日本貿易振興機構(ジェトロ)が2025年2月4日に公表した年次調査によると、日本企業が今後3年間で最も重視する輸出先として25.8%がアメリカを挙げた。2016年以降で最高の数値となり、中国を最重視する企業は14.8%と3年連続で減少した。事業拡大先としてもアメリカが38.6%でトップとなり、中国(24.9%)やEU(23.7%)を大きく引き離している。
調査は2024年11月6日から12月6日にかけて実施され、海外ビジネスに関心のある日本企業9441社のうち3162社から回答を得た。アメリカを重視する理由として、自動車部品メーカーからは「電気自動車(EV)市場の拡大が見込まれる」、輸送機器企業からは「新政権発足で資源関連プロジェクトが増加する見込み」などの声が寄せられた。
ジェトロの伊藤博敏・国際経済課長は「アメリカ市場の2023-24年の好調さに加え、同国の産業保護政策に対応するため、現地に深く入り込む意識が強まっている」と分析する。一方、中国を最重視する企業の割合は2022年の19.1%から年々低下し、地政学リスクや経済減速が影響しているとみられる。
アメリカへの進出意欲も顕著で、同国に新拠点を設ける予定の企業は前年比100社以上増の313社に達した。自動車分野では「日系完成車メーカーが北米市場に注力」(自動車部品企業)といった戦略的な動きが背景にある。
今回の調査結果は、日本企業がアメリカ市場への依存度を高めつつ、中国リスクへの対応を模索する現状を浮き彫りにした。ジェトロは「輸出先の多角化が進む一方、アメリカの国内産業保護がビジネス戦略に直結している」と指摘している。
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