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非核三原則めぐる中国大使館の対日批判 外務省が反論

2025/11/28
更新: 2025/11/28

外務省は11月27日、駐日中国大使館がIAEA理事会での中国代表発言を引用し、日本の非核三原則などを根拠なく批判したと指摘し、日本は非核三原則を堅持し、IAEAからも核物質の平和利用が確認されていると反論した。そのうえで、日本は戦後一貫して国際社会の平和と繁栄に貢献してきたとの立場を強調し、既にIAEA理事会の場でも同趣旨の反論を行ったと説明している。​

外務省発表のポイント

外務省は、中国側がIAEA理事会での発言を持ち出し、日本の非核三原則や安全保障政策について「根拠のない批判」を行ったと説明し、X上で公に反論した。 日本側は、非核三原則(「持たず、作らず、持ち込ませず」)を「政策上の方針として堅持」していると改めて表明し、中国側の「日本が路線変更を図っている」との主張を退けている。​

また、日本は戦後、平和国家として国際社会の平和と繁栄に貢献してきたと強調し、その姿勢は国際社会から広く理解・支持されているとしている。 あわせて、IAEAが日本のプルトニウムを含むすべての核物質について、厳格な保障措置の下で平和的活動に用いられているとの「包括的結論(broader conclusion)」を出していると紹介し、日本の核物質管理の透明性をアピールしている。​

 

背景にある日本の核政策議論

中国側は、IAEA理事会の場で、日本が過剰なプルトニウムを保有し、唯一の被爆国でありながら非核三原則の見直しや「核共有」議論、原潜保有の可能性などを示唆しているとして、大きく後ろ向きに変質しつつあると批判している。 特に、新たな高市早苗政権のもとで非核三原則の第三原則(「持ち込ませず」)見直しの可能性が取り沙汰されていることや、拡大抑止の強化を背景にした核抑止議論を、中国側は「戦後国際秩序を揺るがす動き」として警戒している。​

一方、日本国内では、中国の核戦力増強、ロシアのウクライナ侵略や北朝鮮の核・ミサイル能力向上などを背景に、安全保障環境の「戦後最悪化」が指摘され、与党内外で抑止力強化や「核共有」の是非をめぐる議論が高まっている。 高市首相が国会で非核三原則の維持を明言しきらなかったことや、自民党内で安全保障戦略見直しの一環としてあらゆる選択肢を検討する姿勢を示したことを受け、国内メディアや被爆者団体からも「非核三原則の形骸化」への懸念が出ている状況である。​

ただし、政府は公式には非核三原則を「政策上の基本方針」と位置づけ、依然としてこれを堅持するとの立場を繰り返し表明しており、NPT体制の下で核軍縮・不拡散を推進する「橋渡し役」を自任している。 このため、日本の核政策をめぐる国内議論と、国際社会に向けた「非核・平和利用」のメッセージとの間にギャップが生まれやすく、それが中国や周辺国に政治的に利用される構図も見えている。​

IAEA保障措置と日本のプルトニウム問題

日本は原子力基本法などで「原子力の平和利用に限定する」原則を掲げ、NPT包括的保障措置協定および追加議定書の下で、国内の核物質・核活動がIAEAの厳格な保障措置の対象となっている。 「保障措置(Safeguards)」とは、主に核物質の平和利用を保証するために国際原子力機関(IAEA)によって実施される厳格な検証システムを指す。その主要な目的は、締約国において、核物質が平和的な核活動から軍事的な目的に転用されていないことを保証することだ。IAEAは2024年の査察結果にもとづき、日本について「すべての核物質が平和的活動にとどまっている」とする包括的結論を出し、2025年の理事会でもこの評価が確認されたと報告している。​

一方で、日本は再処理技術を保有し、民生用としてプルトニウムを蓄積していることから、余剰分の削減や透明性確保が国際的関心を集めてきた。 日本政府は、プルトニウム「保有量の削減」と「利用目的の明確化」を掲げ、使用済み燃料の再処理・MOX燃料(Mixed Oxide:混合酸化物の略。プルトニウムを再利用するために製造される燃料であり、主に日本の商業炉で利用されることが想定されている)利用を進める方針だが、中国はこれを「潜在的核武装能力」として強調し、国際世論に日本への警戒感を喚起しようとしている。

しかし、中国が強調する「潜在的核武装能力」という主張に対して、上述の通り報告書は、日本の核活動が軍事目的に転用される可能性がないことを、国際的な検証によって保証されている事実をもって反論してい​る。

2024年末時点の日本のプルトニウム総保有量約44.4トンのうち、約35.8トンは海外(英国およびフランス)で保有されている。この海外保有分のプルトニウムは、基本的に海外でMOX燃料に加工され、日本の商用炉で利用される予定であり、平和利用の観点から懸念すべきものではないと説明されている。

今後の見通し

今回の外務省発表は、中国側の批判を事実誤認だとしてただちに打ち消し、日本の非核三原則とIAEAによるお墨付きを前面に出すことで、国際世論に向けた「説明戦」を展開する動きと位置づけられる。 しかし、中国側は、日本国内での非核三原則見直し論や、米国との拡大抑止協議の強化などを取り上げ、日本の「平和国家」イメージに揺さぶりをかける情報発信を続けており、IAEAや国連など多国間の場での応酬が続く可能性が高い。​

日本にとっては、中国の核・ミサイル能力や北朝鮮への現実的な抑止と、被爆国としての「核廃絶の旗手」というアイデンティティをいかに両立させるかが、今後ますます難しい課題となる。 

エポックタイムズの速報記者。東京を拠点に活動。政治、経済、社会を担当。