米議会が公表した報告書は、アメリカエネルギー省（DOE）の研究資金を受けたアメリカ研究者と中国側研究機関の共同研究を通じて、機微な核技術や軍事転用可能な先端技術が中国共産党（中共）と中共軍の手に渡っていると警告した。国防七校や主要核兵器研究機関との連携を含む数千件の共同論文を検証し、長年の政策の甘さが中共の軍事力強化と国家主導の技術移転を許してきたと厳しく批判している。

12月17日に公表された米議会の報告書によると、中共は、アメリカエネルギー省の資金援助を受けている研究者らとの協力関係を通じて、アメリカの機微な核技術や、経済・国家安全保障にも応用可能な革新技術に中共軍がアクセスできるようにしているという。

この調査は、アメリカの科学研究成果が中共の軍事力強化に利用されるのを防ぐために設けた「防火壁」構築の一環として実施したものである。

米議会報告書が指摘した「DOE資金」と中共軍事・核技術の関係

米下院の「中国共産党問題を扱う超党派特別委員会」と「教育・労働委員会」の調査チームは、2023年6月から2025年6月の間に、DOEの助成を受けた科学者と中国の研究者による共同研究に関する学術論文が合計4350本に上ることを確認した。そのうち約半数（2200本）は、中共の国防科学研究および産業基盤に属する組織との共同研究であった。

報告書はさらに、特に懸念される協力先として、いわゆる「国防七校（国防七子）」に属する中国の大学をはじめ、中共国家国防科技工業局と共同管理下にある教育機関、中共の国防指定研究所、中国の主要な核兵器開発機関である中国工程物理研究院（CAEP）、国防科学技術大学、国有の国防産業グループ企業などを挙げていると指摘している。

調査官らは、これらの機関の多くが中共軍と公然と結びつき、その一部は中共の軍事能力向上への関与や人権侵害行為への関与により、米政府の「エンティティ・リスト（取引制限対象）」に掲載されていることを確認した。

報告書は、これら多数の中国機関が、米商務省や国防総省など多くの連邦機関が定める取引制限リストに掲載され、中共軍を支援していると広く認識されているにもかかわらず、DOEの資金提供を受けたアメリカ研究者がそのような機関と研究を続けているケースが多く存在すると指摘している。

議会の提言　最先端技術を守るためDOEに求められる監督強化

報告書作成者らは、アメリカは最先端技術研究をより一層保護し、納税者の資金で行った研究成果が最終的に中共の手に渡らないよう、さらなる対策を講じる必要があると強調した。そのうえで、国家安全保障上のリスクを評価するための新たな標準化手法の導入や、DOEが他の連邦機関と中国との研究協力に関する情報を共有し、問題を早期に発見しやすくする制度の確立など、いくつかの規制強化策を提案している。

報告書は「長年にわたる政策の誤りと不作為が、納税者の資金で行われる研究プロジェクトを中共の国防研究・産業基盤、さらには国家主導の技術移転活動に対して極めて脆弱にしてきた」と結論づけている。

下院中国共産党問題特別委員会のジョン・ムレナール（John Moolenaar）委員長は声明で、「今回の調査が明らかにしたのは衝撃的な問題である。エネルギー省は自らの研究を守ることに失敗し、その結果、アメリカの納税者資金がアメリカ最大の敵国である中国の軍事発展を支援する事態を招いている」と述べた。

ムレナール議員は今年、科学技術および国防関連研究の資金が敵対国の利益となることを防ぐ法案を提出している。

米国エネルギー省の反応と、米中共同研究を巡る今後の焦点

米AP通信によると、DOEは声明で、報告書の主張をより適切に評価・検証するため、内容を精査すると発表した。

DOEの広報担当者は、「当省は連邦資金の管理および重要研究能力の保全に関する責任を重く受け止めており、今後も交付金の支出に際して厳格なデューデリジェンス（適正評価）と監督を行う」と述べ、「事業の安全性確保に努める」と付け加えた。

DOEは、核エネルギー、核兵器開発・処理などの分野をはじめ、量子計算、材料科学、物理学などさまざまなハイテク分野の研究を支援しており、毎年数億ドル（約数百億円）を研究資金として拠出している。同省は17の国立研究所を管轄し、これらの研究所が多くの技術分野で最前線を牽引している。

今回の報告書は、中国の科学者や研究者が関与する連邦資金による研究を対象とした複数の議会調査の後に発表された。昨年、共和党が発表した別の報告書では、過去10年間における米中両国大学間の協力により、数億ドル（約数百億円）規模の連邦資金が中共の軍事力強化に資する重要技術の開発に流用されていたことが明らかになっている。