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中国経済悪化の現場から 若者たちが明かす「生きることの難しさ」

2025/11/28
更新: 2025/11/28

中国経済の悪化と若年層の就職困難が深刻化している中、統計には表れない生活実態を、複数の若者たちが大紀元の取材で語った。失業率は公表より高いと見られ、資格や学歴があっても職探しは難航し、野宿や副業で生活を維持する現状が浮き彫りとなっている。

中国共産党(中共)の国家統計局はこのほど、10月の若年層失業率が今年7月以降で最も低かったと発表した。しかし、実際の若者たちは依然として苦境を訴えている。経済の悪化をどの程度実感しているのか。複数の若者たちが大紀元の取材に、それぞれの生活実態を語った。

駅には野宿する人々があふれている

江蘇省蘇州市・昆山に住む29歳の日雇い労働者、馮明さん(仮名)は記者にこう語った。「以前は公園で寝ていましたが、今は公園では寝てはいけなくなりました。現在は駅の2階入り口付近で寝ています。階下のほうなら寝られるんです。公園だとあまり良い印象を持たれないようです。朝に運動やランニングをする人たちがいるので、そこに寝ていると迷惑になるのでしょう」

「駅で寝ている人はかなり多いです。あちこちにいます。みんな出稼ぎの人たちで、仕事が見つからず、部屋を借りるお金もない。節約のために外で寝るしかないんです」と彼は語った。

冬は寒いが、みんな毛布を買ってやり過ごしているという。

中国の蘇州・昆山駅で寝泊まりする人々 (受訪者提供、撮影時期不明)

馮明さんは、すでに駅で寝るようになって何年も経つという。仕事はめったに見つからず、たまに日雇いの短期労働をしているが、「最近はその日雇いの仕事も取り合いになってしまい、賃金が安い」と語った。

以前は商売をしていたが、約400万元(約8千万円)以上を失って破産した。結婚もしていない。「もう10年以上、実家には帰っていません。家族とも連絡を取っていません。自分さえ食べていければ、それでいいんです」と淡々と語った。

中国の街頭で野宿する人々(動画のスクリーンショット)

「運転代行のドライバーの方が 酒を飲む人より多い」

江蘇省蘇州市で営業職として働く楊さんは、昼は会社員、夜は運転代行のアルバイトをしている。「今は本当にお金を稼ぐのが難しいです。運転代行でもほとんど稼げません。夜7~11時まで働いても、多くても40〜50元(約800〜1千円)ほどしか稼げない。今の経済状況がどれほど悪いか、これで分かるでしょう」

「この業界も競争が激しいです。運転代行のドライバーの方が、酒を飲む人より多いくらいです。景気が悪いんですよ。自分の周りでも、運転代行の仕事をしている人の中に教師や医師、料理人もいます。みんな昼間は普通の仕事をしていて、生活のために夜も働いている。それでもこのわずかな稼ぎすら得にくくなっている。本当に大変です」と嘆いた。

楊さんによれば、運転代行という仕事は世間から見下されがちであり、酔客の態度に耐えなければならないことも多いという。

それでも「今の社会情勢では、体面などどうでもいい。大事なのは稼げるかどうか、家族を養えるかどうかだ」と話した。

「酒を飲む人が減ったのは、景気の悪化をそのまま反映しています。みんなお金も気力もなく、外食に出ようとしないのです」

「今はどこに人が行ってしまったのか分からない。知り合いにチャーハン店を経営している人がいますが、まったく利益が出ないそうです。酒を飲む人が減れば、チャーハンを食べる人も減る。みんな『お客が来ない』と嘆いています」

楊さんは最後に、「とにかく生き抜くしかない、耐えるしかない」と語った。

仕事を失うのが怖い現職者たち

広西に住む30歳目前の若者・剛さん(仮名)は、今多くの人が将来に希望を持てなくなっていると語る。「友人の一人は、ずっと将来を不安がっています。2019年ごろは、誰の目にも希望の光がありました。失業なんて怖くなかったし、仕事が見つからないとは思わなかった。でも今はまったく違います。彼は常に不安で、会社の同僚たちも同じです。『リストラされるかもしれない』『クビになるかもしれない』と恐れて、がむしゃらに働いています」

その友人は週末も休まず働いているという。会社は残業を強制していないが、珍しく業績の良い職場であるため、社員たちは皆自主的に残業している。

「同僚の中には夜中まで残業して、半年ほとんど休みがない人もいます。それほどまでに頑張るのは、失業が怖いからです。せっかく得た良い職を失いたくないのです」

剛さんによると、友人の多くはすでに仕事を見つけられず、「今の職を持っているだけでもありがたい」と、皆必死に働いているという。

卒業生の就職活動が直面する現実

中共の国家統計局によると、今年10月の若年層失業率は17.3%で、前月の17.7%からわずかに下がり、7月以降で最も低い数値だったと発表した。

しかし、当局のデータの信憑性には以前から疑問があり、実際の社会では悲鳴が広がっている。

広東省で機械電子工学を専攻し、今年卒業した大学生・陳さんは大紀元の取材にこう語った。「今は卒業しても本当に仕事が見つかりません。企業は経験者ばかりを求め、未経験者にはチャンスが与えられない。競争が激しく、人が多すぎて、良い職を得るのはとても難しいです」

湖南省出身で、長沙の大学を卒業したばかりの苹さん(仮名)は、現在深圳でプログラマーの仕事を探している。「良い仕事は本当に少ないです。多くの企業がリストラを進め、新しい人を雇う余裕がありません。1か月以上探していますが、全国的に状況は同じのようです」

彼女は続ける。「今では多くの学生が、大学3年生のうちからインターン先を決め、4年生の実習期間に正社員登用を期待できる職を探します。私も卒業証書を受け取る前に働き始め、5月から10月31日まで勤めていましたが、その後退職しました」

「辞めた後は実家にも帰れず、両親にも言えません。話しても理解されないし、かえって悩みが増えるだけ。ずっと『まだ働いている』と嘘をついています」

彼女によれば、AI関連など一部の企業は成長しているものの、採用されるのは大手IT企業出身者など限られた人材に偏っているという。

「今も履歴書を送り続けていますが、ほとんどが不採用です。新卒で経験がないからと断られる。数えきれないほど応募しましたが、まさに『卒業=失業』という状態です。『仕事』という言葉を見るだけでも気が滅入るほどです」

苹さんは率直に「将来に希望が持てない」と語った。「失業保険も受け取れません。1年以上保険料を納付していなければ受給資格がないのです。政府の支援などほとんどありません」

2022年以降、中国では大学卒業生の数が毎年1千万人を超えている。2022年は1076万人(前年比+167万人)、2023年は1158万人(+82万人)、2024年は1179万人(+21万人)、2025年には1222万人(+43万人)に達した。

そして2025年11月20日、中共国営メディアは「2026年の大学卒業予定者数はさらに増え、過去最多の1270万人(前年比+48万人)になる」と発表した。

清華大学法学博士でSNS上の著名ブロガー「鶴鶴博士THU」はこう述べている。「この人数、本当に……学生たちのプレッシャーは大きすぎる。見ているだけで怖くなる」

寧海鐘
中国語大紀元の記者。
顧暁華