世界最大の半導体受託製造会社であるTSMCの機密情報が不正に持ち出された事件で、台湾の知的財産・商業裁判所は4月27日、元技術者ら4人に有罪判決を言い渡した。東京エレクトロンの台湾法人にも罰金1億5千万台湾ドルが科され、執行猶予3年とされた。
事件は2ナノメートル製造プロセスに関する営業秘密をめぐるもので、台湾国安法上の重要技術に関わる初の法人責任案件だ。
裁判所によると、国家安全法違反などの罪で、TSMC元技術者の陳力銘被告に懲役10年、陳韋傑被告に懲役6年、吳秉駿被告に懲役3年、戈一平被告に懲役2年が言い渡された。また、東京エレクトロン台湾法人の女性管理職、盧怡尹被告には懲役10か月、執行猶予3年が言い渡された。
事件は2025年6月末、TSMCの社内情報セキュリティー監視システムが異常なアクセスを検知したことで発覚した。調査の結果、複数の技術者が在宅勤務の仕組みなどを利用し、スマホで機密資料を撮影していたことが分かった。撮影された資料には、TSMCの2ナノメートル製造プロセスに関する研究開発資料が含まれていた。
台湾高等検察署の知的財産検察分署の起訴によると、陳力銘被告はかつてTSMC第12工場の歩留まり部門で技術者として勤務していた。退職後は、TSMCの半導体製造装置サプライヤーである東京エレクトロン台湾法人のマーケティング部門に移った。同署は2025年12月、同法人について営業秘密法違反や国安法違反などの容疑があるとして追起訴した。
裁判所によると、陳力銘被告らは2023年8月から2025年6月にかけて、業務用パソコンや社内データベースを使って機密資料を表示し、携帯電話で画面を撮影していた。陳韋傑被告は、ログイン権限がなかったにもかかわらず、同僚のアカウントを使ってデータベースに入り、画像ファイルを撮影して陳力銘被告に送信したとされる。
また、盧怡尹被告は2025年6月、東京エレクトロンのクラウド上に保存されていた画像ファイルが刑事事件の証拠になり得ると認識しながら、社内で責任を問われることを避けるため、これを削除したとされた。
判決は、陳力銘被告について、自身の業務上の実績を上げるために犯行に及び、TSMCの営業秘密が外部に流出する危険を生じさせ、台湾の産業競争力と経済安全保障を脅かしたと指摘した。一方で、陳被告が調査に協力し、TSMCも謝罪を受け入れる意向を示したことなどを量刑で考慮した。
陳韋傑被告が無断で複製した営業秘密は、14オングストローム製造プロセスに関する機密情報だった。裁判所は、TSMCが世界最先端の製造技術で主導的地位を維持するための重要技術だと指摘した。
盧怡尹被告については、証拠を削除した後、自ら東京エレクトロンに報告し、同社が捜査機関に届け出たことや、本人が裁判手続きで犯行を認めたことから、刑の減免が認められた。
東京エレクトロン台湾法人について、裁判所は、陳力銘被告が以前からの知人関係を利用してTSMCの内部情報を不正に集める可能性を認識していたと指摘した。一方で、同法人が犯行を認め、捜査やTSMCの内部調査に協力し、親会社とともにTSMCと和解したことから、執行猶予3年とされた。同法人は判決確定後、TSMCへ1億台湾ドル、国庫へ5千万台湾ドルを支払う必要がある。
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