中国全土がかつてない猛暑に見舞われている。地表温度が70度を超える地点が続出し、屋内の窓ガラスが熱で割れるなど、異常事態が相次ぐ。気温40度超えは広範囲に及び、人も動物も命の危険にさらされている。
過酷な灼熱地獄のなか、一方で街には「巨大扇風機やクーラーの映像」が流され、SNSでは「これが中国式」と皮肉が飛び交う。現実と幻想のあまりに乖離した「涼の取り方」が浮き彫りになった。
中国本土では今月、河南省や陝西省をはじめとする広い地域で地表温度が70度を突破。河南省鄭州(ていしゅう)では、路上に置かれたフライパンで生卵やエビが太陽熱だけで焼かれる様子がSNSで拡散され、「鄭州は『蒸州(読み方が近い)』になった」と話題となった。猛暑は住宅にも被害を及ぼし、鄭州の住宅では室内の窓ガラスが熱で突然ひび割れる事故も発生している。

農業や畜産にも深刻な影響が出ている。河南省新郷(しんきょう)では、暑さで飼育していた白鳥5羽が池の中で熱死し、農園主は「10年以上飼ってきたが、こんなことは初めて」と驚きを隠さなかった。水温は50度を超え、熱中症で魚や家畜も次々と被害を受ける事態に。現地では「養殖業の被害は2割を超える」と懸念されている。

こうした現実とは対照的に、街頭の巨大スクリーンには「回る扇風機の映像」が映し出され、あたかも涼しさを演出。SNSでは「これが中国共産党の政策と同じ、見た目だけ」と揶揄され、「冷房に回す電力を映像に使ってどうする」といった批判も噴出している。
いくらスクリーンが回っても、涼しさは「画面の向こう側」にあって、中国社会の虚像と現実の乖離を象徴する風景となっている。
目を逸らしても、灼熱の現実は消えない。いま中国に必要なのは、見せかけでない「命を守るための涼」だ。

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