オピニオン 最後に最も深く傷つくのは、中共自身

【王友群】反日世論を再燃させた中国共産党 表面化した6つの結果

2025/12/27
更新: 2025/12/27

2025年の年末、中国共産党(中共)は、日本の高市早苗首相が「台湾海峡で『最悪の事態』が起きた場合、日本はどうするのか」と述べた発言に不満を抱いたことを口実に、再び反日世論を煽り、経済・政治・文化・軍事・外交のあらゆる分野から日本に対して極限的な圧力を加え始めた。

その極端な手法は二つある。

第一に、中共軍機が日本の戦闘機に対してレーダー照射を行ったことである。発砲こそしなかったものの、これは準戦争行為である。

第二に、中共中央の機関紙『人民日報』が、日本の高市早苗首相に対して「九つの罪」を着せたことである。これは、高市早苗との「絶交」を宣言したに等しい。

11月7日から現在まで、中共による反日は1か月と26日間続いている。では結果はどうだったのか。私の見るところ、少なくとも6つの大きな結果が現れている。
 

1)だまされなかった目覚めた中国国民

周知のとおり、中共は世界最大の売国政党である。今回再び反日運動を煽った真の目的は、国家主権・領土保全・安全の擁護ではなく、中共が直面している最も深刻な政治危機から国民の目をそらすことにある。

2020年に武漢から新型コロナの大流行が始まって以来、3年間の極端なゼロコロナ政策、さらに3年間の軍内部の大粛清を経て、中共は歴史上かつてないほど深刻な政治危機に直面している。

習近平が自ら破格かつ超スピードで昇進させ重用した中共政治局委員、中央軍事委員会副主席ですら「忠誠を失った」とされ「党が銃を指揮する原則」と「軍委主席責任制」を深刻に破壊した人物と断じられている。

では、習は誰を信じられるのか。誰が習を信じられるのか。誰が「二枚舌」ではないのか。誰が芝居をしていないと言えるのか。

習が就任して13年間で昇進させた上将は、いったい今、何人残っているのか。

中共第20回党大会後、四中全会前までにすでに14人の上将が問題を起こし、四中全会ではさらに14人の上将が欠席した。その多くも問題を起こしたと伝えられている。

昨年12月23日、習が陳輝を上将に昇進させた際、陳輝を含めて出席した上将は10人だった。今年12月22日、習はさらに2人の上将を昇進させたが、出席者はわずか4人だった。

陳輝、常丁求、郭普校、王強、楊学軍、凌煥新の6人の上将は全員欠席した。この6人は全員問題を起こしたのだろうか。可能性は高い。

軍の士気は不安定で、腐敗は蔓延し、国民生活は困窮している。兵変(軍事クーデター)・政変(クーデター)・民変(民衆デモ)のリスクは大きく高まっている。これこそが、今の中共にとって最大の頭痛の種である。中国国民の不満をそらすためにこそ、中共は再び反日の茶番劇を演じたのである。

しかし、目覚めた中国国民は、この操作にまったく乗らなかった。

中国のネットユーザーが「どうやって高市早苗に対処すべきか」と中共に助言する書き込みを見ると、彼らが中共の悪を誰よりもはっきり見抜いていることがわかる。以下は中国ネット民の一部の発言である。

「(高市の)財産を公開しろ、怖がって死ぬぞ」
(中国では高官の財産公開ができない)

「日本国籍を取って、選挙で高市を落とせ」
(中国には自由選挙が存在しない)

「俺を日本に派遣して罵らせろ。向こうは自由に罵れる」
(中国には言論自由が存在しない)

「ポケットに手を突っ込め」
(ポケットに両手を突っ込んだまま日本の外交官に対峙した戦狼外交官の無礼さへの皮肉

 

2)日台関係・米台関係がさらに緊密化

中共が台湾海峡戦争を起こせば、2300万人の台湾住民が被害を受けるだけでなく、日本、フィリピン、韓国など周辺国の安全も重大な影響を受ける。これは自明の理だ。

11月7日、日本の高市早苗首相は衆議院での答弁で、台湾海峡で戦争が起き最悪の事態となれば、日本は「存立危機事態」と見なす可能性があると述べた。これは根拠のない不安をあおる発言ではなく、常識である。

とりわけ、百年に及ぶ中共の歴史を見渡せば、中共は道徳や法の底線を一切持たず、目的のためには手段を選ばず、数々の政治運動で無数の人を陥れ、害し、殺してきた党である。中共が台湾を占領したら、何をするかは明らかだろう。

2019年以降、中共は香港の「逃亡犯条例改正反対運動」を暴力的に弾圧してきた。わずか6年で、香港はどうなったか。かつての「東方の真珠」と呼ばれた香港は輝きを失い「国際金融センター」の地位は国際金融遺跡と化し、活力に満ちた都市は死んだように沈黙している。

