日本銀行の植田和男総裁は2025年2月21日、衆議院予算委員会において、長期金利が急激に上昇する場合の対応策を改めて表明した。植田総裁は「長期金利が急激に上昇するような例外的な状況では、機動的に国債買い入れの増額を実施する」と述べ、市場の安定化に向けた日銀の姿勢を明確にした。
この発言は、最近の長期金利上昇を背景に行われたものだ。新発10年物国債の利回りは15年3カ月ぶりの高水準に達しており、日銀はこうした市場動向に対する警戒感を示したとみられる。
植田総裁は、長期金利は「市場において形成されることが基本」であり「市場の経済・物価情勢に対する見方や海外金利等を映じて長期金利はある程度変動する」と述べた。しかし同時に、異常な市場の動きによって長期金利が急激に上昇した場合には「機動的に国債買い入れ増額などを実施する」と明言した。
この方針は、2024年7月の金融政策決定会合で示されたものを再確認したものだ。当時、日銀は月間の長期国債買い入れ額を3カ月ごとに4000億円程度ずつ減額する計画を決定したが、同時に長期金利が急騰した場合の対応策も示していた。
植田総裁は具体的な発動基準については言及を避け「注意深く市場の状況を見守ることによって判断していく」と述べるにとどめた。これは、市場の自律的な動きを尊重しつつ、必要に応じて介入する可能性を残した発言と解釈できる。
この発言を受けて、債券市場では金利が低下し、円相場も弱含んだ。市場関係者からは、日銀が市場の動向を注視していることを再確認する発言だったとの見方が出ている。
日銀の対応は、金融市場の安定を維持しつつ、経済の回復と物価の安定を両立させる難しい舵取りを示している。今後も長期金利の動向と日銀の対応が注目されることになりそうだ。
ご利用上の不明点は ヘルプセンター にお問い合わせください。