「台湾支持」。その一言が、中国では命取りにもなりうる。
英国政府はこのほど、「台湾独立支持」とキリスト教信仰を理由に、中国人男性(39歳)の難民申請を正式に認める判断を下した。
この男性は2022年に英国へ渡航。渡航前の中国本土でも「台湾独立支持」の立場を公言し、すでに2度の拘束歴があった。英国到着後も台湾支持のデモに参加し、SNS上でもその主張を続けていた。さらに彼は、中国国内で当局が認可していないキリスト教の教会にも所属していたことから、帰国すれば迫害に遭うリスクも高いとされた。
背景には、中国共産党(中共)が近年強化している「国家安全法」と「反間諜法」の存在がある。これらの法律は、「外国勢力との結託」や「国家機密漏洩」の名目で、市民の言論や行動を広範囲に取り締まることを可能にした。SNSの発言、外国メディアへの情報提供、海外での集会参加といった行為も、簡単に「国家転覆」や「スパイ行為」と見なされる。

経済の減速や国際的孤立、不満の蓄積が進む中、習近平政権の最優先事項は「体制の維持」。そのため、政権は言論・思想・宗教の自由を徹底的に封じ、「共産党に忠誠を誓わない者は排除する」という体制をますます強化している。
実際に中国当局は、国外にいる中国人のSNSや活動を厳しく監視しており、たとえ国外での発言であっても、帰国時の入国審査や空港での尋問で発覚すれば、拘束や刑事罰の対象となる。さらに問題なのは、「何が国家機密に当たるのか」が極めて曖昧で、すべては当局の恣意的な判断次第という点だ。つまり、ビジネス上のトラブルから政治的発言、些細なSNSの投稿まで、「何がアウトか」は共産党の気分次第。
この危険は中国人だけの問題ではない。実際、日本人の企業駐在員や研究者が、過去に「スパイ罪」の名目で突然拘束される事件が発生している。
「信じること」「語ること」が罪になる国。英国法廷の判断は、いまの中国がどれほど思想と言論の自由を脅かし、個人の尊厳を踏みにじっているかを、世界に突きつけた。

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