働いても報われず、結婚も家も遠い夢。そんな現実に疲れた若者たちが選んだのは、無理をせず最低限で生きる「躺平(タンピン)」だった。
だが黙って前向きに働き続ける「模範的労働者」は称賛されても、「競争を降りて静かに暮らす躺平者」は危険視されるのが今の中国である。
今月上旬、「躺平」潮流を象徴する人気ブロガー「小A在上網」の中国SNSアカウントが突如封殺された。本人によれば、プラットフォームから告げられた理由は、インターネット関連法規に違反しているというものだった。だが実際の投稿は、ネットカフェでゲームをする、街を歩いて食事をする、ただの平凡な日常にすぎない。政治批判どころか、むしろ「愛国的」な発言さえ交えていた。それでも削除の対象になったのは、皮肉にも「普通に生きること」こそ最大の違反と見なされるからである。
この理不尽な封殺は大きな波紋を呼び、「こんな日常すら記録できないのか」とネット上では驚きと怒りの声が広がった。「小A在上網」だけではない。「劉二狗」「網吧少女小青」「十年網吧大神」など、数十万から数百万のフォロワーを抱える著名な「躺平系」ブロガーたちも、次々と同じ運命を辿っている。
結局のところ、政府が持ち上げるのは、雨が降ろうが槍が降ろうが、障害やハンディキャップを抱えていようが、黙って前向きに働き続ける「模範的労働者」の物語ばかりだ。その対極にある「躺平」、すなわち競争を降りて静かに暮らす若者のライフスタイルは、やはり許されるはずがなかった。
だが、走らされ続ける社会に未来はあるのか。若者は未来に絶望したからこそ躺平したのに、その逃げ道すら奪えば、社会の不満と絶望は蓄積し、いずれ想像以上に早く爆発するだろう。

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