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トランプ・習会談で複数の合意 専門家「中共の時間稼ぎ策に警戒を」

2025/11/03
更新: 2025/11/04

トランプ米大統領が就任して以降、相次ぎ重要政策を打ち出し、国際社会に大きな影響を与えている。10月30日、韓国・釜山で行われた「トランプ・習近平会談」では、わずか100分間という短時間ながら、多岐にわたる議題が取り上げられた。主なテーマは、中国共産党によるアメリカ産大豆の購入、レアアース輸出規制の一時停止、フェンタニル(合成麻薬)の取締り強化、農産物貿易協力の拡大などである。しかし当日、双方は共同記者会見を開かなかった。複数の専門家は、現在中共が内政・外交両面で苦境に立たされており、レアアース輸出規制の放棄などの措置は「時間稼ぎにすぎない」と見ている。今後の米中貿易戦争の行方は依然として不透明である。

10月30日、世界の注目を集めたトランプ・習近平会談が釜山で開かれ、現地ではアメリカを歓迎する声とともに、中共に抗議するデモも行われた。

韓国の現役大学生キム・チャンモ氏「私たちは中共に対して非常に強い嫌悪感を持っている」

中共に対する不信感が高まる背景には、米中貿易戦争の期間、中共はアメリカ産大豆の購入量をほぼゼロまで減らし、トランプ氏を支持するアメリカの農家を経済的に圧迫しようとした。しかし今回の会談前夜に、中共は突如「アメリカ産大豆を購入する」と発表し、農産物の購入を交渉材料として使っていると批判を受けている。

台湾国防安全研究院・サイバー安全と決定シミュレーション研究所の副研究員 謝沛学氏
「今回の購入量はごく少なく、およそ船3隻分、18万トンにすぎない。これは非常に少ない量で、実際には『交渉の雰囲気づくり』にすぎないと思われる。もし交渉がうまくいかなければ、いつでも中止できるという姿勢だ」

トランプ氏は、6年ぶりに中共の党首と再会し、フェンタニルの取締りやレアアース規制、半導体問題などの解決を目指した。約100分の会談後、トランプ氏は好感触を示した。

トランプ大統領
「多くの面で合意に至った。(中国側は)大量の豆類やその他の農産物の購入を直ちに開始する」

中共は「年内にアメリカ産大豆1200万トンを購入し、今後3年間毎年2500万トンを追加で購入する」と約束した。

農産物に加え、アラスカ産エネルギーの購入、フェンタニルおよび前駆化学物質の取締り強化も今回の主要議題の一つだった。

トランプ大統領
「本日の声明に基づき、関税率を10%引き下げた。つまり、20%から10%へと半減し、即時適用となる。(記者:協定締結後の中国製品への新しい関税率は?)その他の関税はすべて現状維持だ。(記者:55%ですか?)おおよそそうだ。以前は57%だったが、現在は47%になった」

中共が麻薬密輸取締りへの協力を約束したことを受け、トランプ氏は中国製品への懲罰的関税の一部を引き下げた。

また、交渉の中で中共は「レアアース輸出規制の実施を1年間延期する」と約束し、トランプ氏も中国製品への追加100%関税の計画を一時停止した。

さらに、米中双方は1年間の「港湾使用料」相互撤廃にも合意し、アメリカは中国の海運・物流・造船業への「301条調査」を1年間停止する。

時事評論家 唐靖遠氏
「今回の協定は1年間の期限付きで、今後は毎年年末に更新を行う仕組みだ。つまり、双方がその年の履行状況を確認する必要がある。もし相手側が履行しなかった場合、貿易戦争がすぐに再燃する可能性がある」

レアアースは、先端技術製品から軍需品にまで幅広く利用されており、中共はこれを他国への圧力の手段として使ってきた。しかしアメリカにも有効な交渉カードがある。

トランプ大統領
「中国側はNVIDIAやその他の企業とチップ購入について協議する予定だ。我々は優れたチップを製造しており、NVIDIAは業界のリーダーである」

なお、今回の会談ではNVIDIAの最先端チップ「ブラックウェル」や、台湾海峡問題、中共の輸出補助金、過剰生産、製品ダンピングなどの議題は取り上げられなかった。

トランプ氏は、来年4月に中国を訪問し、新たな交渉ラウンドを行う予定だ。その際には中共の党首もアメリカを訪問し、フロリダ州パームビーチまたはワシントンD.C.での会談が検討されている。

今回の会談後、双方は共同記者会見を開かず、共同声明も発表していない。専門家らは、今後の米中貿易関係は依然として不確実だと指摘している。中共は内外で多くの問題を抱え、レアアース輸出規制の放棄も時間稼ぎの策にすぎない可能性がある。

会談後、米中双方の交渉団はその後マレーシアで協議を続けた。スコット・ベッセント米財務長官は「双方は来週正式に合意文書に署名する見通しである」と述べた。

しかし、専門家らは中共の約束を額面どおりに受け取ることには慎重な姿勢を示している。

アメリカのメリーランド州・ロヨラ大学ビジネススクール副院長の丁弘彬氏           「中共はすでに4分の1世紀もの時間を費やし、WTO加盟時の約束をいまだ果たしていない。これは、当初から履行する意思がなかったことを示している」

中共は2001年にWTOに加盟し、世界の資本と技術を取り込み「世界の工場」となったが、当時の加盟時の約束である金融や保険などの分野の自由化をいまだ実行していない。

アメリカはこうした中共依存から脱却するため、レアアース関連の「鉱山から磁石まで」を一貫させるサプライチェーンの再構築を急速に進めている。国内産業への投資や政策支援を拡充すると同時に、同盟国との連携を強化している。

ベッセント氏は10月31日付けの『フィナンシャル・タイムズ』のインタビューで、「中共はもはやレアアースを交渉の武器としてアメリカに圧力をかけることはできない」と語った。そして「今後12〜24か月以内に、アメリカは中共のレアアース独占から完全に脱却する」と述べ、中共によるレアアース規制拡大を「重大な誤り」だと指摘した。さらに、「銃をテーブルに置いてから空に向けて撃つようなものだ」と皮肉を込めて例えた。