12月22日午前10時30分ごろ、クリスマスを目前にした中国・福建省福州市で、乗用車が一方通行の道路を高速で逆走し、歩行者や自転車に次々と突っ込む事件が起きた。
暴走車が走り去った直後、路上には倒れた歩行者と散乱するバイクや自転車が残され、悲鳴と混乱が広がった。
「事件」が起きたのは市内の商業施設周辺で、複数の映像には、黒色の乗用車が減速することなく逆走し、バイクや自転車、歩行者を連続してはねる様子が映っている。車はそのまま走り去り、現場には車体の破片が残された。泣き叫ぶ女性の声も記録されている。

当局は当日夜、運転していたのは29歳の男性で、原因は「操作ミス」だと発表した。負傷者は5人で、いずれも命に別状はないとしている。飲酒や薬物使用の可能性は否定され、現在も捜査中とされた。
一方、ネット上の反応は冷ややかだった。
「ハンドルを切っていない。間違いなく社会報復だ」
「社会のいら立ちが限界だ。外を歩く時はスマホばかり見ない方がいい」
こうした書き込みが相次ぎ、事故という説明そのものに疑問符が付けられた。
もちろん、今回が単なる交通事故である可能性は否定できない。それでも目立つのは、人々が当局の発表を前提として受け止めなくなっている現実である。
中国では近年、生活苦や失業、借金などを背景に、無差別的な暴力事件が相次いできた。そのたびに当局は「操作ミス」「急病」「精神的問題」「偶発的な交通事故」といった個人的な要因を挙げ、社会報復ではないと説明してきた。しかし、詳しい経緯や背景が示されないまま幕引きとなる例が繰り返され、その積み重ねが不信を深めている。
その結果、いまでは何かが起きると、「事故かもしれないが、どうせ本当のことは語られない」という疑念が先に立つ。社会報復という言葉が即座に浮かぶのは、もはや異常ではなく、中国社会の日常的な感覚になっている。
(現場の様子。2025年12月22日、中国・福建省福州市)
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