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【紀元焦点】28項目和平計画 米欧・ウクライナ協議で修正へ

2025/11/25
更新: 2025/11/25

11月23日、ウクライナ・ロシア戦争終結へ向けた米欧・ウクライナ協議がジュネーブで開催され、トランプ大統領が打ち出した「28項目和平案」の大幅修正が議論された。主権維持や軍事制限、領土問題が交渉の焦点となった。

ホワイトハウスは11月23日に声明を発表し「ウクライナの主権を全面的に擁護する」と強調した。ヨーロッパ側はウクライナ軍の兵力上限を60万人から80万人に引き上げ、領土問題の扱いを「接触線からの協議開始」へと変更した。トランプ氏がゼレンスキー大統領に設定した最終期限まで残り3日となった。

米欧・ウクライナのジュネーブ会談 28項目和平計画に修正の見通し

11月23日、アメリカ、ウクライナ、そしてヨーロッパの高官らがジュネーブに集まり、ロシア・ウクライナ戦争の終結を目的としてアメリカが提案した28項目の和平計画草案について協議した。

ジュネーブ会議に出席したアメリカ側の代表には、マルコ・ルビオ国務長官、米国特使スティーブ・ウィトコフ(Steve Witkoff)氏、トランプ氏の娘婿ジャレッド・クシュナー(Jared Kushner)氏、および米陸軍長官ダニエル・ドリスコル(Daniel Driscoll)氏らが含まれていた。

ジュネーブでの会談中、トランプ大統領は自身のSNSプラットフォーム「トゥルース・ソーシャル(Truth Social)」に投稿し、ロシアとウクライナの戦争は「暴力的で恐ろしい戦争」であり「本来、起こるべきではなかった」と主張した。

トランプ氏は、この戦争に勝者はおらず、多くの罪なき市民の命が奪われたと指摘した上で、ウクライナの指導部がアメリカの支援努力に感謝を示していないと改めて批判した。さらにヨーロッパ諸国が依然としてロシアから石油を購入していることにも言及した。

その前日、トランプ大統領はホワイトハウスでの記者団との会見で、28項目のロシア・ウクライナ和平計画について「ウクライナやヨーロッパ諸国、さらにアメリカ共和党の一部議員らから『モスクワ寄りすぎる』と批判されているため、この計画は調整する用意がある。これは最終案ではない」と述べた。

11月20日、ホワイトハウスの高官がCBSニュースに対し、トランプ大統領がロシア・ウクライナ戦争終結を目指す28項目の計画を正式に承認したことを確認した。

続く11月21日、ロイター通信はこの28項目の和平計画草案の全文を入手し、公表した。各方面から激しい議論が巻き起こった。

28項目の和平計画草案 8つの重要分野に分類

1.ウクライナの主権と国際的地位:ウクライナは主権を持つ独立国家として扱われ、ロシア・ウクライナ・ヨーロッパの間で、過去30年にわたる不明確な争点をすべて解決する包括的な不可侵協定を締結する。

2. ロシアとウクライナの領土区分:クリミア、ルガンスク、ドネツクは事実上ロシア領として認められ、アメリカもこれを承認する。ヘルソン州とザポロージェ州については現状の実効支配線を凍結し、その線を基準に領有権を画定する。ロシアは上記5地域以外のその他の支配地域を放棄する。ウクライナ軍は現在支配しているドネツク地域の一部から撤退し、その撤収範囲は中立非軍事緩衝地帯とされ、国際的にロシア連邦領として承認される。ロシア軍はこの非軍事区域への進入を禁じられる。

3.ウクライナへの安全保障と条件:ウクライナ軍の規模は60万人に制限される。ウクライナはNATOに加盟しない旨を憲法に明記し、NATO側も自らの憲章で「今後ウクライナを加盟国として受け入れない」と規定する。NATOの拡大は停止され、ヨーロッパの戦闘機はポーランドに駐留する。

アメリカは一定の条件付きでウクライナに安全保障を提供する。その主な条件は以下の通りである。

① アメリカの安全保障提供には経済的補償が必要であり、無条件ではない。

② ウクライナがロシアに侵攻した場合、その保障は失効する。

③ ロシアがウクライナに侵略した場合、アメリカは強力な軍事的協調対応を行うほか、すべての対ロ制裁を復活させ、ロシアの新領土承認および本協定に基づく一切のロシア側利益を撤回する。

