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2024年の訪日外国人ビザ発給「中国が7割超」 安全保障上の懸念も

2025/05/11
更新: 2025/05/23

外務省は2024年、日本を訪れる外国人に発給したビザの件数が前年比約1.7倍の719万6373件となり、過去最高を記録した2019年の約9割まで回復したと発表した。国籍・地域別でみると、中国が全体の73%にあたる524万3536件を占め、2位のフィリピンの9倍以上となった。中国が圧倒的な割合を占める結果となったのは、観光客の回復に加え、就業や留学など様々な目的での渡航が増えているためだと外務省は分析している。また、この結果には安全保障上の懸念も伴っている。

2024年のビザ発給件数は、新型コロナウイルス感染症の影響で大きく落ち込んだ2020~2022年から大幅に回復した。特に中国からの申請が著しく増加し、個人観光ビザの発給条件が2024年7月に緩和されたことも追い風となった。これにより、年収10万元(約206万円)以上の中国人まで対象が拡大され、約1600万世帯が新たにビザ取得可能となったとされる。

外務省が発表した国籍・地域別の発給数上位3か国は中国、フィリピン、ベトナムであり、これら3か国で全体の約9割近くを占めた。発給数が最も多かった在外公館も、在上海総領事館、在中華人民共和国大使館、在広州総領事館と中国関連が上位を占めている。

中国人観光客は、コロナ禍前の「爆買い」などで注目を集めていたが、コロナ禍以降は訪日数が減少していた。しかし2024年は、観光需要の回復やビザ発給条件の緩和により、再び大きな存在感を示す形となった。今後も中国本土からの訪日客は増加が見込まれており、日本のインバウンド市場において重要な役割を果たし続けるとみられる。

安全保障上の懸念

一方、中国人の訪日増加に関連して、安全保障上の懸念が指摘されている。

まず、経済安全保障の観点から、日本の観光業が中国人観光客に過度に依存することで、日本の対中脆弱性が高まる点が挙げられる。実際、過去には日中関係が悪化した際に中国政府が自国民に日本旅行を自粛させる措置をとり、日本のインバウンド需要が大きな打撃を受けた事例がある。これは、外交関係の変化や中国側の意向によって日本経済の一部が大きな影響を受けるリスクを意味している。

また、中国人観光客の増加が日本国内の土地買収や不動産投資の加速につながる可能性も指摘されている。特に水源地や防衛施設周辺の土地が外国資本の手に渡るケースが増えており、これが日本の安全保障に影響を及ぼす懸念がある。

さらに、観光ビザの緩和によって治安の悪化や犯罪リスクの増加が懸念されている。過去には中国人による集団窃盗や転売目的の買い占めなどの事例も報告されており、適切な対策が求められている。

このように、中国人観光客の増加は経済的なメリットがある一方で、経済安全保障や土地買収、治安など多面的なリスクを伴う。特に、外交カードとして中国が観光客の渡航制限を利用する可能性が現実に存在し、これが日本の政策決定や経済活動に影響を与える安全保障上の課題となっている。

大紀元エポックタイムズジャパン記者。主に軍事・防衛、安全保障関係を担当。その他、政治・経済・社会など幅広く執筆。