中国南西部の山あいで、政府の強制火葬に対する住民の反発がかつてない規模に膨らんでいる。
雲南(うんなん)や貴州(きしゅう)では、当局による土葬妨害や「遺体奪取」を恐れ、千人規模で葬列を囲んで土葬を決行し、儀式後も墓が掘り返されるのを防ぐため、住民が昼夜を問わず墓地を守り続けている。こうした動きは近隣の村や町まで巻き込んだ広域的な住民抵抗に発展している。
11月26日、中国国内の抗議行動を記録・発信する「昨天(Xアカウント @YesterdayBigcat)」は、雲南省貴州省一帯にある高原地帯で撮影された複数の映像を公開した。(動画はこちらをクリック)
その内容によれば、こうした「反強制火葬運動」はすでに約1か月続き、25日には雲南省昭通市鎮雄県と貴州省貴陽市息烽県で、それぞれ数千人規模の住民集結が起きた。まさに反乱に近い規模の住民抵抗が同時多発している状況だ。

鎮雄県の中屯鎮青山村では、今月初めにすでに千人を超える村人が政府の妨害を突破して土葬を護送した。25日にも、別の高齢者の土葬のため再び千人規模の住民が集まり、今回は地方当局も阻止に踏み出せなかった。葬列の沿道では、村人たちが「絶対に火葬しない」と声を上げ続け、土葬は無事に行われた。

息烽県の石垌鎮木杉村では「遺体を奪われる」ことを恐れた住民が14日前から墓地周囲に泊まり込みを続け、25日には一時2千人に達し、近隣の村々だけでなく周辺の集落や町からも応援が集まった。こうした大規模な抗議活動が十数日以上続くのは、近年の中国では極めて珍しい。

数日前、木杉村近くの水頭村では、遺体を奪いに来た部隊を率いていた副県長の強勇が村人に取り囲まれ、当局側の一行は押し返される形で退却した。この地域では、住民が立ちはだかり、当局部隊を押し返すという反乱に近い場面さえ記録されている。

現場には外部からの支援も届く。26日にはSNSで事情を知った市民が活きた豚一頭を届ける映像が投稿されたほか、抗議現場の近くにある民家の庭先には、水や野菜が運び込まれ、村人たちの炊き出し拠点となっている。


「昨天」は、こうした抗議が農村で急速に拡大する背景として、
・農村は都市より制度的な縛りが弱く、生活が脅かされる問題に強く反発しやすい。
・親族を中心とした地域の結束が今も強く、動員力が高い。
・スマートフォンと自家用車の普及で情報拡散と移動が急速に容易になったことを挙げる。
さらに、経済の悪化が続くなか、多くの農民が都市での生活を維持できずに故郷へ戻り始めている。彼らは失業の不安や生計の重圧だけでなく、都市で得た広い視野や権利意識も持ち帰っており、これが農村での抗議の連鎖を後押ししているとみられる。

「今後数年間は、農村地域や小規模な都市で同様の集団抗争が繰り返し発生する可能性が高い」と「昨天」は見ている。
中国共産党が最近掲げた「大規模な帰郷を防ぐ」という異例のスローガンは、まさにこうした動きを当局自身が強く警戒していることの表れでもある。

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