ベッセント長官 グリーンランドを巡り欧州が米国債を売却するとの観測を否定

2026/01/21
更新: 2026/01/21

ベッセント米財務長官は20日、ドナルド・トランプ大統領がグリーンランドの掌握を目指していることへの報復として、欧州各国政府が米国債を売却する可能性があるとの観測について、「完全に誤ったナラティブだ」として否定した。

ベッセント長官は、スイス・ダボスで開かれている世界経済フォーラム年次総会の合間に記者団の取材に応じ、欧州の首都が、ある記者が「核オプション」と表現した米国債の大量売却に踏み切った場合に備え、財務省やホワイトハウスが対応計画を持っているのかとの質問を一蹴した。

ベッセント長官は、欧州連合(EU)や英国で、トランプ大統領のグリーンランド取得構想への報復的な金融措置として米国債を売却し、その結果、米国政府の借り入れコストを押し上げる可能性があるとの密室協議が行われているという噂について、報道が生んだ「ヒステリー」だと指摘し「これは誤ったナラティブであり、欧州各国政府でそのような話が出ている事実はない」と述べた。

ベッセント長官はさらに「メディアがこれに飛びついているが、論理に反しており、強く否定する」と語った。

ベッセント長官は、市場の基礎条件や国際金融の構造を踏まえれば、欧州各国政府が協調して米国債を売却することは現実的ではないと述べ、約30兆ドル規模とされる米国債市場について、世界の流動性と価格形成の中核を成す存在だと説明したうえで「すべての金融取引の基盤であり、欧州各国政府は今後も保有を続けると確信している」と述べ、冷静さを保ち、ヒステリックな報道に耳を貸さないよう呼びかけた。

米国は対外赤字を賄うために海外資本に依存しており、欧州は最大の債権者として、推計で約8兆ドルの米国債および米国株式を保有している。この規模は、世界の他地域すべてを合わせた額のほぼ2倍に相当する。

欧州による金融報復をめぐる報道上の観測は、トランプ大統領がグリーンランドを巡って欧州の同盟国への圧力を強め、北極圏の島の取得を改めて主張すると同時に、新たな関税措置を示唆した後に浮上した。これを受けてEU首脳らは緊急会合を開き「いかなる形の威圧にも自らを守る用意がある」と表明するとともに、トランプ大統領の関税の脅しは大西洋を挟んだ関係を損ない「危険な悪循環」を招くと非難した。

アナリストらは、米国債市場は規模が大きく流動性も高い一方で、海外からの資金流出には脆弱だと指摘している。

INGのマクロ部門グローバル責任者カーステン・ブジェスキ氏と、オランダ担当チーフエコノミストのバート・コリイン氏は1月19日付のリポートで、これは米欧間の深い相互依存関係を示すと同時に、少なくとも理論上は欧州が米国に対して影響力を持ち得ることを示していると分析した。

もっとも、INGの両アナリストは、欧州各国政府が民間投資家に対してドル建て資産の売却を強制できる手段はほとんどないと指摘し、実際に欧州が「米国売り」の局面に踏み込むかどうかは全く別の問題だとしたうえで、EUができるのはユーロ建て資産への投資を促すことにとどまると述べた。

ベッセント長官は1月19日、ダボスで記者団から、欧州による報復的な金融措置を米国として懸念すべきか問われた際、同盟国に対し緊張を高めることを避けるよう促し、最善の対応は冷静さを保ち、外交に委ねることだと述べた。

ベッセント長官は、「ここにいる全員に求めたいのは、一歩引いて深呼吸し、成り行きを見守ることだ。各国が米国に対してエスカレートさせることほど最悪なことはない。指導者たちはエスカレートせず、最終的には皆にとって非常に良い形で収束すると確信している」と語った。

1月20日には、トランプ大統領の関税措置を巡る発言や、欧州各国の報復論が意識され、アジア市場で米ドルは2日連続で下落した。

The Epoch Times上級記者。ジャーナリズム、マーケティング、コミュニケーション等の分野に精通している。