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米国 レアアース磁石で中国依存脱却へ 企業連携強化会議

2025/08/01
更新: 2025/08/01

アメリカのトランプ政権は、米国内のレアアース磁石産業の強化を目指し、主要テック企業や関連企業を招いて会議を開催した。中国への依存リスク低減を目的に、サプライチェーン強化やリサイクル推進策、民間投資の拡大など新たな産業政策が進行している。

この会議は、米中貿易戦争の渦中において、トランプ政権が経済安全保障政策の一環として打ち出した取り組みである。

政府主導で底値保証と投資促進へ

会議は7月24日に実施され、大統領の通商・製造業担当上級顧問のピーター・ナバロ氏と、国家安全保障会議の供給網戦略担当官デービッド・コプリー氏が主催した。参加企業には、アップル、マイクロソフト、コーニングなどの大手テクノロジー企業に加え、レアアースの採掘・加工・回収を担う複数の企業が含まれていた。

ナバロ氏はレアアース製品に「底値保証」を設ける方針を示し、国内メーカーに対して長期購入のコミットメントを約束する姿勢を打ち出した。これにより投資リスクを低減させ、産業界の積極的な参入を促進すると説明した。さらに、「2020年のCOVIDワクチン開発で実行した『ワープ・スピード作戦』を模範とし、迅速にレアアース・サプライチェーンを構築する」と述べ、政権の強い意志を明示した。

ナバロ氏は「鉱山から最終製品に至るまで、米国内において完全な重要鉱物供給網を構築し、中国依存を抜本的に解消することを目指す」と語った。

レアアース供給危機と自主産業体制の構築

長年にわたり、中国が世界のレアアース供給を独占してきた。2025年3月には、米中貿易摩擦の一環として、中国共産党(中共)政権がレアアース輸出を一時的に停止した。この措置により、アメリカ国内の一部企業が生産停止のリスクに直面し、アメリカ経済の脆弱性が明確となった。中共側はその後、輸出を一部再開したが、この経験がアメリカの産業自主化政策を加速させる契機となった。

MP Materialsへの巨額投資と民間連携

7月上旬、アメリカ国防総省は、国内で唯一レアアースを生産するMP Materialsに対して、総額4億ドルの投資を実施し、政府による価格支援および購入契約を締結した。アップルも同社との供給契約を結び、産官民による統合体制の形成が進行している。ナバロ氏は今後、産業界とのさらなる提携、特に株式投資やM&Aによる企業参入を積極的に推進すると表明した。

電子廃棄物からのレアアース再利用も検討

会議では、レアアース磁石を含む電子廃棄物のリサイクルに関する議論も行われた。一部の関係者は、再資源化を促進するため電子廃棄物の輸出を禁止する必要性を訴えたが、ナバロ氏は「国内サプライチェーンの整備が完了するまで、輸出禁止措置は講じず、交渉上の戦略材料として慎重に扱う」との立場を取った。

多様なリサイクル・再生企業が参加

この会議には、レアアース回収を手がけるPhoenix Tailings、Momentum Technologies、Vulcan Elements、REEcycle、Cyclic Materialsのほか、北米最大級の電池回収事業者であるRedwood MaterialsやCirba Solutionsなど、多様な再生企業が参加した。

トランプ政権の関係者は、今後4〜6週間以内に再度これら企業との会合を開き、政策の具体化と実現に向けた動きを加速させる方針を示している。

アメリカは、中国の影響力に左右されることのない、持続的かつ安全なレアアース供給体制の確立を急いでおり、国家を挙げた産業強化政策が新たな段階へと進みつつある。

王君宜
王君宜