もし中共が台湾海峡戦争を起こせば、日本の海上エネルギー生命線は遮断され、台湾半導体との供給網も断たれ、日本は直接的な軍事脅威にさらされる。

中共の新たな反日の波は、日本人、台湾人、米国人、そして良心ある世界の人々すべてに、「中共の脅威」を実感させた。この「中共脅威論」は誰かが作り出したものではなく、中共自身が演じて見せたものである。中共による日本への極限的圧力こそが、日台関係・米台関係を一段と押し上げた。
 

3)中共が国際的にさらに孤立

中共が反日の茶番劇を演じた後、王毅外相は行く先々で日本に対する恨みを撒き散らした。また中共外交部の報道官、駐日大使、駐大阪総領事、国連大使らが、繰り返し日本を激しく非難した。しかし結果は逆効果だった。中共は国際社会でさらに孤立を深めた。

12月20日、日本と中央アジア5か国による首脳会議が東京で開催され、日本の高市早苗首相と、カザフスタンのトカエフ大統領、キルギスのジャパロフ大統領、タジキスタンのラフモン大統領、トルクメニスタンのベルディムハメドフ大統領、ウズベキスタンのミルジヨエフ大統領が出席し、会議期間中、重要鉱物のサプライチェーン強化などを含む150件以上の文書が署名・提出された。

カザフスタンのトカエフ大統領は高市首相に対し、次のように述べた。
「我々は常に日本を、アジアにおける信頼に足るパートナーと見なしてきた。このパートナーシップは時間の試練に耐えてきた」「あなたの英明かつ有能な指導の下で、日本は大規模な改革を進めており、これは国際舞台における日本の地位をさらに高めるだろう」「我々は日本を遠い隣国と呼ぶが、親密で信頼できる友人と見なしている」

12月7日、オーストラリアのマールズ国防相は東京で日本の小泉進次郎防衛相と共同で、両国が新たな年次「日豪戦略防衛協議枠組み」を構築すると発表した。この枠組みは、サイバー、宇宙、後方支援、情報、国防産業サプライチェーンなどの分野を統合するものである。

またマールズ国防相は次のようにも述べている。

「日本は、信頼でき、不可欠なパートナーである」「オーストラリアと日本は、地域におけるルールに基づく秩序を守るため共に努力しており、我々は断固として日本と共に立つ」

11月19日には、シンガポールの黄循財首相がブルームバーグのインタビューで次のように述べた。

「我々は、中国が日本への憎しみを我々と同じように手放すことを望んでいる。シンガポールはすでに歴史を脇に置き、前進している。日本は東南アジアで最も信頼されている大国である。したがって、シンガポールおよびすべての東南アジア諸国は、日本が安全保障分野でより大きな役割を果たすことを支持している」

12月初旬になるとベトナム海軍艦艇が初めて台湾海峡を通過。11日、ベトナム范秋姮 外務省報道官は、「1982年採択の国連海洋法条約などに基づき、ベトナムは台湾海峡での自由航行という合法的権利を有する」と述べた。

「台湾海峡に事態が起きれば、フィリピンにも事態が起きる」と早くから公言してきたフィリピンは、日本との防衛協力を着実に深化させている。

日比両国の部隊による「日・フィリピン部隊間協力円滑化協定」はすでに発効し、合同軍事演習も実施されている。フィリピンはまた、日本から03式中距離地対空誘導弾やあぶくま級護衛艦を導入する可能性について協議を進めている。日本にとって最も重要な同盟国である米国は、日本への支持を少しも弱めていない。それどころか、不断に強化している。

先進工業国で構成されるG7(主要7か国)は一貫して、台湾海峡の平和と安定の維持が極めて重要であり、現状を一方的に変更する行為に反対するとの立場を堅持している。
 

4) 日本の防衛能力が向上

12月16日、日本国会は2025年度(2025年4月~2026年3月)補正予算案を承認し、防衛関連費として1兆1千億円(約71億ドル)を追加した。当初予算9兆9千億円と合わせ、2025年度の防衛費は約11兆円となり、GDP比2%に達した。
日本は当初、この目標を2028年に達成する計画だったが、2年前倒しで実現した。

12月13日、共同通信は、日本政府が2026年度予算案における防衛費(在日米軍再編経費を含む)について調整を進め、過去最大となる約9兆円(約620億ドル)規模を計上する方針だと報じた。

報道によれば、この予算は反撃能力としての長射程ミサイルの取得、沿岸防衛システム「SHIELD」に必要な攻撃用無人機の配備に充てられる。また、日本は宇宙分野の能力を強化し、新たに「宇宙作戦群」を編成し、航空自衛隊を「航空宇宙自衛隊」へ改編する。

さらに、陸上自衛隊那覇駐屯地を拠点とする第15旅団を師団へ格上げし、西南地域の防衛体制強化を図る。12月19日、小泉進次郎防衛相は記者会見で、将来も「非核三原則」を堅持するのかと問われ「国民の生命と平和な生活を守るためには、いかなる選択肢も排除せずに議論する必要がある」と述べた。

