令和7年12月25日、高市総理は総理大臣官邸で令和7年第15回経済財政諮問会議を開催した。会議では、前日に閣議了解された「令和8年度の経済見通し」と、今後の経済財政運営における優先課題について議論が行われた。
令和8年度の経済見通しと予測
政府が示した令和8年度の経済見通しによると、実質GDP成長率は1.3%程度、名目GDP成長率は3.4%程度となる見込みである。
- 内需主導の成長: 所得環境の改善が進む中で、個人消費が対前年度比1.3%程度増加し、経済を牽引する予測だ。また、企業の高い投資意欲を背景に、設備投資も2.8%程度の高い伸びが期待されている。
- 物価と賃金: 消費者物価(総合)の上昇率は1.9%程度と見込まれる。政策効果もあり物価上昇が落ち着く中で、名目賃金の上昇率が維持される結果、実質賃金上昇率は1%程度のプラスになる見通しである。
- 雇用: 労働需給の引き締まりを背景に、完全失業率は2.4%程度まで低下すると予測されている。
デフレ脱却から「成長型経済」への移行
我が国経済は、2年連続で5%を上回る賃上げが実現するなど、「デフレ・コストカット型経済」から新たな「成長型経済」へ移行する段階にある。足元の景気は米国の通商政策の影響を受けつつも緩やかに回復しているが、食料品を中心とした物価上昇により個人消費にはまだ力強さが欠けている状況だ。

これに対し、高市内閣は生活の安全保障や危機管理投資を柱とする「総合経済対策」を策定し、その効果を広く波及させることで、潜在成長力の引き上げを図っている。
今後の課題と「責任ある積極財政」
高市内閣の経済財政運営の基本方針(いわゆる「サナエノミクス」)は、市場の信認を確保しながら「強い経済」を実現する「責任ある積極財政」を軸としている。今後の主な課題として以下の点が挙げられた。
- 財政目標の転換: 従来の単年度のプライマリーバランス(PB)黒字化目標から転換し、複数年度でバランスを確認しつつ、「債務残高対GDP比」を安定的に引き下げることを新たな目標とする。
- 投資の重点化: 将来の成長力と安全保障を高める「危機管理投資」や「成長投資」に財政資源を重点配分する。また、スタートアップ・エコシステムの形成や、大学の研究力強化などの「人材力」向上にも注力する。
- 税・社会保障一体改革: 給付と負担の「見える化」を進め、給付付き税額控除の導入に向けたインフラ整備を国家プロジェクトとして推進する。
高市総理は会議の締めくくりとして、これらの施策を通じて「経済成長の果実を広く国民に行き渡らせ、誰もが豊かさを実感できる社会の実現を目指す」と強調した。一方で、海外経済の不確実性や金融資本市場の変動等には十分な注意が必要であるとしている。
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