経済産業省は、洋上風力発電の建設コスト上昇に対応するため、次回の公募から新たな制度を導入する方針を決めた。この制度変更により、コスト上昇分の一部を電力価格に上乗せすることが可能になる。一方、トランプ米大統領は就任後すぐに風力発電開発を一時的に停止する大統領令を発出した。
経済産業省の資源エネルギー庁が2024年12月に公表した第7次エネルギー基本計画の原案では、2040年度に再生可能エネルギーを最大の電源とする方針が示された。この計画では、風力発電が全体の4~8%程度を占めると想定されており、洋上風力発電はその重要な柱となっている。この計画は、日本のエネルギー政策の方向性を定める重要な指針であり、総合資源エネルギー調査会基本政策分科会での議論を経て策定されていた。
しかし、洋上風力発電は、設置にかかる費用が膨大で、近年の資材価格高騰により採算が取れなくなる可能性が指摘され、この問題に対応するため、経済産業省は、2024年11月26日の調達価格等算定委員会で、FIP(Feed-in Premium)制度における基準価格を物価変動に連動させる「価格調整スキーム」の導入を検討した。
この新しいスキームでは、建設期間中の資材価格変動を基準価格に反映させることが提案されている。具体的には、物価変動率の上限を40%とし、ウクライナ危機のような急激な物価変動にも対応できるよう設計されている。
一方で、海外では洋上風力発電プロジェクトの撤退事例が相次いでいる。米国などでは、新型コロナウイルス感染症の影響やウクライナ戦争によるサプライチェーンの混乱、インフレによる開発費用の増大などが原因で、大規模プロジェクトからの撤退が複数報告されている。さらに、トランプ米大統領は、就任後すぐに、米連邦政府の沿岸水域での風力エネルギー開発を一時的に停止する命令を出した。
日本政府は、こうした国内外の状況を踏まえつつ、洋上風力発電を再生可能エネルギーの主力電源として育成するために、事業者の予見可能性を高め、投資を促進する環境整備に取り組んでいる。
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