は、ドルの王座を奪い、人民元のような通貨を据えようとする「反ドル運動」を主導してきた。イラン戦争は、ここ1年ほど沈静化していたこの脅威を再燃させる可能性がある。

サウジアラビアは1970年代、安全保障の約束と引き換えに原油の価格設定をドルで行い始めた。イラン戦争により、中東全域における石油やその他の物資の流れが脅かされている。これらの製品が出荷できなければ、湾岸諸国は決済時にドルを受け取ることができない。これは流動性リスクを生み出し、紛争が長引くほど深刻化する恐れがある。

サウジアラビアの首都リヤドのすぐ南、アル・クルジ地区近郊にあるアラムコ石油施設(2019年9月15日撮影)(Fayez Nureldine /AFP via Getty Images)

米国がその穴を埋めなければ、諸国は近年そうしてきたように、中国に支援を求めるかもしれない。

外交問題評議会(CFR)が収集したデータによると、2025年において中国は世界の通貨スワップラインのほぼ半分を占めていた。北京がイラン紛争中にスワップを開始したかどうかは不明だが、もし中国体制がこの混乱を利用し、人民元が世界市場に浸透すれば、「脱ドル化」の危険が再燃する可能性がある。

キャピタル・エコノミクスの新興市場担当副チーフエコノミスト、ジェイソン・タヴィー氏は、現時点ではドルに大きな圧力はかかっておらず、湾岸地域で人民元が普及しているわけでもないと指摘する。

タヴィー氏は4月23日の報告書の中で次のように述べている。「3月に発表された中国の詳細な貿易データを見ると、湾岸諸国における国内需要が先月(3月)に急減した兆候が早くも現れている。この景気悪化は、来週発表されるサウジアラビアの第1四半期GDP統計で裏付けられる可能性が高く、続く第2四半期にはさらに深刻な数字が出るだろう」

「湾岸諸国による米通貨スワップラインの要請は、外貨資産を取り崩さずにドル需要を満たすことを目的としているようで、ドルペッグ制(固定相場制)が脅かされているという信号ではない」

戦争が激化する中、主要通貨に対するドルの価値を示すドル指数(DXY)は最大2%上昇した。これは、世界におけるドルの「安全資産」としての地位を改めて裏付けるものとなった。

この記事で述べられている見解は著者の意見であり、必ずしも大紀元の見解を反映するものではありません。
アンドリュー・モランは10年以上にわたり、ビジネス、経済、金融について執筆。「The War on Cash.」の著者。