中共、北朝鮮、ロシアによる核の威嚇に直面し、日本は「非核三原則」を修正し、米国の原子力潜水艦が日本の港に寄港することを容認する可能性もある。日本はまた、中共の軍事的脅威に直面するフィリピン、オーストラリア、東南アジア諸国との協力を模索している。
 

5)中国経済の損失がさらに拡大する可能性

中国本土メディア『極目新聞』によると、フライト管理アプリの最新統計では、2026年1月の中国―日本間の往復便の欠航数はすでに2195便に達し、全体の欠航率は40.4%となっている。このうち46路線は、今後2週間(2025年12月23日~2026年1月5日)の計画便がすべて欠航し、欠航率は100%で、中国と日本の計38空港が影響を受け、44万人以上の移動に影響が出る見込みだ。

『アジア経済』の評論員・陳志強は『ウォール・ストリート・ジャーナル』の取材に対し、次のように分析した。

「これは典型的な自傷的制裁だ。日本の観光産業チェーンでは、現地旅行会社、個人ガイド、民宿・飲食業の多くが在日中国人経営である。中共の禁令は、真っ先にこの中国人起業家層の生計を直撃する」

「さらに重要なのは、彼らが得た利益は通常、中国国内に還流し、再消費や投資に回っていたという点だ。日本旅行を断つことは、重要な外貨と資金還流ルートを断つことに等しく、低迷する中国経済にとってはまさに追い打ちである」

中共が中国国民の日本旅行を制限しているにもかかわらず、日本の観光業への影響は大きくない。日本政府観光局が12月17日に公表したデータによれば、訪日外国人客数は引き続き過去最高を更新している。

今年11月の訪日客は351万8千人で、前年比10.4%増。

1~11月累計では3906万人に達し、すでに2024年通年の総数を超えた。米国からの訪日客も初めて年累計300万人を突破し、中国、韓国、台湾に次ぐ第4の市場となった。

中共による持続的な反日運動は、日本企業の対中撤退を加速させるだけである。キヤノンの広東省中山市工場は11月21日に正式に操業停止となった。
ソニーの広東省恵州市工場も閉鎖間近と伝えられている。ソニーの撤退だけでも3万人の中国人雇用に直接影響し、関連産業を含めれば失業者はさらに増える可能性も出てきている。
 

6)壊すのは容易、修復は困難

1979年の日中国交正常化以降、習近平以前の歴代中共トップは、いずれも日中関係の発展を重視してきた。中共の改革開放は、日本から多大な恩恵を受けてきた。しかし習近平は、2012年の就任以来13年間、一度も日本を国賓訪問していない。中共と日本の摩擦は絶えなかった。

2025年現在、中国経済は深刻な危機に直面している。不動産企業の相次ぐ破綻、巨額の債務、深刻な失業、外資撤退、工場や商店の倒産、消費低迷、人口の急激な減少……市民の怨みは沸騰している。

この歴史的な局面において、東方で最も発達した国である日本と良好な関係を築くことは、中国にとって中国経済・民生・国際イメージを改善するうえで極めて重要だ。しかし中共が今最も関心を寄せているのは、経済や国民生活の改善ではなく、深刻な政治危機からいかに逃れるかである。

中共は日本を「ガス抜き役」とし、理性を欠いた極限的圧力を加えれば、国内の矛盾はすべて覆い隠され、大規模失業も、EC追徴課税の分断的苦痛も、社会保険料追納による企業資金繰り破壊も、外資逃避も存在しなくなると考えている。これは自己欺瞞である。

中共が再び反日浪潮を煽れば煽るほど、日本の各界は中共の正体をより鮮明に見抜く。日中関係の回復と改善は、ますます困難になる。かつて鄧小平が大変な苦労をして回復させた日中関係は、わずか13年で、習政権によって国交正常化46年の最低点へと落ち込んだ。

結語

日本の著名なメディア人である矢板明夫は、中共の今回の反日操作について次のように語った。

「この出来事を非常に的確にたとえた人がいる。中共のやり方は、昔の暴力団の対峙に似ている。双方が二列に並び、緊張が高まる中、中共側の親分が突然ナイフを取り出し、自分の太ももを何度も激しく突き刺し『見たか? 俺はここまで残酷になれるんだ。怖がったほうがいいぞ!』と怒鳴る。相手は怖がるどころか、その意味不明な行動に呆然とし、苦笑するしかない」

中共は本来、日本を脅し、怖がらせ、屈服させようとした。しかし今日に至るまで、高市早苗は頭を下げず、謝罪もしていない。最後に最も深く傷つくのは、中共自身である可能性が高い。

この記事で述べられている見解は著者の意見であり、必ずしも大紀元の見解を反映するものではありません。
王友群