米ホワイトハウスのAIおよび暗号資産政策責任者であるデイヴィッド・サックス氏は、10月6日にブルームバーグ・テレビのインタビューに応じ、トランプ政権の対中政策が軟化し、十分に強硬でないとするワシントンの対中強硬派からの懸念に反論した。
トランプ大統領が、エヌビディア(Nvidia)やアドバンスト・マイクロ・デバイセズ(AMD)による中国向けの低性能チップ販売を認めたことを受け、政権内の対中強硬派は、アメリカのAI分野における競争優位を損なう可能性があるとして強い懸念を示している。
前国家安全保障会議の技術・国家安全保障担当ディレクター、サイフ・カーン氏は、エヌビディアのダウングレード版「Blackwell」チップでさえも、中国が大量に購入し統合することで、AIスパコン開発に活用される恐れがあると指摘している。
これに対し、サックス氏は番組内で、「トランプ大統領の対中政策は弱腰ではなく、戦略的判断に基づいており、アメリカがAI分野で中国に先行し続けるための鍵である」と反論した。そして、「これらの政策は、アメリカがAI領域における覇権を維持するために不可欠だ」と強調した。
サックス氏は、「私自身も対中強硬派(China hawk)だと思っている。私は、アメリカがこのAI競争に勝利することを望んでいる。我々は明確に認識している。中国こそが、グローバルなAI競争における我々の最大の競争相手であり、我々はあらゆる手段を講じて勝利を目指す」と述べた。
またサックス氏は、エヌビディアやAMDによる中国向け低性能AIチップの販売を連邦政府が認めたことを支持し、バイデン政権も過去にエヌビディアによる中国への「H20」チップの販売を容認していた点を指摘した。さらに、「これは典型的な例だ。トランプ大統領が同様の決定を下すまでは、誰も問題視していなかった」と語った。
サックス氏はベンチャーキャピタリストであり、トランプ氏の就任後にホワイトハウス入りした人物である。
サックス氏は、AIという新興技術の世界市場においてアメリカが優位を維持し続けることが、AI競争で勝利する鍵だと述べた。そのうえで、バイデン政権が打ち出した「AI拡散枠組み」は半導体輸出を制限し、アメリカの市場拡大を妨げていると批判し、トランプ大統領が今年5月にこの枠組みを撤回したことを評価した。
さらにサックス氏は、アメリカが中東やその他の地域に対し、技術やインフラを輸出することで、アメリカの技術を普及させつつ、中国の影響力を抑え込もうとしていると説明した。彼は「トランプ大統領の政策は、事実上中国を中東から排除するものであり、前政権の政策はむしろ中東諸国を中国の側へと追いやっていた」と指摘した。
また、サックス氏は番組内で、エヌビディアの最高経営責任者(CEO)であるジェンスン・フアン(黄仁勲)氏を擁護した。
フアン氏は、BG2ポッドキャストにおいて「対中強硬派」という呼称について、「恥ずべき意味合いがある」と批判し、中国との協力を拒む姿勢を暗に示していると受け取られる発言を行い、批判を浴びていた。
これに対しサックス氏は、フアン氏の発言は文脈を無視して切り取られたものであり、エヌビディアおよびフアン氏は、米中間におけるAI競争において戦略的に極めて重要な存在であると強調した。
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