11月28日、バンダイナムコは上海で「ゲームカーニバル2025」を開催した。ステージでは、歌手の大槻真希さんがアニメ『ONE PIECE』第1期のエンディング曲「memories」を歌唱していたが、その最中、突然照明がすべて落ち、音楽も停止し、パフォーマンスは強制的に中断された。主催者側は理由について「不可抗力によるもの」と説明した。

ネット上に投稿された動画には、大槻さんの歌唱中にステージのスクリーンと照明が一斉に消え、本人が戸惑う表情を見せる様子が映っている。その後、スタッフ2名がステージに上がり、マイクを外し、彼女を舞台裏に誘導した。観客からは「嘘だろ…」「全国レベルの一斉中断の瞬間を目撃した…」など驚きの声が上がった。

この件について、インド太平洋戦略研究所の所長である矢板明夫氏は、Xに次のように投稿した。
「今夜、中国・上海で信じがたい出来事が起きた。大槻真希さんが『ONE PIECE』のエンディング曲『memories』を歌っていたところ、舞台上のスクリーンと照明が突然すべて消え、中国側関係者が電源を落とした。公演は強制的に中止されたのだ。主催者は『不可抗力』を理由としているが、これは中国（中国共産党、以下中共）政府が日本人アーティストの公演に介入したものだと見られている」

矢板氏はさらに、「これは単発の出来事ではなく、最近中国で予定されていた日本人アーティストの公演が相次いで中止となっている。浜崎あゆみ、美波、花譜、吉本興業関連の公演などが立て続けに止められ、異例の大規模な公演中断が起きている。浜崎あゆみの上海公演は11月29日に予定され、1万4千枚以上のチケットが売れていたが、当日に突然中止が通達された。200人以上のスタッフが5日間かけて組み上げたステージは、すでにすべて撤去された。浜崎さん本人はSNSでファンに謝罪した」と述べた。

矢板氏は「中国側が日本人アーティストの公演を妨害している主な目的は、アーティストやファンを通じて日本政府に圧力をかけ、高市早苗首相の台湾に関する発言を撤回させることだ。しかし、このように区別なく強硬手段を取ることは、中国（中共）政府が芸術や人権を軽視していることを示し、アーティスト、主催者、そしてファンのすべてが大きな損失を被っている」と指摘した。

矢板氏によれば、日本のSNS上では中共政府の対応を強く非難する声が広がっており、「日本政府はこのような横暴な行為に屈すべきではなく、高市首相の発言撤回を拒否すべきだ」という意見が多数を占めている。

この件は中国語圏でも波紋を広げている。

作家で独立系評論家の向陽氏は、Xで
「知識レベルが低い者ほど根拠のない自信を持つ。無知であるがゆえに恐れない。独裁者は実態のない自信だけは過剰に持つ。これを『鶏毛信（古代中国で緊急連絡のために使われた「鶏の羽毛を挿した急ぎの文書」。ここでの意味は「根拠なき空虚な自信」』と呼べる。一方で腹を括りながら、自らの道に絶対の自信を持つ──これは『一帯一路』のようなものだ……孔子は『小人は天命を知らずして畏れず、大人を狎（な）れ、聖人の言を侮る』と述べている。台湾の人々が守ろうとしているものは何か？　それは、まさにこのような社会にならない自由である！」と投稿した。

米国在住の反体制派活動家・楊子立氏は、
「習近平が胡錦濤を公の場で強制的に退席させたのだから、歌手が歌の途中で降ろされても不思議ではない。中国大陸ではすでに体面は顧みられず、どんな場面でも『力』のみが支配する」と指摘した。

ネット上には、「たしか映画『戦場のピアニスト』か何かだったと思うが、ナチスの親衛隊がユダヤ人ピアニストを逮捕する場面でも、少なくとも彼が演奏を終えるまで待っていた」といった投稿も見られた。

また、中国のSNS・ウェイボー上では次のような控えめな批判もあった。
「日本人の公演を規制するにしてもやり方がある。歌の途中で電源を落として強制終了させたり、会場を準備した後に突然中止したり、歌手を空の会場に一人残すことになる。これでは国外には『見苦しい』印象しか伝わらない」。