④ ウクライナがモスクワまたはサンクトペテルブルクに向けてミサイルを発射した場合、安全保障協定は即時に無効と見なされる。

4. 戦争責任と賠償:戦争責任の追及および賠償請求は行わない。ロシアは国際経済に再統合され、G8(主要8か国)に再加盟する。

5. 文化的包容政策の推進:ロシア・ウクライナ双方で教育分野における文化的寛容を促進するプログラムを実施し、人種差別や偏見の解消を図る。また、ロシア語・ウクライナ語のメディアおよび教育権を保障する。

6.ウクライナのEU加盟資格:ウクライナは欧州連合(EU)加盟の資格を得る。アメリカ主導の下、凍結されているロシア資産1千億ドルを活用し、ウクライナの再建・投資に充てる。

7. 核兵器と安全管理:ウクライナは核兵器を保有しない国として「核不拡散条約(NPT)」に基づいて確認される。アメリカとロシアは核軍縮関連の条約を延長する。ザポリージャ原子力発電所は国際原子力機関(IAEA)の監督下で再稼働し、その電力はロシア・ウクライナ両国で50%ずつ分配する。

8.選挙の実施:ウクライナは協定締結から100日以内に選挙を実施する。

ルビオ氏「会談は大きな進展 トランプ大統領は満足」

アメリカの国務長官ルビオ氏は23日、会談の進展について2度にわたりメディアに報告した。

最初の発言でルビオ氏はこう述べた。「トランプ政権が打ち出した28項目の和平計画は、すべての関係者の意見を統合したものだ。現在、いくつかの条項を一つひとつ精査できる段階にあり、良い進展を遂げていると考えている」

ルビオ氏は続けて「いくつかの修正や調整を行うべく努力しており、意見の相違をさらに縮め、ウクライナとアメリカの双方が受け入れられる合意案に近づけたい」と語った。

またルビオ氏は「次に対処すべきはロシアに関わる部分だ」と強調した。そのうえで「この9か月間で、アメリカはロシアが本当に重視しているポイントについてかなり理解を深めてきた」と述べた。

ルビオ氏は、23日に行われた米ウ会談について「非常に意義深いものだった」とし「これは今年1月にトランプ政権が発足して以来、ウクライナ和平交渉全体の中で最も良い会議であり、和平プロセスにとって大きな一日となった」と評した。

数時間後、ルビオ氏は再び記者団の前に立ち「ロシア・ウクライナ戦争終結に向けた会談は『巨大な進展』を遂げた」と述べた。トランプ大統領はその進展に「非常に満足している」という。

アメリカがウクライナに安全保障を提供する意思があるか問われた際、ルビオ氏は「進行中の作業の具体的な詳細については論じない」と答えたが「最終的にこの戦争を終結させるためには、ウクライナが安全を感じ、二度と侵略や攻撃を受けないという確信を持つことが不可欠だ。我々はこの点を含め、いくつかの面で実質的な進展を得ている」と強調した。

ルビオ氏はさらに、米ウ両国の代表団は翌月曜も引き続き会談を行う予定だと述べた。

ウクライナ代表「会談は非常に良い進展を遂げた」

ウクライナ代表団の団長であり、大統領府長官のアンドリー・イェルマーク(Andriy Yermak)氏も、会談後にメディアへ前向きなメッセージを示した。

イェルマーク氏は次のように語った。 「われわれは非常に良い進展を遂げ、公正で持続的な平和の実現に向けて前進している。ウクライナ国民は地球上の誰よりも、この平和を得るにふさわしく、またそれを強く望んでいる。わたしたちは偉大な友人であるアメリカ、そしてトランプ大統領本人とそのチームに感謝している。彼らの平和への尽力に心から謝意を表したい。ルビオ国務長官が述べたように、われわれは本日も作業を続け、今後数日間にわたり、各提案の統合に注力する予定だ。同時に、ヨーロッパの友人たちとも接触を図る。もちろん、最終的な決定はアメリカとウクライナ、両国の大統領によって下されることになる」

