テスラCEOのイーロン・マスク氏が2月20日夜、保守政治活動会議(CPAC)に登場し、会場の注目を集めた。
マスク氏はアルゼンチンのハビエル・ミレイ大統領と同席しただけでなく、ミレイ氏から贈られたチェーンソーを掲げて「これは官僚主義を切り倒すチェーンソーだ」と叫び、会場の観客から熱烈な歓声を浴びた。
会議中、マスク氏はNewsmaxの司会者ロブ・シュミット氏のインタビューを受け、政府支出削減計画(DOGE)、アメリカ経済、ロシア・ウクライナ戦争などの問題について意見を述べた。彼の発言は政治や社会問題への関心を示すだけでなく、共和党内での影響力をさらに強化するものとなった。
マスク氏の「ロックスター風」登場 会場の雰囲気を盛り上げる
マスク氏はいつもの控えめなハイテク企業家のイメージから、ロックスターのような出で立ちで登場した。黒のサングラス、黒のTシャツとチェーン、そして黒の「アメリカを再び偉大に(MAGA)」帽子を身につけ、保守派の政治的雰囲気に溶け込んだ。
アルゼンチンのミレイ大統領が突然登場し、政府予算削減の象徴としてチェーンソーを贈ると、マスク氏はすぐにそれを掲げ、「これは官僚主義と戦うための道具だ!」と大声で叫んだ。この行動は、DOGE計画への強力な支持と解釈された。同計画は政府予算の大幅削減と人員削減を含むため、民主党と一部の連邦機関から批判を受けている。
マスク氏はユーモアを交えて応じた。「私はただ良いことをしたいだけで、同時に楽しみ、ユーモアのセンスを保ちたいのだ!」
注目を集める「DOGE配当」構想 トランプの支持を得る
最近、アメリカ社会では政府支出削減後の資金を直接国民に還元できるかどうかが議論されている。トランプ大統領は以前、DOGE計画で節約した資金を国の債務削減に使用し、さらにはアメリカ国民に配布する可能性があると提案し、いわゆる「DOGE配当」を形成することを示唆した。
これについてマスク氏は、「この資金は元々国家にとって有害な機関に流れていたものが、今や直接国民の手に戻ることになる。これは素晴らしいことだ!」と述べた。さらに、彼はトランプ大統領と話をしたことを明かし、トランプ大統領がこの計画を支持していると強調した。
また、アメリカ国税庁(IRS)がその日6700人の従業員を解雇すると発表し、同機関がさらなる削減に直面する可能性、さらには直接閉鎖される事もあるとの憶測が広がった。司会者がこの件について尋ねた際、マスク氏は直接回答を避けたものの、笑顔でうなずき、この考えに対してオープンな態度を示しているように見えた。
マスク氏は個人の安全について語る 「死にたくはないが、簡単ではない」
マスク氏の政治的影響力が日々増大するにつれ、彼は多くの批判や攻撃の標的となり、安全上の懸念さえ生じている。シュミット氏が彼の身の安全について尋ねた際、自分は「ある勢力にとっては指名手配犯のような存在」と表現した。
マスク氏は率直に答えた。「安全を高めるためのアドバイスは何でも聞く用意がある。もちろん死にたい願望(Death Wish)はないが、簡単ではない」
大規模な警護チームを持っているかと尋ねられると、彼は「実際にはそれほど大規模ではなく、もっと大きくすべきかもしれないし、わからない」と軽く答えた。
この発言は注目を集めた。特に、トランプ大統領が昨年2度の暗殺未遂に遭遇したことを考えると、保守派リーダーの安全問題は政治的焦点となっている。マスク氏は最後に強調した。「我々は体制と戦っている。この戦いは続けなければならない」
ロシア・ウクライナ戦争に対する立場「金のための戦い」を止めるべき
ロシア・ウクライナ戦争について、マスク氏は前線の兵士に同情を示し、戦争の早期終結を呼びかけた。
彼は言った。「戦死した兵士たちに共感を持つべきだ。この戦争はあとどれくらい続くのだろうか? もしそれがあなたの息子や父親だったら、彼らは一体何のために戦っているのだろうか?」
さらに彼は「多くの兵士が戦場に送られているのは、単なる金銭取引のためだ。戦争の背後には汚職と贈収賄が蔓延している」と厳しく指摘した。
また、ロシアのプーチン大統領との密接な関係を指摘する外部からの批判に対し、マスク氏はユーモアを交えて応じた。「彼には私を買う余裕はありません」
この発言は再び注目を集めた。特にトランプ大統領も戦争問題について米露交渉を通じて迅速に戦争を終結させるべきだと主張しているが、この姿勢は一部の政界人士から疑問視され批判されている。
マスク氏がアメリカの価値観を語る
インタビューの最後で、マスク氏は自身が南アフリカ生まれだと述べ、その道徳基準はアメリカの文化によって形成したと自身の価値観について語った。
「私は子供の頃からアメリカのコミックを読み、『ダンジョンズ&ドラゴンズ』をプレイし、アメリカのテレビ番組を見ていました。アメリカは常に『良い人間になる』ことを強調してきました。これは実際にはとても珍しいことです」
マスク氏は、アメリカは常に「正しいことをする」ことを追求してきたと強調し、これが彼に深い影響を与えたと述べた。
一部の民主党員はマスク氏こそが真の「アメリカのリーダー」であり、トランプ氏よりも影響力があるとさえ揶揄した。しかし、トランプ氏はこれに対し、マスク氏は影響力はあるが「彼は生まれながらのアメリカ市民ではないので、大統領選に出馬することはできない」と応じた。
マスク氏の政治的影響力が日々拡大
マスク氏のCPACでの登場は、彼がもはや単なるハイテク企業家ではなく、アメリカの保守派政治サークルの重要人物となったことをさらに明確に示している。
DOGE計画、ロシア・ウクライナ戦争に対する見解、そしてアメリカの価値観についての議論など、すべてが彼がアメリカの政治と政策議論に積極的に参加し、さらには共和党の将来の政策方向にまで影響を与えていることを示している。
アメリカの政治情勢の変化と保守派勢力の再編成に伴い、マスク氏の動向とトランプとの関係は、アメリカの政界で注目の的となるだろう。
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