ドナルド・トランプ米大統領は5月に中国を訪問し、習近平と会談する計画だ。最近、トランプ氏が公の場で習近平を「称賛」したことが注目を集めている。これについて産経新聞の元台北支局長の矢板明夫氏は、これはトランプ氏の一貫した交渉手法であり、対中政策の大きな方向性は変わらないと述べた。
当初4月に予定されていたトランプ大統領の訪中は、中東での戦事対応に追われたため5月に延期された。その一方で、トランプ氏は最近の公の場で、米中間には「良好なビジネス関係が築かれている」と述べ、習近平に対する「敬意」を表明した。
これに対し、外部の世論にはさまざまな解釈があり、トランプ氏の発言を「親中的」と見る向きもある。しかし、印太戦略シンクタンク事務局長の矢板明夫氏は、この見方は表面的すぎると指摘する。
矢板氏は先日、フェイスブックで「先に礼を尽くし、その後に強硬に出るのがトランプ氏の一貫した交渉手法だ」と分析した。また、元ホワイトハウス国家安全保障会議(NSC)の余茂春中国担当主任の見解を引用し、トランプ氏は公然と対立することを好まず、相手の心理を理解するタイプだとし、とりわけ「面子」を重視する体制に対しては、言葉の上で友好的な姿勢や称賛を示すことで警戒心を和らげ、その後の交渉に向けた余地を作ると説明した。しかしその一方で核心的利益や構造的問題において「トランプ氏が本当に譲歩したことは一度もない」としている。
矢板氏はまた、トランプ氏が2017年11月8日から10日にかけて国賓として中国を訪問した際のことを振り返った。当時、中国側は非常に高いレベルで接遇し、故宮博物院を閉館して迎え入れるなど、盛大な歓迎行事が行われた。トランプ氏はその際、習近平を何度も称賛し、中国当局やメディアは米中関係が新たな協力段階に入るとの見方を一時示した。
しかし情勢はすぐに反転した。トランプ氏は帰国後まもなく、2018年に対中貿易戦争を開始し、中国からの輸入品に関税を課し、その対象をテクノロジー、投資、サプライチェーン分野へと拡大し、両国関係の方向性を大きく変えた。
矢板氏は、今回トランプ氏が再び示している友好的姿勢は、政策転換ではなく、あくまで戦略的な布石と見るべきだと分析する。特に、5月中旬に予定される訪中を前に緩和的なメッセージを発することで、交渉環境を整え、自らに有利な条件を引き出そうとしている可能性があると指摘した。
さらに彼は、米中対立はすでに構造的な競争段階に入っており、技術規制、産業チェーンの再編、インド太平洋戦略、軍事配置などの面で、アメリカの対中警戒は超党派の共通認識となっていると述べた。そのため、たとえ一時的に言葉の上で緩和が見られたとしても、この大きな流れが変わることはないとしている。
矢板明夫氏は最後に「構造的対立が解消されない限り、米中競争は今後も深化し続ける」と結論づけた。
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