アメリカ・テキサス州で女性のプライバシー法が12月4日施行。生物学的性別に基づくトイレ等施設利用を州法で義務化し、違反者には罰金が科される。公共の安全とプライバシー確保を巡る社会的議論が全米で高まっている。

テキサス州で可決された「テキサス女性のプライバシー法（Texas Women’s Privacy Act）」が12月4日に正式に施行された。この法律は、州政府関連施設のトイレ、更衣室、シャワー室などにおいて、利用者が「生物学的性別」に従って指定の設備を使用するよう求めるものである。この法案は、外部では「新しい公衆トイレ法（Bathroom Bill）」とも呼ばれている。

本法案は、州上院議員メイズ・ミドルトン氏が起草・推進したもので、テキサス州の女性が安心して専用トイレを利用できるようにすることを目的としている。ミドルトン氏は8月4日の記者会見で、「男性が女性専用の空間に入らないのは当然のことだ」と述べた。

ミドルトン氏はさらに「トイレを区別するために使われてきた性別表示が、再び役割を果たす時が来た。この法案はこうした境界を回復し、法的に実効性を持たせるものである」と語った。

新法は公共施設の利用規則を定義するだけでなく、テキサス州刑事司法部（Texas Department of Criminal Justice）に対し、生物学的性別に基づいて受刑者を配置するよう義務づけている。また、DV被害者シェルターなど女性向けに設立された施設についても、女性とその子どものみを支援対象とするよう定めている。

ミドルトン氏は「こうした境界線は何世代にもわたって存在してきた。これらの境界は生物学的事実に基づくだけでなく、『聖書の真理』にも基づいている」と強調した。

新法では、初回違反者に5千ドル（約75万円）の民事罰金が科され、再犯の場合は2万5千ドル（約375万円）の罰金が課される。違反を発見した市民は州検事総長事務所に申し立てを行うことができ、罰金の執行は州検事総長が担当する。

また新法は、例外規定も設けており、清掃、修繕、医療、育児などの関係者が必要な場合には、女性用トイレや更衣室などに立ち入ることを認めている。

全米で広がる女性団体の動き

全米の女性団体は、テキサス州と同様の法律制定を求めて活動を続けている。先月、カリフォルニア州在住の女性ティッシュ・ハイマン氏は、ジムの女性用更衣室で男性と遭遇したことでネット上で大きな議論を呼び、地元の立法者に対し、女性の身の安全を守るための法的対応を求めた。

また、注目を集めた別の出来事として、ノースカロライナ州の女子生徒ペイトン・マクナブ氏のケースがある。高校の女子バレーボール試合で、トランスジェンダー女性選手の強烈なスパイクを受けて倒れ、意識を失う重傷を負った。マクナブ氏はテキサスの法制定を支持し、「基本的なプライバシーと常識を尊重した大きな勝利」と表現した。

マクナブ氏は「今日、『テキサス女性プライバシー法』が正式に施行されたことで、私が思い浮かべたのは、私が経験したことをもう二度と経験せずに済む女の子たちのことだ。このような保護措置が真剣に実行されているのを見ると、本当のリーダーシップとは何かを改めて実感する」と述べた。

全米で20番目の州法に

テキサス州では、過去10年以上にわたり、トイレ利用に関するトランスジェンダー者への民事・刑事罰を盛り込む「トイレ法案」を繰り返し提出してきた。今回「テキサス女性のプライバシー法」が施行されたことは、2017年に初めて同様の法案が上程されて以来、州議会にとって重要な節目となる。

「テキサス・スコアカード」の報道によると、テキサス州は全米で20番目に、女性トイレ・更衣室・浴室の安全を確保する法律を制定した州となった。

この法律により、テキサス州は、政府施設内に男女別の施設設置を義務づける7番目の州となった。これに先立ち、アーカンソー州、フロリダ州、モンタナ州、サウスダコタ州、ユタ州、ワイオミング州が同様の法律を制定している。

また、幼稚園から高校12年生（K-12）までの学校や一部の公共施設に適用される法律は、アラバマ州、アイダホ州、ルイジアナ州、ミシシッピ州、ノースダコタ州、オハイオ州、オクラホマ州、ワイオミング州の8州で施行されている。さらに、学校を対象としたより具体的な法規は、アイオワ州、ケンタッキー州、サウスカロライナ州、テネシー州、バージニア州の5州で施行中である。