ウクライナのゼレンスキー大統領もSNS上でビデオ声明を発表し「アメリカ側との対話は非常に重要だ。トランプ大統領のチームが我々の声に耳を傾けているというサインを受け取っている」と述べた。

EUが立場を明確化

アメリカ、ウクライナ、そして一部の欧州諸国の安全保障担当者がジュネーブで会談を行う中、欧州委員会のフォン・デア・ライエン委員長は23日、EUの立場を明確にした。

彼女は「ウクライナの国境は武力によって変更されることはなく、ウクライナ軍を縮小してはならない。EUはウクライナ和平合意の中で中核的な役割を担うべきだ」と述べた。

フォン・デア・ライエン氏は声明で「信頼に足る持続的な和平計画は、まず殺戮を止め、戦争を終わらせることだ。同時に、将来の紛争の火種を残してはならない」と語った。

前日には、ヨーロッパおよびその他の西側諸国の指導者らが、トランプ大統領が提起した28項目の和平計画に対し、調整された統一的な対応を取るよう努めた。彼らはこのアメリカ案がロシア・ウクライナ戦の交渉の基礎となると認めつつも「さらなる作業が必要だ」と指摘した。

トランプ大統領の28項目和平案では、ウクライナに対して強固な安全保障を提供することを約束している一方で、ウクライナ軍の規模を最大60万人以下に制限するという条件が付いている。

この軍隊制限の条項について、西側諸国の首脳らは懸念を示し「それでは将来的にウクライナが攻撃を受けやすくなる」との見方を示した。

23日の会談前、フランス国防省代表のアリス・ルフォ(Alice Rufo)氏はフランスメディアに対し「協議の焦点はアメリカ版和平案に盛り込まれたウクライナ軍の制限だ」と述べ「こうした制限はウクライナの主権を損なうものだ」と指摘した。

ロイターが23日に入手したヨーロッパ側で修正された和平草案によると、ヨーロッパ案ではウクライナが平時に保有できる武装部隊の上限を、アメリカ案の60万人から80万人に引き上げるとしている。

さらにヨーロッパ案では「領土交換交渉は接触線から開始される」と記され、アメリカ案が提案していた「一部地域を事実上のロシア領と認める」形ではない。また、ウクライナにはNATO第5条に類似した安全保障を与えるべきだと提案している。

28項目和平案はいまだ調整中 ホワイトハウス「ウクライナの主権を守る」と声明

トランプ大統領は、ウクライナに対して感謝祭(11月27日)までに28項目の提案に答えるよう求めている。

今回の米ウ会談(スイス・ジュネーブ)にはロシアは参加しなかったが、ルビオ氏は「ロシアもこの件に発言権を持っており、次の段階の和平交渉では意見を求めることになる」と説明した。

ルビオ氏は報道陣に対し、アメリカが提出した28項目の和平計画は今も各方面の意見を踏まえて調整が続いており「現在の情勢は非常に微妙だ」と形容した。

11月23日夜、ホワイトハウスの公式サイトに共同声明が掲載され、新たな「和平枠組み」が「ウクライナの主権を全面的に守る」と表明された。

声明によると、アメリカとウクライナの代表団はジュネーブで会談を行い、アメリカの和平案をめぐって協議した。

会談は建設的で焦点が明確であり、双方が互いに敬意を持って臨み、公正で持続的な平和の達成に向けた共通の決意を改めて確認したという。

両国は協議の成果について「多岐にわたるものとなった」との認識で一致した。

また、いかなる将来の合意も「ウクライナの主権を十分に守るものでなければならない」と再確認し、会談の結果、更新・改善された和平枠組み案を共同で作成した。

声明では「ウクライナとアメリカは今後数日間、共同提案について集中的に作業を続けることに合意した」としている。

この枠組みに基づき、最終決定は両国の大統領が下す。両国はウクライナの平和を確保し、その安全・安定・復興を支えるため、引き続き協力していく姿勢をあらためて示した。

この記事で述べられている見解は著者の意見であり、必ずしも大紀元の見解を反映するものではありません。