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日本と中央アジア5カ国 初の首脳会合 「東京宣言」採択で新時代へ

2025/12/20
更新: 2025/12/20

2025年12月20日午前、高市早苗内閣総理大臣の議長の下、都内ホテルにおいて「中央アジア+日本」対話(CA+JAD)/カジャッド)・首脳会合が初めて開催された。本会合には、カザフスタン、キルギス、タジキスタン、トルクメニスタン、ウズベキスタンの5か国大統領が集結した。前日19日には赤坂迎賓館で晩餐会も開かれた。

初首脳会合開催と「東京宣言」採択 

2004年に日本が他国に先駆けて立ち上げたこの対話枠組みは、発足から21年を経て外相級から首脳級へと格上げされた。高市首相は、国際情勢が激変する中で中央アジアの重要性が増していることを強調し、地域の自律的かつ持続的な発展を推進するため、「『中央アジア+日本』対話・首脳共同宣言(東京宣言)」を採択した。

ベルディムハメドフ・トルクメニスタン大統領を出迎える高市総理(出典:首相官邸ウェブサイト)

地政学的要衝と経済安全保障の重要性 

今回の首脳会合の背景には、中央アジアが持つ複数の戦略的価値がある。第一に、ロシア、中国、アフガニスタン、イラン、トルコに囲まれた「ユーラシアの結節点」としての地政学的な重要性である。テロや組織犯罪といった脅威、さらにはウクライナ情勢やアフガニスタン情勢の影響を受けるこの地域の安定は、国際社会全体の安全保障に直結する。

第二に、資源・経済安全保障である。中央アジアは石油、天然ガスに加え、ウランやレアメタルといった重要鉱物資源の宝庫であり、カスピ海を経由して欧州やアジアを結ぶ重要なエネルギー輸送ルート上に位置している。さらに、著しい人口増加と経済成長を遂げるこの地域は、巨大な市場としての潜在性も有している。

ジャパロフ・キルギス共和国大統領を出迎える高市総理(出典:首相官邸ウェブサイト)

具体的協力を示す「東京イニシアティブ」とODAの締結

会合では、中央アジアの産業高度化・多角化を支援し、日本との互恵的関係を強化するための「CA+JAD東京イニシアティブ」が宣言された。以下の3分野を重点とし、今後5年間で総額3兆円規模のビジネス・プロジェクトを目指す目標が設定された。

  • グリーン・強靭化: エネルギートランジションに関する協力、重要鉱物サプライチェーンの強靭化、防災協力、気候変動対策に関する協力。
  • コネクティビティ(連結性): 「カスピ海ルート」の円滑化支援、AI協力パートナーシップの立ち上げ。
  • 人づくり: 人材育成奨学計画(JDS)の継続、医療・保健分野の協力。
トカエフ・カザフスタン共和国大統領を出迎える高市総理(出典:首相官邸ウェブサイト)

この機会に、官民合わせて150件以上の文書が署名・披露された。特に具体的な政府開発援助(ODA)として、ウズベキスタンへの畜産振興のための円借款(約213.68億円)や血液関連機材の供与、キルギスでの橋梁架け替えや電力システム保守、タジキスタンでの税関機材整備、さらにUNDPを通じた中央アジア5か国への広域災害リスク軽減支援などが合意された。

ミルジヨーエフ・ウズベキスタン共和国大統領を出迎える高市総理(出典:首相官邸ウェブサイト)

法の支配に基づく国際秩序の強化

今後は、このイニシアティブに基づき、脱炭素化(グリーン)やデジタル化(AI・コネクティビティ)といった先端分野での日本企業の進出が加速すると予測される。中央アジア諸国側からも、日本の技術力と人材育成への期待は極めて高い。

また、日本が提唱する「法の支配に基づく自由で開かれた国際秩序」を維持・強化するパートナーとして、これら5か国との連携はより強固なものになるだろう。首脳級への格上げは、中央アジアがロシアや中国といった周辺大国とのバランスを図りつつ、日本という「先駆的パートナー」との間で、多角的な外交を推進する契機となると考えられる。

ラフモン・タジキスタン共和国大統領を出迎える高市総理(出典:首相官邸ウェブサイト)

迎賓館での華やかな晩餐会

令和7年12月19日、赤坂迎賓館で中央アジア5カ国首脳らを招いた晩餐会が開かれた(出典:首相官邸ウェブサイト)

前日の19日午後7時15分から約1時間、高市総理は、迎賓館赤坂離宮において、中央アジア5か国の大統領らを迎え、晩餐会を主催した。この晩餐会には、各国の代表団に加え、日本側からは茂木敏充外務大臣や麻生太郎日・中央アジア諸国友好議連会長らも出席した。

令和7年12月19日、晩餐会で挨拶する高市総理(出典:首相官邸ウェブサイト)

高市首相は冒頭の挨拶で、2004年に日本が世界に先駆けて立ち上げたこの対話枠組みを通じ、長年にわたり地域協力を推進してきたことを強調し、「千年以上の歴史的な関係の礎がある日本と中央アジアの友好を今後更に深めていきたい」と述べた。晩餐会では、旬の国産食材をふんだんに使用した和食が振る舞われ、翌日に控えた初の首脳級会合に向けた和やかな親善の場となった。

エポックタイムズの速報記者。東京を拠点に活動。政治、経済、社会を担当。