3月20日、アニメーション・ドキュメンタリー映画『長春 ― Eternal Spring』の特別上映会が、大阪と神戸で開催された。上映後には、本作の作画を担当した郭競雄(大雄)氏が登壇し、観客との質疑応答が行われ、会場は熱気に満ち、多くの観客が積極的に質問を投げかけ、関心の高さがうかがえた。
観客からは「事実の重さと芸術的な表現に心を打たれた」との声が上がり、「これまでこうした出来事を知らなかった」と驚きを隠さない人もいた。
本作は、2002年に中国が、法輪功学習者が中国・長春市のテレビ放送を電波ジャックし、中国共産党(中共)による法輪功への偽情報を暴いた実話を描いている。
「共産党の嘘は世界を覆っている」作画担当・大雄氏
電波ジャック事件以降、中国共産党当局は、戒厳令を発動し、5千人以上の法輪功学習者が逮捕され、そのうち400人以上が強制労働収容所に投獄された。こうした弾圧を逃れ海外に渡った一人が、「中国のアニメ王」と呼ばれる長春出身の漫画家、郭競雄(大雄)氏だ。3度の拘束を経て08年に渡米に成功した。
大雄氏は、
「今、世界中が共産党の嘘に覆われている。これは、私たち全人類が直面している共通の問題だ。しかし、あの当時、行動した人々は、自分たちを偉大だとは思っていなかった。ただ、やるべきことをやっただけであり、今日のような影響を与えるとは、想像すらしていなかっただろう」
と、語った。
「あれから20年が経ち、世界はゆっくりと、しかし確実に変わってきている。善良と真実の力は、今もなお働き続けている」

さらに、中国では、現在も多くの国民が、中国共産党の本質的な邪悪さを知らされていない現状に触れ、
「人々が接する情報は、すべて共産党によってコントロールされ『グレート・ファイアウォール』によって外部の情報から隔離されている」
「だからこそ、私は本日の映画のような表現活動を通じて、この情報の壁を崩していきたいと強く思っている」
と、述べた。
議員ら「知ることからすべてが始まる」
兵庫県議会議員の大矢卓志氏は、「真実、すなわち事実を知らなければ、何事も始まらない。しかし、その事実が完全に覆い隠されている現状があった。まさに、これこそが最も深刻な問題である。だからこそ、まずは一人でも多くの人にこの現実を見ていただくことが出発点であると考える。すべては、そこから始まるのだ」
と語り、映画を通じて国境を超えて、真実を伝えていく意義を述べた。

元川西市議会議員の中曾千鶴子氏は、
「日本人として、苦しむ人々と共に戦いたい。真・善・忍の理念に深く共感した」
と述べた上で、
「信念と心の強さによって世界を変えていく思いが強く伝わった」
「現実にこのようなことが今もなお起こり続けているということを、改めて認識させていただいた。その中で、自分に何ができるのかを考えさせられた。誰もが沈黙していたわけではなかったということを、強く感じさせられる内容であった」
と、映画への印象を語った。

真実を知り、真実を伝えることの大切さ
神戸の上映会では、司会を務めた蘆屋市議会議員で元産経新聞記者の川上朝栄氏が、記者時代にこの事件の真相を知らなかったことを悔やみ、報道されなかった事実に驚きを表明。
「中国共産党が情報を統制し、真実を隠して都合の悪い存在を排除する姿勢は許しがたい。情報統制は人々の心と自由を傷つけ、どの国でも起こり得る人権侵害だ」
と、訴えた。
「メディアや政治に携わる者として、この問題に責任と自覚を持って向き合う必要がある。自由な社会で生きる者として、声を上げることの重要性を再確認した。この映画を多くの人に届け、犠牲者の思いを受け継ぐことが私たちの使命だ」
と力強く締めくくった。

NPO法人・利他利他有興会代表の安保智子氏は、
「アニメーションとドキュメンタリーが融合した美しい作品で、非常に感動した」
「長春の風景が弾圧で故郷を追われた大雄氏の悔しさを際立たせていた」
と、印象を述べた。

「特にアニメーションで描かれた長春の美しい風景を見て、弾圧を受けた結果、残念ながら弾圧を受けて海外に逃れて、美しい故郷に帰ることができない悔しさを改めて思った」
「中国共産党と中国人は違う」—観客の声
中国出身の梁さんは、幼少期に日本と中国を行き来し、中国の体制教育に馴染めず再び日本へ。
自身の経験を交えて、
「中国人と中国共産党は別物だ」
「中国の人々の心は本来善良だが、真実を知らされていない」
と語り、情報隔離とその弊害を訴えた。

梁さんはさらに、
「人は本心と稀少な勇気に従って行動することで、予想もしない大きな影響を与えることがある。それが他者へと受け継がれていく」
と述べ
「大雄さん自身もその影響を受けた一人であり、良知・勇気・人間としての尊厳を今も伝え続けている」
と締めくくった。
また、留学生の江さんは、
「子どもの頃に聞いた法輪功に関する情報は、今思えばすべて反対に理解すれば真実だった」
と、振り返った。中国社会に根深く存在する情報統制の現実を指摘した上で、
「映画は想定内の内容だったが、非常に芸術的な表現で心を打たれた」
と、評価した。
映画に登場する人々が電波ジャックを決行した当時、
「その後にこんなにも連鎖的な出来事が起こり、何十年も経って世界中で大きな影響を与えるなんて、想像もしていなかっただろう」
「人が自分の本心に従い、基本的な勇気――でもそれは本当に貴重で稀なもの――を持って行動すれば、自分でも予想できないほどの影響を生み出すことがある。そしてその影響は、他の人へとずっと広がっていく」
江さんは、この点を強調し、映画が描く一つの行動が歴史を変える力を持っていたことを力強く語った。
「大雄さん自身が、当時の出来事に影響を受けた一人なんです。そして彼はその影響をさらに継承している」
「彼が継承しているのは、良知、勇気、そして人間としての尊厳。そういうものなんだ」
と、締めくくった。
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